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メディーそして王城デカすぎ

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

「なんやこれ……」呆れる健人。


「凄いね」ケーラも唖然としている。


 でかい。もうそれしか形容する言葉がないのではないか、そう思えるほど、健人の目に映るメディーの中は大きく広かった。


 真ん中にある大きな通りは、馬車三台は通れそうな大通り。それが全て石畳で出来ている。アクーのような舗装された単なる土の道ではない。終点が全く見えないくらい、大通りが長い。その両側には大小様々な家々と店が建ち並んでいる。


 そしてその先には、そびえるように佇んでいる、大きな城が見えた。あれがリリアムが生まれ育った、メディー王城だろう事は、すぐに分かった。一見山のように見えるその存在感に圧倒される。高さ百メートルはありそうな頂きと、中世ヨーロッパの城を思わせる形。


 どうやらこの石畳の大通りの終点が、王城のようであるが、その終点が見えないのだ。城は見えるのに。


 メディーの広さと大きさに、健人とケーラが圧倒されていると、リリアムを取り囲むように、十名ほどの兵士達が立ち並んだ。


「「「「「「「「「「リリアム王女殿下! お待ちしておりました!」」」」」」」」」」


 入ってすぐのところで待機していたであろう、十名ほどの兵士達が、声を揃え、そして一斉に片膝を立てて跪いた。


「ええ。お出迎えご苦労様」慣れた様子で兵士達に微笑みかけるリリアム。


「では、これから王城までご同行致します」兵士の一人が跪いたまま、恭しく声をかけた。


「宜しくお願いします」その声に返事をするリリアム。そしてそれが合図かのように、一斉に兵士達が立ち上がり、リリアム達の周りを取り囲んだ。リリアム達は馬に乗っているのだが、どうやら歩いてついてくるようだ。なので馬の歩みもゆっくり進まないといけない。


『真白。リリアムのところに行けるか?』『大丈夫だにゃ』念話でやり取りした健人と白猫。そして兵士に見つからないよう、ぴょんとリリアムの乗る馬に飛び乗った。そしてちょんとリリアムの手に触れる白猫。


『聞こえるか? リリアム』『ええ。どうしたの?』白猫を自分のところへ寄越した理由は分かったリリアムだが、何か話でもあるのだろうか? 


『いや、何か気軽に話しかける雰囲気じゃないからさ。念話なら大丈夫だと思って。これからいきなり王に会うのか?』


『どうやらそうみたいね』馬上で顎に手を置き、ふと考えるリリアム。


「ちょっと宜しいかしら? 私がここに来る事は、事前に知っていたと思うけれど、これからいきなりお父様にお会いするのかしら?」兵士に確認するリリアム。兵士が待ち構えているのは予想できたが、そう言えばこれからの予定は聞いていなかった。


「はっ! メルギド王陛下より、リリアム王女殿下がメディーに到着されたら、即刻王城にお連れするよう、仰せつかっております」礼儀正しく恭しく、答える兵士の一人。


「何か話でもあるのかしら?」


「誠に申し訳ありませんが、我々は王女殿下をお連れするように、という事以外は、何も仰せつかっておりません」


「そう。分かりました」そしてありがとう、と兵士にお礼を言うリリアム。


『どうやら、いきなりお父様に会うみたいよ』そして念話で健人にこれからの予定を伝えるリリアム。


『いきなりか……』じゃあ、いきなりリリアムとの事を話する事になるかも知れない。娘さんを僕に下さい、と、王様に伝えないといけない。普通の家庭でも相当緊張するというのに。勿論、神官の事や魔薬の事の報告がメインだろうが、話の流れでそうなる可能性がないとは言えない。そう考えると、一気に緊張してきた健人。


「では、参ります」一人の兵士がリリアムに伝え、そして兵士達が健人達を含めた四人全員を囲むんだ。そしてリリアムが馬をゆっくり進めると、健人達を囲んでいる兵士達もそれに合わせて歩き始めた。同じく健人達も併せて馬を進め始めた。


 大通りのど真ん中を、まるでパレードのように行進する集団。そう言えば大通りには馬車が一切通っていない。どうやらリリアムが通るために、一般人の通行は制限されたようだ。そして通りの両側の、軒先で果物を売っていた女性の手が止まり、騒がしくしながら歩いていた獣人らしい集団の会話が止まり、商談の途中らしい、耳の尖ったエルフとドワーフのやり取りが止まった。大通りを行き交っていた馬車達が急にいなくなり、その代わり、兵士と馬に乗った数名が、大通りの真ん中を闊歩する様子を、何事かと注目していたのだ。そして人々はその集団の中心人物が誰か、すぐに分かったようで、一斉にざわめきだした。


「見て。リリアム王女殿下よ」「おお。ようやく帰って来られたか」「ほんとお綺麗よねえ」「ああー、あんな綺麗な方と一度食事でも行きたいなあ」


 あちこちから聞こえる都民達の声。ざわめきが合図のように、段々と人が集まってくる。やがて道の両側は人が気で埋め尽くされた。正にでパレードのようだ。そして所々から聞こえてくる、リリアムに向けられる都民達の言葉は、概ね好印象だなあ、と健人は感じていた。


