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白猫大活躍?

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

※小説紹介サイト「ラノプロ」様にて、当方の小説を紹介頂きました!

リンク先などは活動報告に掲載しております。宜しければご一読くださいm(__)m

「ヴォフ!」白猫のキックのせいで、スプーンに入っていたスープがメルギドの顔にかかってしまった。更に白猫は、机の上にあったスープ皿を後ろ足でキックしてひっくり返した。バシャーンと机から皿が落ちて割れ、メルギドの蓄えた顎髭にかかる熱々のスープ。


「うおおお! 熱い!」突然の出来事に驚くメルギド。そして慌ててメルギドに駆け寄るメイドと執事。急いで顎髭についたスープを拭き取る。


 そしてスープをキックした白猫は、後ろ足だけでスタっと机の上に降り立ち、ビシィとサムズアップ? をするかのように、やってやったと言わんばかりに前足を決めた。


 突然の出来事に固まっている王族一家。だが、ハッと気付いたリリアムが声を上げる。


「マシロさん、急にどうなさったの?」


 その声を聞いた白猫がリリアムに飛びついた。驚いたが上手くキャッチするリリアム。白猫はリリアムにくっつかないと念話が出来ないから飛びかかったのだが。


『あのスープ、ヤバかったにゃ。毒の臭いがしたにゃ』そして理由を念話する白猫。


『毒ですって?』その念話に驚くリリアム。そこでハッと気づいたリリアム。どうやら白猫の危機察知が働いたようだ。


「おい! その白猫を殺せ!」メイド達が、メルギドの顎髭にかかったスープを拭き取り終わったところで、メルギドが怒りの形相で怒鳴った。だが、それをさせまいと、リリアムが白猫を隠すように胸に抱えた。


「ええい! 邪魔立てするなリリアム! その失礼な猫を我の剣の錆にしてくれるわ!」リリアムがガードした事で、白猫を仕留めようとした執事が戸惑っている間に、自らの腰についていた剣を抜いたメルギド。


「お父様! そのスープには毒が仕込まれているようですわ!」リリアムが叫ぶ。


「何をバカな事を! どこにそんな証拠がある!」怒鳴るメルギド。そもそもメルギドを含め、リリアム以外は、当然ながら白猫の危機察知能力を知らない。だから、実は白猫はメルギドを助けた、という事実が分からない。


 そして急に、リリアムの腕の中にくるまっていた猫の耳がピクっと動き、首を持ち上げた。


『犯人が逃げるにゃ』『え? そうなの?』そうリリアムに念話で伝えると、白猫はリリアムの体からスルリと抜け出し、タタタ、と食堂の外へ駆けていった。


「逃げたぞ! 追え!」逃げたと思ったメルギドが、怒気を孕んだ声で叫ぶ。その声に反応したライリーが食堂から飛び出した。そして執事も続いて飛び出し、リリアムも白猫の後を追おうとする。が、ロングドレスの裾が引っかかった。


「もう! 邪魔ね!」そう言ってロングドレスをビリリと引きちぎるリリアム。一気にミニスカートくらいの長さとなり、美しく白い脚が姿を現した。が、それに構いもせず、周りでリリアムの一連の行動を口をあんぐり開けて呆気にとられている両親とメイド達を食堂に残したまま、急いで白猫の後を追った。


 そして、先に飛び出したはずのライリーを、更に執事達を、リリアムはヒュンと風のようにそれらの横を通り抜け、置いてきぼりにしてさっさと先に行ってしまった。


「……なんだと?」長男で妹よりも身体能力に自信があったライリーは、後から走ってきたリリアムに追い抜かれ驚いた。リリアムは本人も気づかないうちに高レベルの冒険者になっている。ずっと王城にいたライリーより、健人達と共に過酷な状況で魔物と戦ってきたリリアムの方が、身体能力が高いのは当然である。


「よし。追いついたわ」風のように長い廊下を駆けながら、白猫の姿を見つけたリリアム。そしてサッと白猫をキャッチした。


『誰か分かるの?』そして白猫を抱え、走るスピードを落とさず、リリアムが念話で質問する。


『あのメイドにゃ』前足をとある方向に向ける白猫。その先には、リリアムがよく知るメイドが、リリアムと同じくらいのスピードで逃げているのが目に入った。


 ※※※


「うーむ……」机の上に置いてある、紫色の丸い塊を見て、唸るビーナル。


「これに魔物の血をかけると、魔物が沸いて出てきます。または、これ自身が魔物に変わります。更に、人間にぶつけたりすると、中の液体が体にかかって、人間が魔物になります」ケーラがこの紫色の塊、魔薬について説明している。他にも、机の上には、二つに割れた木の腕輪も置いてある。


