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いよいよメディー

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「よし。こんなものだろう」


 ケーラと同じく、ショートパンツに黒のストッキングを履き、麻で出来たブーツと、上半身は白い長袖シャツと麻生地の襟元に白いファーがついた可愛らしいコートに着替えたナリヤが、アクー入り口前の村にある服屋から出てきた。


「さすがケーラのお姉さんだな」健人が見惚れそうになる。男物の仮の衣装の時とは違い、腰回りのくびれが強調された女性的な、スタイルが良いのが分かる服装。コートを着ていても分かる豊かな双丘のライン。紛れもなく超絶美女である。


「「……」」そんな健人を、他の超絶美女の彼女さん二人が、ジト目で両脇から軽く肘鉄を食らわせた。あぐぅ、と変な声が出てしまう健人。


「タケトのエッチ」「同意するわ」二人してフン、と腕を組んでツーンとする。見惚れてしまったのがバレてしまった。アハハと頭を掻きながら、乾いた笑いで誤魔化す健人。


『やっぱりこの女も手籠めにする気にゃ』相変わらず首襟に入っている白猫さんからも、上目遣いでジト目される。


『するわけないだろ』真白には何故かナンパ師みたいに思われてる気がする健人。 


『どーだか』ジト目のまま、念話で会話に入ってきたケーラ。


『ケーラのお姉さんなんだから、美人で当然だろ? 逆に見惚れないと失礼だと思うぞ』若干無茶な言い訳をする健人。


『まあ、姉さんは確かに美人だからねー』まあ許してあげる、と呟くケーラ。ケーラのお姉さんだから当然、と言われた事が嬉しかった模様。


「でも、ナリヤ姉さん。これからすぐメディーに向かっても大丈夫?」夜中ずっと走ってきたナリヤが気掛かりだったケーラ。だが、当のナリヤは大丈夫だ、と、笑顔で返事した。馬も大して疲れていない様子なので、一緒に向かう事にしたナリヤ。これ以上、ケーラ達に迷惑をかけたくないとも、思っているようである。


「じゃあ行くか」健人が皆を促す。そしてナリヤの身支度も終わったので、皆一斉に馬に跨り、改めてメディーの入り口に向かう四人と一匹。するとすぐに、沢山の人々が行列を作っているのが見えた。メディーに入るために並んでいる人達のようだ。


「あれ、リリアム王女様じゃないか?」「あ! 王女様だ」「おお、久しぶりにお見受けするが、やはり美しいな」


 行列のあちこちから、リリアムを見つけた人達が、ざわざわし始めた。やはりアクーとは違い、王都でのリリアムへの畏敬の念があるような雰囲気に、健人やケーラ、ナリヤまでも、関係ないのに緊張してしまっている。


「気になさらなくていいのよ。いつもこんな感じだから」超絶美女スマイルを健人達に向けるリリアム。そんなリリアムの笑顔を、見慣れているはずなのに、不思議と気品溢れる佇まいに見えてしまう健人。


「ガジット村でも思ったけど、やっぱり王女様なんだな」王都直属の兵士達の、リリアムに対する態度を思い出した健人。さすが王都と言う事もあって、都民達のリリアムに対する態度が、アクーの人達と全然違う。


 リリアムって、本来は雲の上の存在なんだよな。初めて会った時、多少はその認識を持っていた健人。だが、冒険者として共に行動し、当人から呼び捨てで呼ぶよう言われ、更には彼女になった事で、自然とその認識が甘くなっていた健人。そして今、改めて沢山の人達の、リリアムを崇めるような様子を見ると、ようやくその実感が沸いてきた。リリアム王女殿下と言う存在の大きさが、今になって現実的に理解出来た。


 ……リリアムに偉そうな事言ったけど、大丈夫か俺? 夫になる、とか、二人で乗り越えようとか、カッコつけすぎた気がする。行列を作っている人達の、リリアムを崇め畏敬の念を込めながら見つめている様子を見つつ、思っていた以上に、リリアムと結婚するという話は、簡単じゃないのかも知れないと思う健人。寒いので白い息を吐きながら、それでも額に汗が滲んでしまった。


 行列を横目に、馬に乗り歩を進めていると、目の前に、高さ5m以上はありそうな、大きな鉄で出来た格子で塞がれている、レンガ造りのアーチ状の入り口に辿り着いた。その横には、二階建て一軒家くらいの大きさの、警護兵用の詰め所がある。


