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またもや出てくるあいつ

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

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「人質? だが、お前の娘の事は、誰も知らないのではないのか?」ビーナルが怪訝な表情で質問した。


「……情報って言うのは、どこで漏れるか分からないものですよ。ビーナル大臣」寂し気に微笑みながら、返事をするメイ。


「あの子が成長して、十歳になろうかという時、あの子もそろそろ自分で働いて、お金を稼いで、自立したいと思っていた頃でした。そんな時、とある孤児院で働かないか、と申し入れがあったそうです」


「実は、その話を持ち掛けたのが、総神殿の孤児院にいた事情を知る世話係の一人で、私と娘との関係をドノヴァンに教えていたのです」はあ、と、ついため息混じりに言葉を続けるメイ。


「これは私も知らなかったのですが、娘が働く事になった孤児院は、ドノヴァンの息がかかったところでした。そこで娘が騙され、隷属の腕輪という、奴隷契約が出来る物を腕に付けられているのを、遠目でドノヴァンに見せられました。娘の命が惜しければ、言う通りにしろ。そう言われながら」


 ドノヴァンは、メイがリリアム専属の侍女になった事で、何とか懐に入りこめないか、様子を窺っていた。そこで総神殿の孤児院で働いている職員を騙し、隷属の腕輪を付け、何か有益な情報がないか、調べさせていたのである。そしたらなんと、メイには娘がいて、自分の管轄内の孤児院にいるというではないか。メイの弱みを掴んだドノヴァンは、メイの娘を自分の息のかかった孤児院で働かせるよう仕向け、更にうまく騙して娘に隷属の腕輪を付けさせ、メイを脅したのだった。


 因みに、ドノヴァンはメイの娘が自分の娘でもある事を知らない。そもそも、ドノヴァンは沢山の女を孕ませているので、一人くらい自分の娘だと分かったところで、関心を持たないのだが。余談だが、ドノヴァンが身籠らせた子どもは、自分の息のかかった孤児院に送り、そしてそれなりの年に成長した見た目麗しい女は、隷属の腕輪を付けられ、ドノヴァンの慰み者になっていた。要するドノヴァンは、自分の娘にも手を付けていたのである。


 但し、一番最初に産まれた長男だけは、初めてだったからか、他の子どもとは違ったようで、自分の息子として認知していた。結局その長男も、ドノヴァンの私利私欲のために利用しているのであるが。


「ですが、当時リリアム王女は既にアクーに旅立たれた後だったので、ドノヴァンは方針を変えたのです。陛下とライリー殿下を洗脳し、リリアム王女を自分の物にすべく、外堀から埋めていこうという計画でした」


「なるほど。全て合点がいったわ」リリアムが顎に手を置き、神妙な顔でそう言った。


「ビーナル大臣。お父様とお兄様の洗脳は、私が既に解いております。この件、早急に対応しないといけませんわ」


「そうで御座いますな。急いで謁見の間に戻りましょう。メイ。お前も来るのだ。ああそれと、二人もな」


「ちょっと気になる事があるんですけど、質問していいですか?」急いで向かおうとするビーナルとリリアムを制止し、ケーラがおもむろに手を上げた。


「何だ? 早くしろ」行こうとして止められて、ちょっとイラっとしたビーナル。


「その、メイさんの娘さんが働いてたって孤児院って、もしかして火事になったりしませんでした?」その様子を気にする事なく、メイに質問するケーラ。


「なんでそれを?」ケーラの言葉に驚くメイ。


「ギルバートって知ってます?」メイの驚きの表情を気にせず、更に質問を重ねるケーラ。


「ええ。ドノヴァンの息子ですし、娘はそのギルバートがいた神殿の傍の孤児院で働いていたので。ただ、ドノヴァンは、火事にはなったが娘は無事で、今は拘束している、と言っていましたが」そう説明しながら、どこまで本当か分からないけど、と小さく呟くメイ。


「……マジか」「そうだわ。ギルバートってドノヴァンの息子だったわ」健人が複雑な表情になり、リリアムが思い出したという顔をする。


「……ねえ。もうギルバートって奴、指名手配でもした方がいいんじゃない?」そして明らかにイラついているケーラ。ここでも名前が挙がったギルバート。こういった案件に必ず絡んでいる事に呆れる三人。


「実は、あの子がいた孤児院が火事になって、心配になってギルドに調査依頼を出しました。ですが、結局誰にも受けて貰えなかったのです。でもそれは、ずっと邪魔が入っていたからだと、後で分かりましたが、もしかして……」ふと心当たりがあるように話すメイ。


「ケーラのお姉さんが話してたわね」「ああ」「そうだね」三人とも納得した表情。ナリヤが先日話していた、孤児院の火事の調査依頼。ギルバートがそれを受けるのを嫌がっていたようだったと話していたのを思い出した三人。


