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ドノヴァン魔物化

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでして頂いてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

……すみません煮詰まっております(´;ω;`)ウゥゥまたもや一週間更新をお休みさせて頂きます。

エタる事はありません! ……私が事故に遭ったり異世界に転生したりしない限りは、ですが^^;

「で、王妃はどちらなの?」姿が見えない事が気になっておもむろにシーナが質問する。


「多分、自分の部屋だろう」それに答えるメルギド。少し寂しそうな顔で。そんなメルギドの様子が気になったシーナ。


「ファンダルと複数の兵士に指示して、部屋に向かわせている」シーナの表情から汲み取ったのだろうか說明を付け加えるメルギド。


 そんなメルギドの言葉に、不思議そうに首を傾げるシーナ。対処? どういう事かしら? と呟く。


「お父様。どうしてお母様が怪しいとお思いになったのです?」そこでリリアムが、気になっていた事を質問する。


「途中でいなくなったからな」実はメルギドは、あの騒動の際、逃げるように走っていくソフィアを見ていたのである。


「ねえ。陛下。王妃はまだ……」「……」メルギドの様子に、何か察したシーナが悲しそうな顔をするも、返事をせず目配せするメルギド。メルギドはソフィアとシーラの過去の確執について当然知っている。それも原因なのかも知れないと思うと、二人はやるせない気持ちになってしまうようである。


『何かあったのか?』『ちょっと混み合った事情があるの。後で教えるわ』気になった健人がリリアムに質問するも、念話であるにも関わらず、神妙な顔をするリリアムに、これ以上聞くのはやめようと思った健人。


 そんな神妙な雰囲気の中、遠くの方からズガーン、と何か物音が聞こえた。その音の直後ズズン、と少し揺れる応接室。調度品もガタガタと音が鳴る。地震か? と思いふと立ち上がる健人。他の皆も何事かと一斉に席を立った。


「何事だ?」そして柄のない眼鏡をクイとあげ、音がしたであろう方向を見るビーナル。そこへ、緊急事態だからだろう、ノックもせず勢いよくバン! と扉を開け、一人の兵士が息を切らせて入ってきた。


「し、失礼致します! 城内に魔物が、王妃の部屋に魔物が現れました!」


 ※※※


「ヒイイイ!」怯えながら部屋の隅で小さく蹲るソフィア。


「ガ、ガガアア……」徐々に膨らみ大きくなっていくドノヴァン。ボコン、ボコンと肩が膨らみ、手が異様に長くなり、頭から巻き貝のような角がググっと生え、顔が伸び目が羊のような縦長の瞳になっていった。


 その様子を、扉を蹴破り入ってきたファンダルが、固唾を飲んで見守っている。何かが割れる音がして、無礼を承知で気になって、思い切ってドアを開けたら、徐々に膨らんで大きくなっていく紫色の魔物がいるではないか。王妃の部屋内でのあり得ない光景に、一瞬何が起こっているのか把握できず固まってしまうファンダルと兵士達。そしてこの様子は、あの魔族の女が持ってきた紫の玉を使った時に似ている。だが、少し冷静になったファンダルがハッとする。


「おい! 急いで王妃のところへ行ってお守りしろ! この化物は俺が相手する!」「かしこまりました!」ファンダルの怒声で、後ろにいた複数の兵士が我に返り、急いで部屋の中に入っていき、隅で蹲っている王妃のところに駆け寄ろうとした。


 だが、部屋に入ったその瞬間、兵士達が一斉に吹き飛んだ。「うがああ!」「ぎゃあ!」壁に激突する兵士達。眼の前の化物が手で兵士達を振り払ったのだった。


「……オウヒ、コロス。オウヒ、ワタサない」グルルと唸りながら、目の前にいるファンダルを、縦長の瞳で睨む化物。既に形が出来上がったようで、大きさは3mほどありそうだ。王妃の部屋は豪華な造りなので、部屋もそれに伴って広い。


「……もしかして、デーモンか?」化け物の正体に気づいたファンダルは戦慄した。そう呟いた瞬間、ファンダルの右方向から途轍もないスピードで手が飛んできた。正確には手で振り払っただけなのだが。


