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再会

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「ケーラ?」馬を引きながら向こうからやって来た人影が、先に声を掛けた。


「もしかして、ナリヤ姉さん?」そしてそれが、自分が良く知る、自分が探していた人物だとすぐ気付いたケーラ。


「ああ。その声は、間違いない。ケーラだ。ああ、ケーラ!」そう叫びながら駆け寄ってくる、オレンジ色の髪の美女。


「ケーラ!」「ナリヤ姉さん!」涙を流しながらケーラを抱きしめるナリヤ。ナリヤを受け止めたケーラも、目から涙が溢れた。


「元気だったか?」「うん」顔を向け合い言葉を掛け合う二人。短いやり取りだが、お互い思い遣っている事が良く分かる二人の表情。


 事前にメディーまでやって来ている事は、昨晩モルドーから聞いていたケーラ。ただ、会えるのはメディーに入ってからだろうと思っていたのだが、まさかここアクーの入り口前の村に来るとは。


 ナリヤはアグニの入り口前の村の宿に宿泊していたが、ケーラが昨日、アクー入り口前の村に到着したとモルドーから聞き、居ても立っても居られなくなって、宿の主人に無理を言って馬を借り、夜の間ずっとアグニの入り口前の村から走り続け、そしてつい先程、ここアクー入り口前の村に辿り来たのだ。


「ケーラが探していたお姉さんみたいだな」「そうね」二人の喜ぶ様子を温かい目で見守る健人とリリアム。ここメディーに来たもう一つの理由が、ケーラの姉を探す事だったが、こうやって向こうからやってきてくれるとは。


「おい。そこの人族の男」傍で健人が二人を見つめているのに気付いたナリヤが、一旦ケーラとの抱擁から離れ、キッと健人を睨みながら、いきなり剣呑な雰囲気で声を掛けた。


「へ?」いい雰囲気の二人の様子から、急に豹変したナリヤの態度にびっくりする健人。


「お前、ケーラに何をした? 場合によっては、お前をここで殺す」怒りの籠もった言葉を吐きながら、殺気を漲らせ、拳を握り、健人に歩いていくナリヤ。


「えーと? いきなりどうしたんです?」予想出来なかった展開に戸惑う健人。どうやらお怒りのようだが、どうしてだろうか? 自分は何も悪い事はしていない。そもそも、ケーラのお姉さんとは初対面のはずなのに。何を怒っているのだろうか? 


「ちょっとお待ちになって。あなたはケーラのお姉様で宜しいですね?」理由は分からないが、険悪な雰囲気になりそうだったので、リリアムが二人の間に割って入った。


「……本当にリリアム王女なのだな」モルドーの言った通り、確かにリリアム王女がケーラと共にいた。モルドーが嘘をつくはずもないのだが、実際見るまで信じられなかったナリヤ。そしてリリアムが間に入った事で、少し頭が冷めた様子。


「リリアム王女も、その人族の男が誑かしたのか?」リリアム王女がこの男の味方をするのであれば、そういう事だろう、と勝手に推測するナリヤ。


「……あなたは何を仰っているの?」健人に対する失礼な物言いに、ついイラっとしてしまうリリアム。何故健人にここまで敵対心を持つのだろうか? 


「モルドーに聞いたぞ。ケーラ、お前この黒髪の人族の男に入れ込んでいるらしいじゃないか」


「モルドーがそんな事言ってたの? ……あいつ余計な事を。おしおきしないといけないね」モルドーがどこにいる分からないケーラだが、適当に森の方をギロリと睨む。そして、その森の中にたまたま潜んでいたコウモリに悪寒が走ったのは、気のせいではないだろう。


「そもそも、魔族が人族に惚れるなんてあり得ない。だからその男もナリヤに薬でも盛って誑かしんだろう? 」フン、と鼻にかけながら言葉を発するナリヤ。


「タケトがそんな事するわけ無いでしょ!」「いい加減になさい! 失礼にも程があります」


 健人に対する失礼なナリヤの物言いに憤慨する二人。そして、言われた当人ではなく、二人からの反撃にたじろぐナリヤ。ケーラだけでなくリリアム王女までも擁護するとは。


 一方、ナリヤのそんな様子を黙って見ている健人。きっと何か理由があるのだろうと、案外冷静に考えていた。今まで何度も、種族だけで判断してきた人達を見てきたからかも知れない。