「隷属の腕輪は、確かに存在自体は聞いた事があったが、実物を見るのは初めてだ」割れた片方の木の腕輪を、手にとってしげしげと見つめるビーナル。


「しかも、メディーの神官はこれを沢山持っているそうなんです」真剣な目で話す健人。


「ガジット村の神官が、嘘をついている可能性はないのか?」


「そんな嘘をつくメリットが、あの神官には無いと思います。だから信用できると思います。勿論、調査する必要はあると思いますが。あの神官がこの隷属の腕輪を持っていた事は事実ですし」チラリと机の上の木の腕輪を見ながら、説明する健人。


「しかもその神官、魔薬で魔物になっちゃったので」更にケーラが補足した。


「なるほどな」柄のない眼鏡のレンズをキラリと光らせながら、考え込むビーナル。


 確かにその件については、事前に風魔法で報告を受けていた。だが、ガジット村から風魔法で連絡が来たのは、メディーからではなく、アクーから神官を派遣したいという内容が主で、その理由として、その神官の件が書かれていたと判断し、王城には余り関係ないだろうと、早々に神殿(この場合は総本殿)にこの案件を投げてしまっていた。単に神官の派遣先を変える連絡だったと判断したからだ。


 そして王はその事よりも、リリアムの婚約の方を優先していたので、王自身も神官の件の詳細についてはどうでも良いといった扱いだった。なので、ガジット村の神官が隷属の腕輪を持っていた事。そして、魔薬と言う、聞いた事のない物で、魔物になった事といった、詳しい具体的な内容を知ったのは、ビーナルもこれが初めてだった。


 陛下がこのような重要な案件を、目通しもせず、興味を持たないのは、今現在、この世界が災厄もなく大きな脅威にさらされている事もなく、平和である事も理由の一つだろう。そう、ビーナルは思っていた。確かにここ最近魔物は増えているが、ギルドにいる冒険者達で事足りている。更に風魔法の連絡は、村長が使う緊急用ではなかった。エルフを使った通常の風魔法だった。それも、深刻に捉えなかった理由だろうとも、ビーナルは推測していた。


 因みにアクーからメディーへ、ゲイルとアイラを通じてやってきた風魔法は、単にリリアムの帰郷の連絡のみだった。隷属の腕輪と魔薬の件の報告自体は健人達に託していたので、ゲイル達はその内容を王城に伝えていなかった。


 だが、風魔法で送られてきた便りと、この二人の冒険者からの報告は、思っていた以上に重大な内容であった。ビーナルが認識を改めるには十分な内容だった。隷属の腕輪はそもそも禁忌である事は知っていた。だがそれを、メディーの神官達は当たり前のように所持し、己の欲望のために使っていると言う衝撃の事実。更に、魔物が増えた理由が、机の上に置いてある魔薬と言う物が原因と言う。しかもこれで人は魔物になると言うではないか。それもかなり衝撃的な話だ。一体誰が、何のために魔薬なるものをばら撒いているのか、調査した方がいいだろう。何者かが意図的に魔物を増やしているのだからどんな企みが有るのか確かめる必要があるだろう。そしてそれは、もしかしたら、いずれ起こるかも知れない災厄と、何か関係があるのかも知れない。


 このタケトとケーラと言う、二人の冒険者は、そんな重大な事実を掴み、そして証拠も持参してきた。リリアム王女殿下を護衛しつつ。この二人の冒険者に対しての認識をも改めるビーナルだった。


「正直、ここまで大事だとは思っていなかったな」柄のない眼鏡をクイと上げ、上目遣いで二人を見るビーナル。


「分かって貰えましたか?」


「ああ。ようやく理解した。お前達が必死に陛下に直接伝えようとしていた理由もな」健人としては、それが王に会いたい本当の理由ではないのだが。ビーナルとしては、確かに王に報告しなければならない、それ程重大な案件だから、陛下にお目通りを願っているのだろう、と思ったようである。


「では、これは私が責任を持って預からせて貰う」魔薬と割れた隷属の腕輪を手に取り、立ち上がろうとするビーナル。


「あの、リリアム王女には会えないのでしょうか?」この部屋からさろうとするビーナルを制止するかのように、声を掛ける健人。


「……善処しよう。但し、お会い出来るかどうか、それをお決めになるのは陛下である事は、理解してくれ」もしこの二人の言う通りならば、リリアム王女も当然詳細を知っているだろう。王女殿下を交え、一緒に確認する必要はあるのかも知れない。


 ありがとうございます、とお礼を言う健人。ビーナルは柄のない眼鏡をクイと上げて、うむ、と小さく頷いた。そして立ち上がるが、魔薬を見つめ何かを考えている。


「これ、試してみて良いか?」


 ※※※


「何て言うか、何もかもがでかいな」「ボクもう驚かなくなったよ」呆れながら見渡す二人。


 二人は今、王城内にある、兵士達の訓練場に来ている。東京ドーム丸々一個は入りそうな途轍もなく広い円形のグラウンドだ。そこに二十名程の兵士達と、城内に二人を案内した、ファンダルという名前の偉い感じの人がいる。


