見つけてしまいました
今日はもう少し、夕方くらいに投稿予定です。
「ごめんなさいにゃ~」しょぼんとした顔で謝る真白。頭の猫耳もぺたんとなっている。でも、健人が怒って心配して捜しに来た事を伝えると、真白は理由を話した。それを聞いた健人は、それからは無碍に怒る事も出来ないでいた。それはジルムとダンビルも同じ。とりあえず無事に見つかったのは良かった、そう思う3人だった。
「マシロが俺のために森に入っていたとはな。とりあえず戻るぞ。さすがにもう遅い。マシロ、家に帰ったら詳しく話してくれ」ダンビルが真白に声を掛ける。
了解にゃー、とダンビルに答えてから、イノシシと鹿の山を真白が担ぐ。今更ながらそのパワーに呆気にとられる男三人。身長150cmの小柄な女の子が、多分重さ500kgはあるだろうイノシシと鹿達を、ふんせっと担ぐ姿は或る意味圧巻だ。
もう既に周りは完全に闇だった。ランプの灯りを頼りに帰路を急いだ。
そして皆でダンビルの家に一旦帰宅し、真白が先に裏の庭にイノシシと鹿を置きに行く。後でダンビルが血抜きなどの処理と、皮剥ぎをやってくれる予定だ。とりあえず晩御飯がまだなので、食事しながら話しようという事になった。
真白はやっぱりダンビルさんのためにゴブリンを探してくれていたのだった。もしかしたら家族の遺品が見つかるんじゃないかって。また、可能ならダンビルさんが復讐出来るかも、と思って。正直俺はうっすら気づいてはいたんだよな。本能が叫ぶのにゃー! だから森に行くのにゃー! とか流石に無理があるしな。その心意気は買っている。
「真白の気持ちはよく分かるけど、分かってはいるだろうけど時間どおりには戻ろうな。このように心配してくれる人がいるんだから」と、心配かけていた事を軽く注意する。
「ごめんなさいにゃ」素直に再度頭を下げ謝る真白。猫耳も律儀にぺたんとなる。
「そうそう! 俺すっごく心配したよ! だからお詫びは一緒に飯食いに行くって事でいいよ!」
真白がイノシシと鹿を担いできたところを見てるというのに、ある意味勇者なジルム。真白が「えーと」と何か言おうとしたら、先にダンビルがジルムに話しかける。
「うむ。ジルムはもう帰れ」
ええ~、 と情けない声を出すジルム。俺もダンビルさんに同意してジルムを追い出す。
「俺だって手伝ったんだからなー!」
「はいはい。ありがとうな~」と手をひらひらしながら一応のお礼を言って、ドアを閉める健人。扉を閉められ、諦めつつもしぶしぶ帰るジルム。ま、明日にでもマシロが獲ってきたイノシシか鹿をおすそ分けするか。一緒に捜索してくれたお礼くらいはしとかないとな。マシロもOKするだろう。そうしよう、と決めた健人だった。
そして改めて三人で晩御飯の準備をし、食卓に座って真白に聞いた。
「んで、何があった?」
※※※
何か壁? みたいなのにぶつかってひっくり返ってしまった真白。仰向けに倒れてしまい、痛いと思いつつすぐ起き上がろうとする。しかし一匹のゴブリンが、真白の足を掴んでいた。「ぎにゃあ!」と絶叫しマジ嫌がりで思い切り足をぶんぶんする真白。ゴブリンはそれで吹っ飛ばされた。そしてサッと起き上がって臨戦態勢をとる真白。
「さっきのは何だったにゃ? 壁なんかなかったはずにゃ」でも目の前には土でできた壁がそびえ立っていた。しかしそれからすぐにガラガラと崩れ去った。よく分からない現象を目の当たりにして用心する真白。
突如杖を持ったゴブリンが「クキャ!」と何か叫ぶ。すると突然、土の下から尖ったつららの様なものが、真白めがけて5-6本飛んできた。驚いてそれらを躱す真白。更に「クーキャ!」と、杖ゴブリンが叫ぶ。今度は沢山の石が真白めがけて飛んできた。
それを、一旦後方にジャンプして避ける真白「これは魔法だにゃ。間違いないにゃ。ゴブリンに魔法が使えるのがいるって事なんだにゃ」と分析する。
真白の予想通り、真白を攻撃しているのはゴブリンメイジと呼ばれ、ゴブリンの上位種で魔法が使える。というより、魔法と魔力のクリスタルをたまたま手に入れ、どういうわけか、魔法を使えるようになったゴブリンである。たまたま冒険者の魔法使いから、理由はよく分からないが、魔法と魔力両方のクリスタルを奪ったゴブリンが、たまにゴブリンメイジとして、魔法を使えるようになる事がある。
「当たらなければどうという事はないにゃ」どこかの赤い誰かが言ったようなセリフを吐きながら、ゴブリンメイジが繰り出す土の槍や石つぶてをひょいひょい交わす真白。そして隙を見て徐々にゴブリンメイジに近づいていく。しかしもう少しで届くというところで「クキャキャ!」とまた土の壁を、ズズーンと音を立てて真白の前に作って、近づくのを防ごうとする。
しかし真白はその土の壁すらも、壁走りのように上に走って、そして飛び越え、とうとうゴブリンメイジのところまでたどり着く。そしてそのまま「にゃー!」と上からゴブリンメイジの脳天に踵落としを食らわせた。
「グッバァ!」と変な叫び声をあげ、ゴブリンメイジは背伸びしたままゆっくり後ろに倒れた。
「魔物に魔法で攻撃されるにゃんて。ちょっと焦ったにゃ」ふう、と一息ついた。そういや魔法使いと戦ったの初めてだったにゃ。・・・・・・あれ?そういえば先程いた十匹ほどのゴブリンが見当たらない。探してみよう。耳に意識を集中して音で探してみる。
するとここからそう離れていないところに、沢山のゴブリンの声が聞こえた。多分少なく見積もって……これは300匹はいる。どうやらいなくなったゴブリン達は、仲間を呼びに行ったようだ。これはまずい。もう遅い時間だし、戻らないと。この距離なら真白の足なら1時間で村には戻れるだろうし、ここから村は相当離れているはず。
そう思い立って、真白は急いで村に走って戻ったのだった。「……声の中に、ゴブリンじゃない声がいくつかあったにゃ。どうも嫌な予感がするにゃ」
※※※
「……と、いう事があったにゃ」真白は話し終わる。
ダンビルは真白からゴブリンを見つけた、と聞いた時、ガタっと立ち上がって真白の肩を掴んで、「どこだ? どこにいやがった!」と叫んでいたが、とりあえず健人がダンビルをなだめ、まずは真白の話を全部聞こう、と席に促した。何とか健人がダンビルを席につかせ、真白が話を続ける。ダンビルの顔はどんどん怒気を含んで赤くなっていくようだった。
ゴブリンが三百匹……しかも真白の話だと、どうやらもっと強いのもいそうだとの事。真白の(直感)が、そう感じたんだそうだ。ダンビルさんもようやく落ち着いてきたようだ。でもまだ怒りを抑えられないのか、顔は赤いままだが。まあ仇であるゴブリンが見つかったのだから、ダンビルさんの反応は当たり前だろう。
しかし魔法を使うゴブリン? 人間と違い自由に魔法が使えるのだろうか? 強い魔物ってのも気になる。真白の話を聞いてあれこれ思いを巡らせる健人。
そして真白が話し終わってから、既に冷静になっているダンビルが、真面目な顔で「ゴブリン達は多分、そう遠くない時期に、この村を襲いに来るだろう」そう言った。