 兵士の一人がリリアムに気づき、急いで詰め所の中に走っていった。そして中から一斉に二十名ほどの兵士が、門の前に横一列に並んで敬礼した。


「リリアム王女殿下! お待ちしておりました!」兵士達が一斉に出迎え、声を発した。


「お出迎えありがとうございます。彼らも一緒に王城に向かうので宜しくお願いします」ニコリと兵士達に微笑み、健人とケーラ、更にナリヤに目配せするリリアム。


「かしこまりました!」そして一斉に、まるでモーゼの十戒みたいに、道沿いに綺麗に二手に分かれて並び、敬礼する兵士達。これが王女殿下の影響力か。兵士達の様子に呆気に取られ緊張した面持ちの健人。白猫もさすがにいつもの呑気な欠伸をせず、じっと大人しくしている。一方ケーラとナリヤは余り気にしていない様子。さすが魔王の娘と言ったところか。このような扱いには慣れているのかも知れない。


 健人だけ緊張した面持ちで、大きな鉄柵の前に四人が馬で向かうと、一人の兵士がリリアムの馬に近づいてきた。


「リリアム王女殿下、そこの三名の冒険者については、一応身元を確認致したく存じます。お寒いと思いますので、中でお待ち頂きたく存じます」恭しく頭を下げながら、用件を伝える兵士。


「構いません。その間、ここでお待ちしております」白い息を吐きながら、リリアムが答えた。確認作業は然程時間がかからないだろうから、馬から降りて中で待つより、このまま待っている方が楽だと思ったリリアム。


「ははっ! かしこまりました! では、君達はこちらへ」そして健人とケーラ、ナリヤは、二階建ての詰め所に案内された。


 そして詰め所の前に馬を繋ぎ、三人は中に入った。玄関口はなく、そのままリビングに繋がっているような部屋だ。真ん中に机と椅子が置いてあり、そこに掛けるよう、兵士に促された。言う通りに座る三人。


「君達はリリアム王女殿下の護衛という事でいいのか?」そして兵士の質問が始まった。


「えーと、それでいいです」健人が答える。


「何だか曖昧な返事だな」健人の顔を見ながら、首を傾げる、目の前に座っている兵士。


「ボク達はリリアム王女とは仲間って意識が強いんです。彼女もそう扱えと言ってたので」ケーラが代わりに答える。上手い方便だ。念話でケーラにありがとう、と言っておいた健人。


「なるほど。王女殿下のご寛大なご意思で、そう言う事にしているわけか」うんうん、と何か勝手に納得している兵士。本当は違うのだが、説明する必要もないので、まあそれでいいや、と思っている健人とケーラ。訂正するのも面倒なので。ナリヤはよく分かっていないので、黙ったままだ。


「その首から出ている猫は、君のペットなのか?」白猫はずっと健人の胸元から首を覗かせたままである。兵士に向かってにゃーごと鳴いてみる白猫。


「ええまあ、そんな感じですけど、何か気になる事でも?」何故わざわざ猫の事を聞いたのだろうか? 不思議に思った健人。


「いや、たまに魔物を使役している魔族がいるんだ。その猫もそこの魔族が使役している魔物かと思ったんだよ」


「ああ、全然違います」なるほど、と納得した健人。ここメディーはアクーと違い魔族が普通にいるのだろう。それで使役している魔物もチェックする必要があるのだろう。例えばケーラの使役している、コウモリのモルドーのようなものだと思われたのかも知れない。


「ん? 君は、確か数か月前ここにいたのではないか?」何かのリストのような、束になった紙をめくりながら、ナリヤを見て質問する兵士。


「ええ。でも、ケーラ、妹にたまたま出会ったので、また戻ってきたのです」ナリヤが丁寧な言葉で答えた。普段やや高圧的な物言いのナリヤだが、時と場合をきちんと弁えているようだ。


「なるほど」そう答えながら、何かのリストのような紙をペラペラ捲る兵士。そして健人とケーラの名前と種族を確認した。


「よし。問題ないな。では引き続きリリアム王女殿下の護衛、宜しく頼むぞ」ずっと真面目な表情だった兵士が、ここでニカっと笑って健人に握手を求めた。ええ、と軽く会釈して、同じく笑顔で握手に応じる健人。そして三人は詰め所を出て、繋いでいた馬を解いて跨り、リリアムの元に向かった。


「お疲れ様」白い息を吐きながら、笑顔で三人を迎えるリリアム。


「では、参りましょう」そして急に前を見据え、表情が引き締まったリリアム。そのままリリアムを先頭に、馬に乗った状態で鉄格子の門の前に進む。


「開門!」横に一列に並んでいた、一番先頭の兵士が大声を発した。ギギィと鉄が擦れる音が聞こえ、徐々に鉄格子が上にせり上がり、門が開いた。



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