「あの青年、黒髪だな。しかも瞳まで黒いぞ。以前ここにいた勇者と同じだな」「じゃあ、あれも勇者なの?」


「後ろにいる女の子二人、めちゃくちゃ綺麗だな」「リリアム王女殿下の護衛ってのは、やはりあれくらい美人じゃないとダメなのか?」


 そして健人とケーラ、ナリヤについても、あれこれ話しているのが聞こえてきた。


 リリアムは堂に入った様子で身じろぎもせず、凛と済ました表情で、慣れた様子で兵士達に囲まれながら、前を見据え歩を進めている。一方健人は、大通りのど真ん中を、こんな多くの人達に見守られながら行進するなんて初めての事なので、ずっと緊張している。フェスやライブとは全く違う、まるで見世物のような感じに、中々気持ちがついていかない。そしてケーラは、物珍しそうにあちことキョロキョロ見回している。ナリヤはさほど緊張した様子でもなく、黙って後に付いていっている。ケーラもナリヤも、魔王の娘だからか、こういうパレードのような雰囲気には慣れているようで、健人ほど緊張しているようではなさそうだ。


「これ城に向かってるんだよな?」「そうだと思うよ」「しかし私までこんな風に大通りを歩く事になるとはな」


 ヒソヒソと三者三様に言葉を交わす。城に向かっているのは分かるが、その城の入り口が未だ見えない。到着する気配がない。遠すぎる。それはつまり、かなりの距離を、パレード状態のままずっとゆっくり進みながら、行進し続ける事になる。大勢の人達に見世物のように見られながら。


「ケーラ。俺辛い」「タケトが泣き言言うなんて珍しいね」ちょっと泣きそうな表情の健人を見て、アハハと面白そうに笑うケーラ。

 

 暫く進んだところで、集まってきた人の数が減ってきた。それを不思議に思った健人が周りを見渡すと、家並みの様相が変わってきているのに気づいた。これまでと違い、明らかに大きく立派な家が増えてきた。屋敷のような豪華な家が散見している。武器屋や服屋も同じく、これまでと違い、豪華な佇まいを見せている。


「この辺りは貴族や神官が住んでいる地域だ」物珍しそうにキョロキョロしている健人を見て、兵士の一人が教えてくれた。健人の疑問に気づいたようだ。兵士の気遣いに、ありがとうございます、とお礼を言う健人。どうやら城に近ければ近いほど、格式の高い人達が住む地域になっているようだ。


 そう言えばベルアートもこの辺りで商売をしているのではないだろうか? 五百円玉を王に献上し、それと引き換えに王都の一等地で商売をしたいと言っていたベルアートを懐かしむ健人。ヌビル村で会ってから、確か半年以上は会っていない。せっかくメディーに来たのだから、機会があったらベルアートの店に行ってみたい、そう思った健人。


 そしてようやく、王城の城門が見えてきた。同じく王城の姿もはっきり見えた。近くで見るとますます迫力があるなあ、と感じる健人。一つ一つが人より大きい石を積み上げて出来た城壁、城を取り囲むように掘られた、奥行30mはあろうかという広く深い堀、そして侵入者を拒絶するようにそびえ立つ、高さ20mはありそうな大きな城門。その門前には門番が複数、入り口を警護しているのが見える。


「凄いな」圧倒的な大きさと存在感に、つい呟いてしまう健人。


「魔王の城に比べても、ここまで立派じゃないよ」「そうだな。父上がこの城を見たらどう思うのだろうな」ケーラとナリヤも圧倒されているようである。


そしてようやく城門の前に到着した。護衛のようにリリアムを取り囲んでいた兵士の一人が、リリアムの馬に近寄ってきた。


「では、ここで少しお待ち下さい」そして恭しく頭を下げ、リリアムに話しかけた。


「分かりました。彼らも中に入って貰うよう、手配お願いしますね」


「かしこまりました。中の者に伝えます」リリアムの言葉に敬礼しながら返事をした兵士は、駆け足で王城の方に向かっていった。そして城門前で警護している兵士達と言葉を交わす。今度は警備の内の一人が、駆け足で城の中に入っていった。多分リリアムが到着した事を伝えるためだろう。


「人族の城の中に入れるのかー。楽しみだー」嬉しそうなケーラ。そんな楽しそうで全く緊張していないケーラが羨ましい健人。


 もしかしたら、リリアムとの交際について、王に話さないといけないかもしれない健人。またも一気に緊張してきた。まずは隷属の腕輪の事と魔薬の事を話しないといけないのだが、話の流れによっては、その事も言わないといけなくなるかも知れない。


 健人がそんな事をあれこれ一人勝手に悩んでいると、城門の方から、白馬に乗った一人の美青年がやってきたのが見えた。

そして城門をくぐり、健人達の前に姿を現すと、


「やあリリアム。待っていたよ」そのブロンドの美青年が、笑顔でリリアムを呼び捨て、挨拶をした。


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