 咄嗟に彼の武器である槍で防ぐも、「うがああ!」ふっ飛ばされるファンダル。その勢いのまま壁に叩きつけられた。そして更に追い打ちをかけるように、化物ことデーモンがファンダルに飛びかかる。ドン、とファンダルの腹に乗りかかるように蹴りを入れた。


「ゴバア!」鮮血を吐き出すファンダル。不味い。やはり強い。勝てるわけがない。そもそもデーモンは自分くらいの強さの兵士が最低十人は必要な強力な魔物だ。何故そんな魔物が王妃の部屋に現れた? だが、その理由を考える暇を、この魔物は与えてはくれない。


 グリグリと蹴りを入れたところを踏み潰すかのように圧をかけるデーモン。「うがあああああ!」苦痛で叫ぶファンダル。その圧倒的なパワーに、逃れようにも逃れられない。そして自分の体の中でボキ、ボキ、と何かが折れる音が聞こえる。


「ぐ、ぐぅ。お、王妃を、お守り、しない、と」息も絶え絶えにファンダルが、右手に掴んでいる槍で、踏まれた状態のまま力の限りデーモンを攻撃するも、ガシ、と受け止められ、更に槍を奪われた。


「いい武器が手に入った」ようやく普通に言葉を話せるようになったデーモン。そして一旦足を離し、床に仰向けで倒れているファンダルに向かって槍を振り下ろした。ザクっと切り離される右腕。ブシャアとファンダルの切断された箇所から鮮血が迸る。


「うがあああああ!」右腕を切断され、狂ったように激痛で転げ回るファンダル。


「何だか旨そうだな」長い舌をジュルリと音を立てて、自らの口の周りを舐め回すデーモン。もう人としてのドノヴァンの姿は欠片も見当たらない。


「うぐ、う。こ、の……!」切断された辺りを抑えながら、血まみれの状態で何とか立ち上がるファンダル。だが、何処かの骨は数本折られ、右腕を失い、武器も取られ、どうしようも出来ない。


 それでも、王都直属兵士隊隊長としては、王妃を守らないといけない。その忠誠心を頼りに何とか立ち上がるファンダル。だが、立ち上がった瞬間、左方向からデーモンの手のひらが飛んできた。それを躱せない、防げないファンダルは、為す術無く無防備にその掌打を食らう。


 バン、と掌打が当たり吹っ飛ぶファンダル。そして勢いそのままに壁にドガァと激突した。壁に血糊を残しながらズルルと床にずれ落ちるファンダル。もう意識はない。正に瀕死の状態だ。


 だが、ファンダルがデーモンの相手をしている間、兵士達は何とか王妃を部屋の外に連れ出す事ができた。そして兵士の一人は、この異常事態を王に伝えるため離れ、もう一人は、将軍に連絡するため走っていった。更に王妃を出来るだけ遠くに連れて、二人の兵士が付きそう。残ったのは最初にデーモンにふっ飛ばされ、部屋の中で意識を失っている二名と、部屋の外にいるの兵士一人のみだ。


「エサ。そうだ、お前はエサだ」ニタアと嗤いながら、口角を耳の辺りまで広げ、怯える兵士を縦長の瞳で見つめるデーモン。その様子は、既にドノヴァンの雰囲気は一切ない。ただの魔物だ。そしてファンダルを含めた兵士達は、この眼の前の化物がドノヴァンだと知らない。変化している最中に部屋に乱入したのだから当然なのだが。


 死を覚悟した兵士が、せめて一太刀でも浴びせようと身構えた瞬間、ヴォンと武器を振るう音が聞こえ、デーモンの腕が吹き飛んだ。


「グウオア?」いきなり激痛が走り、自らの手が無くなった事に気づいたデーモン。その眼の前には、2mはありそうな巨体の、鎧に身を包み茶色の髭を蓄え、更に茶色のたてがみの、ライオンの獣人の男が扉の前に立ち塞がっていた。