「また会ったな」不躾な言い方は相変わらずのファンダルが、二人に声を掛ける。その言葉に二人は会釈した。


「彼はファンダル隊長だ。王都直属の兵士団の中で、一、二を争う武の達人だ」ビーナルがファンダルについて説明した。隊長だったのか、と初めてファンダルの地位について知った健人。そしてアクーの、同じく隊長であるカインツとは同列に考えないほうがいいだろう、とも思った。王城には数千人の兵士がいて、それが百人程度の部隊に分かれている事は事前にビーナルから聞いていたが、その隊長の一人がファンダルで、しかも一、二を争うほど強いのだから。


「で? 今から魔物を呼び出すとか聞きましたぞ?」何やら楽しそうな様子でビーナルに声を掛けるファンダル。それと、ファンダルがビーナルに対して、一応敬語を使っている事にちょっと驚いた健人。もしかしたらこのビーナルって人は、実は結構地位が上の人なのかもしれない。


「ああ。私も初めてなのだが、そういう事が出来るらしい」柄のない眼鏡をクイと上げて、紫色の塊を取り出すビーナル。


「それは何ですかな?」興味津々な様子で、紫色の塊をジロジロ見るファンダル。


「これで魔物を産み出すらしい。だから来てもらったのだよ」


「ほう。それが、ですか」ちょっと楽しそうな顔をしながら、彼の武器だろう、槍を手に持って、片手でブンと一振りした。


「お持ちしました!」走ってやって来た兵士の一人が、どうやらオークの鼻らしきものを持ってきた。


「その鼻を少し切って、血をその魔薬にかけてみて下さい」そしてケーラが説明した。言われた通り、兵士が剣でオークの鼻を切り、ポタポタと落ちる血をビーナルが魔薬にかけてみた。すると、シュウウという音と共に、紫色の煙のようなものが出てきた。


「地面にそれを置いて、離れて下さい」ケーラの指示に従うビーナル。そして兵士達。ファンダルも距離を取るが、どこか嬉しそうだ。


「おお、これはなんと不思議な光景だ」明らかにワクワクしている様子のファンダル。そして魔薬の一部分がまるで水膨れのように膨れ上がり、それが段々大きくなって、風船のように膨れたところから、ポコンとオークが出てきた。それから水膨れがあちこちに出来上がり、何度も割れてオークがそこから溢れるように現れた。そして、その水膨れが終わったところで、魔薬自体が膨張し、人型に形成されながら大きくなって、魔物が出来上がった。オークジェネラルだ。


「ふむ。本当に出てきましたな」キラリと鋭い眼光を光らせ、2mはありそうな大きな槍を構えるファンダル。そして兵士達も一斉に身構えた。健人とケーラも同じく戦闘態勢を取る。ビーナルは戦闘は苦手なようで、兵士達の後ろに退いた。


「プゴ? プギャアア!!」先に産まれたオーク達がファンダル達を見つけ、一斉に飛びかかった。が、「フン!」とファンダルが片手で横薙ぎに槍を振るうと、飛びかかったオーク数匹が一斉に両断された。他に兵士達や健人、ケーラに襲いかかるオーク達。だが、オーク程度に遅れを取る兵士達ではなかった。ものの数分で全滅した。


「ブゴアア!」仲間達がやられたのを見て、殺気を帯びた叫び声を発し、ファンダルに飛びかかるオークジェネラル。だが、ファンダルはニヤリと笑う。「お前達は手を出すな」そう兵士達に指示をした。オークジェネラルは高レベルの魔物なのに、怯みもせず槍を構えた。健人とケーラは一応様子を見ながら、もしもの時のために臨戦態勢を取っている。


「プガア!」物凄いスピードでファンダルに殴りかかるオークジェネラル。だがそれを紙一重で躱し、背中越しになったところで思い切り肩をぶつけた。「プグア? 」よろけるオークジェネラル。更に「ハア!」と気合一閃、槍を上から振り下ろすファンダル。だが地面を転がって避けるジェネラル。そして距離をとって立ち上がった。再び怒気を孕んだまま飛びかかるジェネラル。そしていなし、躱し、時には槍の腹で受け止めるファンダルと、攻め続けるジェネラル。そんな攻防が数分ほど続いた。


「さすがオークジェネラルだな」一旦ジェネラルが距離をとったところで、嬉しそうに語るファンダル。そんな余裕ある態度が気に入らないのか、怒りの表情でまたもジェネラルが殴りかかる。それを槍の柄でいなし、隙が出来たところで、ズバンと首を一刀両断にした。声を発する事も出来ず、ゴロンと落ちる首。


「ふう。ちょうどいい鍛錬になった」汗を滴らせながら、落ちた首を槍先で突っつきつつ、満足そうにファンダルが呟いた。さすが隊長の中で一、二を争う実力者なだけある、強いな、と健人は見ていて感じていた。


「なるほど。これが魔薬とやらの効果か」そして後方でずっと様子を見ていたビーナルが、健人とケーラの言った通りになった事を確認して呟いた。


「待ちなさい!」魔薬の実証実験が終わり、ビーナルがファンダルにこの魔薬の件を改めて説明しようとしているところで、訓練場のどこからか叫び声が聞こえた。




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