 そして、その調査依頼をギルドに依頼していたのは、目の前にいるメイだったのである。


「うーむ。思った以上に根深いですな。王女殿下。とりあえず謁見の間に急ぎましょう」


「そうね」ビーナルの言葉にリリアムが返事し、そしてメイを含む全員で、謁見の間に急いだ。


 ※※※


「……なんだと?」わなわな震えながら、怒りがこみ上げてくるのを必死で堪えている様子のドノヴァン。


「なんだと、とは何だよ?」偉そうな口ぶりに、イラッとして睨み返す魔族の少年。


「それは、それは一体どういう事だああああ!!」結局怒りを抑えられず、魔族の少年に掴みかかるドノヴァン。だが、掴まれた腕をバシっと弾く魔族の少年。


「怒りに我を忘れたって感じか」呆れた様子で呟く魔族の少年。その呟きにハッとするも、まだ怒りが収まらない様子のドノヴァン。


「あれだけ用意周到に準備していたというのに、どうして、どうしてバレたんですか!」魔族の少年に腕を弾かれたからか、自分の立場に気付いたようで、敬語に直すドノヴァン。


「何故かリリアム王女が、魔薬の事を知っていたらしいんだ」


「リリアム王女が?」唖然とするドノヴァン。そんな馬鹿な、あり得ないといった表情。


「とにかく今急いで飛んできたのは、その報告のためだったんだよ。前に渡した魔薬だけは、絶対に見つからないようにしてよ。それ見つかったら、ドノヴァンの命はないよ」そう釘を差して、魔族の少年は飛んで行った。


 その飛んで行く様をバルコニーから見送りながら、親指の先を齧りつつ、悔しそうな表情を浮かべるドノヴァン。


「何故だ。あの女を手篭めにし、地位を手に入れるために今まで慎重に、うまくやってきてたと言うのに! 何故だ! 何故だあああ!」


 バルコニーから飛び立っていく魔族の少年を睨みながら、近くにあった等身大の花瓶に蹴りを入れるドノヴァン。ガチャーンと大きな音がして粉々に割れるも、それを気にする様子もなく、歯ぎしりするドノヴァン。


「陛下とライリー王子殿下も既に洗脳が解けてる? 不味いじゃないか! ああそうだ。確認しないと」ハッと気づいて独り言を呟き、急いで身支度を整え、ドノヴァンは急いで部屋を飛び出していった。


 ※※※


 コンコン、と高さ2mはあろうかという、真っ赤の大きな両開きの扉のノックを音を聞き、どうぞ、と中から返事をする女性。


「シーナ様。先程、メルギド王陛下より、至急王城へ伺うよう、連絡がありました」白い服を着た男が、恭しく頭を下げ、報告をする。


「あらまあ。あの方がお声を掛けてくれるなんて。何時ぶりかしら?」可愛らしくコテンと首を傾げるも、どこか嬉しそうな表情の、シーナと呼ばれた妙齢の美しい女性。


「確かこの後予定はなかったわね。直ぐ支度するわ」その返事に、かしこまりました、とまたも恭しく頭を下げ、静かに真っ赤な大きな両開きの扉を閉め、白服の男は出ていった。


「……しかし何かあったのかしら。至急来るように、とは。総神殿内部の怪しい動きと関係あるのかも知れないわね」


 彼女は王城の隣にある総神殿の神殿妃、メルギド王第一側室のシーナである。メディーだけではなく、人族全ての都市の神官の頂点である。既に総神殿の神殿妃となって二十年は経とうとしているが、魔族との戦いの後くらいから、神殿内部の様子がおかしくなってきている事を気に病んでいた。


 最上位にいるだけあって、内輪の報告が中々回って来ない事にいつもやきもきしているシーナ。神官と言う職業柄なのか、本性を中々表に出さない者、腹に一物抱えているのがありありと分かる者が大勢いて、腹の探り合いや権力欲にかられた輩とのせめぎ合いに、彼女は半ば辟易していた。そんな事どうでもいいのに。それより大事なのは、神殿内部の浄化なのに。


「本当は、こんな役職糞食らえなのよねえ」着替えながら、誰もいないから遠慮なく役職に見合わない悪態を呟くシーナ。


 メルギドとは本気で愛し合った仲だと自負している。結局妃の座はソフィアに渡ったが、自分は別に妃になりたかったわけではない。そして若い頃は、明らかに自分の方がソフィアより寵愛を受けていたのを知っている。


 ただ、お互い歳を取り、逢瀬もなくなり、会う機会も減ってきていた。もう二~三年は会っていないのではないだろうか。そこでの呼び出しだったので、歳をとっていてもやっぱり嬉しくて、ついテンションが上がっていたシーナ。


「でも、どうやら楽しいお茶会、とはいかないみたいね」そう独り言を呟きながら、身支度を整え、防寒用の厚手の真っ赤なガウンを羽織り、王城に向かっていった。


 ※※※




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