「何があったか分かりませんけど、俺はこの二人に薬を盛るような、そんな卑怯な事は一切していません。本当に何もしていません。誓って言えます」とりあえず、誤解を解くのが先だと思った健人は、ナリヤの言葉を否定した。


「本当に何もしてないんだな?」ツカツカ健人に歩み寄って詰め寄るナリヤ。


「してませんって」目の前に迫ったナリヤを見て、ケーラに負けず劣らずの美人だなあ、とか呑気に考えながら答える健人。身長はケーラと同じ160cmくらいだろうか? 紅い瞳もケーラと同じだ。ケーラより切れ長の気の強そうな目と、小顔ながらも鼻筋の通った、正に美女を作れと言われればこういう顔になるだろう、というような、典型的な超絶美女である。そしてそんな健人の心の声に気付いたのか、首襟から顔だけ覗かせていた白猫が、健人を上目遣いのジト目で見ている。


『まさか、この女まで手を出すのかにゃ?』『なんでやねん』念話ではっきり否定ツッコミ。真白もなんでそういう事言うんだ? 誰も彼も手を付けているジゴロみたいに思わないで欲しい、と思う健人。


「本当に、本当に、ほんっとーに、何もしてないんだな?」ググっと顔を近づけ、睨みながら何度も確認するオレンジ髪の美女。


「ひつこいですよ。いくらケーラのお姉さんでもいい加減怒りますよ」近い近い、と言いながら、ナリヤを押し戻す健人。やっぱり美人はトラブルの元だと、改めて思っていたりする。


「じゃあ、なんでケーラはそんなにお前に懐いているんだ?」


「そりゃあ、大好きだからだよ?」何言ってんの? てな感じで健人の肩に手を置いて、その肩に可愛く顔を乗せながら、代わりに答えるケーラ。一応リリアムに遠慮して腕を組むのは我慢しているのだが、このボディタッチは相当距離が近い。近すぎるわよ、と、誰かの怨念のような呟きが聞こえたような気がしたが、知らないふりしてスルーしたケーラ。


「……ケーラ。お前は何を言っているのか分かっているのか?」カップルみたいな二人の様子に呆気に取られながら、言葉を返すナリヤ。


「分かってるよ。お姉ちゃんだから言うけど、ボク、タケトと結婚するんだ」


「「そうなのか?」」ナリヤと健人がハモりました。


「え? ちょっとタケト、どういう事だよ?」ナリヤより健人の反応が気に食わないらしい。手を腰に置いてプンスカしているケーラ。


「いやだって、そんな話した事ないだろ?」何度も肌を重ね合った仲だが、結婚の話はしていない。責任感が強く真面目な健人が、適当にそんな大事な事を言うはずがない。


「でも、いずれ結婚するでしょ?」


「いやまあ、そうだとしても、プロポーズくらいはちゃんとさせてくれよ。先にそういう事言うなよ」呆れ顔の健人。


「あー、そっか。そうだね。ごめんね」舌をペロっと出してエヘヘと笑いながら、つい気が緩んで健人の腕に絡むケーラ。


「「ちょっと!」」今度はリリアムとナリヤがハモリました。


「……なんでリリアム王女が怒るんだ?」ケーラを健人から引き剥がしながら、リリアムの様子を訝しがるナリヤ。


「え? まあその、オホホホ」突如、手の甲を口元に当て、無駄に王族っぽい高貴な笑いを上げるリリアム。冬で寒いはずなのに額に汗をかいています。そして全く何も誤魔化せていない。この変な誤魔化しと、先程からのリリアムの様子で、健人との関係に気付いたナリヤ。


「……まさか、リリアム王女まで」呆れた口調のナリヤ。


「……えーっと」正直に言って良いのかどうか悩む健人。ナリヤの素性をよく知らないのに、リリアムとの関係を簡単に明かしていいとは思えない。


「とにかく、ボクタケトが大好きなんだ。ずっと一緒にいるんだ」そこで助け舟? ケーラが間に入った。


「だからケーラ。その言葉の意味を分かっているのか? おままごとじゃ済まないんだぞ?」真剣な目で、再度諭すように確認するナリヤ。


「分かってるよ」強い眼差しでナリヤを見返すケーラ。その瞳の中に、ケーラの強い決意と覚悟が見て取れた。


「……覚悟は出来ているんだな?」再び確認するナリヤに、うん、と強く頷くケーラ。


「俺も、ケーラとの関係を認めて貰うつもりです。本気です」健人も自分の強い決意をナリヤに伝える。


「……本気なのか」


 未だ信じられないと言った表情のナリヤ。だが、ギルバートに騙された自分と違い、ケーラは騙されたりした訳ではない事はようやく理解出来た。()()もされていないようだ。人族と魔族が恋仲になる事など、普通に考えたらあり得ないから疑っていたのだが、この二人はお互い惹かれ合っているようだ。