「グオール将軍!」そんなグオール将軍を、希望を見つけたと言った表情で見上げる兵士。


 グオール将軍と呼ばれた彼は、王城で最も武の才に優れている将軍である。五年前の魔族との戦いでも大活躍し、勇者メンバーの次候補とまで評された獅子の獣人である。既に老齢ながら、巨躯を活かした力強い攻撃と、体の大きさからは考えられない俊敏な動きで、これまで数々の武勲を上げてきたのである。


「王妃の緊急事態だと聞いてやって来たが、何故デーモンがここにいる?」顎髭を触りながら考え込む様子のグオール将軍。たてがみに小さく見える二つの耳がピクピク動く。ふと部屋の中を見ると、ファンダルが右腕を失い倒れているのが見えた。その上二名の兵士が奥の方で倒れているのも。


「ファンダル!」急いで中に入ろうとするが、デーモンが切られた自分の長い腕を掴み、グオールの顔面に投げつけた。「ふんぬ!」盾でそれを受け止めるグオール。その圧倒的な力に吹き飛びそうになるグオールだが、体全部を持っていかれそうになりつつも、力負けしないよう、何とか全身で受け止めた。


「おい! 王妃は無事なのか!」「はっ! 既にこの部屋からお連れしております!」ドノヴァンデーモンの攻撃を凌ぎながら、側にいた兵士に質問するグオール。


「そうか」ホッとした顔をするグオール将軍。「なら、後はファンダルと兵士達だな」そしてグオールは気合を入れ直し、剣を改めて構えた。


 ※※※


「こちらです!」兵士が皆を案内する。今健人達は兵士の話を聞いて、急いで王妃の部屋に向かっている。王とビーナルは身の危険があるといけないので待機し、万が一の事を考えてメイに残って貰っている。シーナも同じく部屋に残ったままだ。ライリーは状況を確認したいとの事でついてきた。向かっている間も、王妃がいたであろう部屋から、戦っているであろう大きな音が響いているのが聞こえてくる。


「え? お母様?」部屋に向かう途中で、リリアムが兵士に付き添われているソフィアを見つけた。「大丈夫ですか?」ライリーも慌ててソフィアの側に駆けつける。


「はあ、はあ、ドノヴァン殿が、ドノヴァン殿が……」そして未だ洗脳が解けていないソフィアが、ドノヴァンを気遣っていた。


「……ドノヴァンが、どうしたのです?」ソフィアの、ドノヴァンを心配している言葉に胸が苦しくなるリリアムだが、それでも気になるので聞いてみる。


「リ、リリアム。あなた、ドノヴァン(殿)とお呼びなさい。結婚するのですから、その様な口の聞き方は許しません」息を切らしながらもリリアムを注意するソフィア。だが、その母親の様子に耐えられなかったライリーが、いきなりソフィアに「ホーリーリフト」を唱えた。


「な、何を、……あ、あああああああ!!!」苦しそうに頭を抱え絶叫するソフィア。その様子を辛そうに見るリリアムとライリーだが、洗脳を解くためには仕方ないので我慢している。


「……はあ、はあ。ふう」そしてそのまま、ソフィアは床にペタンと座り込んだ。その表情は、正に毒気が抜けたように爽やかに見える。


「ドノヴァンは、魔物に、なったわ」それでも荒い息遣いで、ソフィアは汗を額に滲ませながら、洗脳が解けたからだろう、ドノヴァンと呼び捨てにして、衝撃の言葉を放った。


「ドノヴァンが魔物になった? それより、どうしてそれをお母様がご存知なのです?」ドノヴァンは総神殿の大神官である。大神官といえども、本来王妃に気軽に会える筈もない。そんなドノヴァンの事を、王妃ほどの地位の人間が知っているはずないのだが。


「……私の部屋にいたからよ。私はドノヴァンと連絡を取り合っていたのよ」


 その内容はかなり衝撃的である筈なのに、その言葉に驚かないライリーとリリアム。寧ろやっぱりか、と思っているようである。ある程度予想していたのである。そして悲しそうな、切なそうな表情で、二人は床にへたり込んでいる母親を見下ろしていた。





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