「タケトと乗り越えるから大丈夫!」そう言ってナリヤにサムズアップを決めるケーラ。そんな能天気な様子の妹に、呆れた顔で深いため息をつくナリヤ。


「どうしてそんなに、タケトとケーラとの交際についてひつこく確認するのかしら?」プライドが高く、この世界の種族の中で上位に位置付ける立場だと自負している魔族が、五年前戦争にまで発展した、言わば見下している人族と恋人関係になるという事は、魔族側の常識としてあり得ない、という事は知っている。それでも、ナリヤの追及が余りにひつこいのがどうも気になったリリアム。


「それは、私達は魔王の娘だからだ」当たり前だろ? と言わんばかりに話すナリヤ。


「はあ?」と、らしくない呆れた声が出てしまったリリアム。このタイミングで冗談仰るの? と首を捻る。そしてケーラがあちゃあ~、と頭を抱え空を見上げた。健人もしまった、とつい声を出してしまった。


「……え? 事実、ですの?」二人の様子にまさか、と驚いた表情になるリリアム。五年前、自分の父親、メルギド王に対して宣戦布告状を送り、魔物と魔族を率いて王都メディーに攻め込んできた、あの魔王ガトーの娘が、ずっと一緒に旅を続けてきたケーラと、その姉のナリヤ?


「もしかして、リリアム王女は知らなかったのか?」三人の様子に、今までリリアムが知らなかった事に気付いたナリヤ。


「……タケトは知っていたの?」ちょっと寂しそうな目で健人を見つめ、確認するリリアム。まるで仲間外れにされていたような気がしている。


「ああ」頭を掻きながら気まずそうに返事をする健人。


「ボクがタケトに口止めしてたんだ。リリアムって王女だから、伝えるタイミングを慎重に考えてたんだ。頃合いを見ていつか言おうと思ってたんだ」ごめん、と謝るケーラ。


「そうなの。なら、仕方ないわね」どうやら本当らしい。ようやく事実だと飲み込めた様子のリリアム。そしてこの二人は、自分に対して悪意がないのは分かっている。そんな重要な事を今まで伝えなかったのは、彼らなりの気遣いだと言う事も。何だかんだ言ってこの三人は半年以上の付き合いだ。お互い気づかない間に信頼関係が出来ているのである。


「でも、人族の王の娘と、魔王の娘がパーティーメンバーだなんてね」凄い偶然である。思わずフフフと笑ってしまうリリアム。


「でもまあ、よく考えたら、最初から知らなくて良かったわ。ケーラを知らない時に、魔王の娘だと分かっていたら、そもそも一緒に旅をするなんてしなかっただろうし」


「そうだね。だからボクもずっと黙ってたんだ。人族の都市にいる間、余計な揉め事は避けたかったから。まあ、だからと言って他人行儀はなしで頼むよ。今まで通りで」


 それはこちらのセリフよ、と言いながら、お互い微笑み合う美女二人。そんな二人の様子を、安堵し傍から見ている健人と、そろそろ飽きてきたのだろう、健人の首襟から首だけ出している、くわぁと大きな欠伸をする白猫。


「なんだか済まなかったな。まさかリリアム王女が知らなかったなんて思わなかったから」三人に謝罪するナリヤ。大事にならなくてよかったと安堵している様子。


「いいよ。ちょうど良かったと思うし」気にしないで、とニコっと笑うケーラ。


「ねえ。ナリヤ姉さん、さっきから気になってたんだけど、どうしてそんな服着てるの?」明らかにサイズの合わない大きめの、しかも男物の服を、ナリヤが着ているのが気になっていたケーラ。元々美的感覚に優れ、ファッションにも気を使う姉なのに。  


「あ、ああ。ちょっとな」気まずそうに返事をするナリヤ。ヘンが山賊から奪った服を着ている事を、どう説明すればいいのか。


「ん?」そこで、ふとケーラがナリヤの左腕の、長袖シャツに隠れていた何かの膨らみに気がついた。



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