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プロポーズ? 

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m


「……」


 今日はリリアムの日なので、健人といるのはリリアムだが、二人きりが嬉しいはずのリリアムの表情が優れない。それでも、健人の胸に頭を預け、甘えているのだが。二人は当然風呂付きの部屋の方にいる。なのでケーラと白猫は、もう一つの部屋で休んでいる。


「どうした?」ベッドで二人、寝る前のピロートーク、といった甘い雰囲気は無理そうな、元気のない様子のリリアムが気になって、声を掛ける健人。


「メディーに帰りたくないの」この言葉を聞くのは、もう何度目だろうか。


「そんなに怖いのか?」その言葉を何度繰り返されようとも、煩わしいとは一切思わず、その都度優しく、思いやりを持って接している健人。出来る限りリリアムの不安を取り除きたい、そう思っているからだ。


「それもあるわ。でも、タケトと離されるかも知れない。それが嫌なの」涙目で訴えかけるように見つめるリリアム。


「そんなに思いつめるほど深刻な事なんだよな」事の重大さがいまいちよく分からない健人。だから、リリアムが真剣に悩むのが理解出来ていない。それを、リリアムが落ち込む度に申し訳なく思っている。正直なところ、その場面に遭遇しないと想像すらつかないのが本音だ。だから仕方ないのも分かってはいるが、リリアムの不安な様子を解決出来ない自分をもどかしく思っている。


「分かってやれなくてごめんな」自分の至らなさが申し訳なくて、ヒシっとリリアムを強く抱きしめる健人。それを静かに受け入れるリリアム。健人の強く優しい抱擁を受け入れながら、リリアムは声を出さず静かに泣いている。その様子を感じ取って、今度は健人がリリアムの頭を優しく撫でる。


「何か良い方法はないのか?」


「正直、分からないの」


「じゃあ、俺から離れなければいいじゃないか」


「そばにいたいにきまっているわ。だって私、あなたを心底愛しているもの。ああそうだわ。子どもを作りましょう? なら、既成事実になるわ」


「それはダメだ。順序が逆だ。きちんとリリアムの両親に、今の関係を伝えてからだ」


「本当、真面目よね。そういうところも好きなんだけど……。ねえ。私と結婚して」涙目で唐突に結婚を口にするリリアム。


「……プロポーズはちゃんとさせてくれよ。それについては、俺もちゃんと考えてるから」


 最近、明らかに情緒不安定なリリアム。ただ、そんな姿を見せるのは、健人と二人きりの時だけなのだが。普段は気丈に振る舞っているリリアム。自分で言うのも何だが、リリアムは俺がいないとダメになるだろう、そう思ってしまうくらい、リリアムの気持ちがままならなくなっていると感じる健人。メディーから来たリリアム宛の手紙については、どんな内容か知っている。その事がリリアムをここまで健人依存症にさせている事も。


「どうしようも出来ないなら、別れるか?」


「! それだけは絶対にイヤ! 絶対に! 私もう、タケト無しじゃ生きていけないの。タケトじゃないとダメなの」大声を上げ顔を上げ、必死の形相で訴えかけるリリアム。そしてウッウッと泣き出してしまった。少しいじわるだったかな? ごめん、と謝り頭を撫でる健人。


「なら、二人で乗り越えよう。そして俺はリリアムの親に、きちんと認めて貰うようにするから」


「出来るかしら」目に涙を溜め、グスっと鼻を啜りながら、呟くリリアム。


「出来るか出来ないかじゃない。やるんだよ。で、俺達の関係を認めてもらったその後、俺はお前の夫になる」


「本当?」健人のその言葉を聞いて、目を見開くリリアム。


「ああ。約束だ。だから、プロポーズは日を改めて、俺の方からさせてくれよ」


 涙目のまま、嬉しそうにコクンと小さく頷くリリアム。真面目で責任感の強い健人の強い意志。そんな彼が言うなら疑う余地もない。安堵した表情で、改めて健人の胸に頭を預ける。その頭をずっと優しく撫で続ける健人。


 とうとう、夫になる、と口に出して言ってしまった。でも、そう言わないとリリアムがずっと不安だっただろう。そもそも前から、この子とは結婚を真剣に考えていた。遅かれ早かれ、いつか伝えるつもりだったのだから、後悔はしていないのだが。……本音を言えば、真白が元に戻ってから、三人揃って結婚の話をしたかったのだが。


 ケーラの親に認めて貰うのだって大変なはず。だってケーラの父親は魔王だから。正直魔王というのが、この世界でどういう位置づけなのかよく分かっていないが、(魔王)という言葉の響きだけで、とんでもない人物だと言う事は何となく分かる。更にケーラによると、魔族が人族と恋仲になるのは、殺されるかも知れないくらい、あり得ない事らしい。なのに、その状況を覆してもケーラを自分の妻にしないといけない。


 だが、とりあえず先にリリアムだ。明日にはメディーに行くのだから。この子は俺が守る。夫になる、そう言葉にして伝えた事で、より腹が決まった健人だった。


 ※※※


「ぷひゃー! 大浴場最高ー!」全裸でタオルをスパーンと自らの肩に叩きつけ、風呂から上がって脱衣場に入るケーラ。物凄くスタイルの良い超絶美少女のスパーンは、何故か見惚れるほどカッコよく見えたりする。つい先程までこの宿にある大浴場を堪能していたケーラ。ついで白猫も一緒に入浴していた。この世界には毛むくじゃらの獣人がいて、当然彼らも大浴場は利用するので、同じく毛が多い猫が入ってもお咎めなしのようだ。


『温まったにゃー』白猫もご機嫌よさげだ。旅の汚れが落とせたのも嬉しかったのだろう。脱衣場に入る前にキチンと体をブルルとして水気を落とした白猫。知性と理性があるからだろう、その辺りの常識は弁えている。ん? 知性と理性?


 とにかく、一人と一匹は、脱衣場で濡れた体を乾かしながら、ケーラはコップに入った山羊のミルクを腰に手を当てぷはーと飲み干し、白猫は薄い皿に入ったミルクを舌でペロペロ舐めて飲んだ。それからケーラは寝間着に着替え、白猫の水気を拭き取ってやり、一緒に部屋に戻って寝る支度をした。今日はケーラと白猫が一緒の部屋だ。健人とリリアムのイチャコラの声など聴きたくない白猫にとっては、ご主人様と部屋が別なのは有難い模様。


 そして火の魔法で灯っているランプの灯りを消して、白猫を両手に抱えながらベッドに入るケーラ。ちょっと話がしたかったのだ。

念話出来るのだから別に離れていてもいいのだが、面と向かった方が会話しやすいらしい。


『ねえねえマシロさん。ボクとリリアムがタケトの彼氏ってのはどう思ってるの?』いい機会だから聞いてみようと思ったケーラ。


『前も言ったけど分からないにゃ。でも、嫉妬はしてるっぽいにゃ。ご主人様とリリアムかケーラが仲良くしてるのを見るのは、どうもイライラするようだにゃ。私はご主人様と同じ世界から来てるから、同じように複数の異性と関係を持つのは余りいい気持ちじゃないと思っているみたいだにゃ』みたいだにゃ、と他人事のように念話する白猫。


『そうなんだ。じゃあ、この世界の恋人関係について、マシロさんの意思? が戻ったら、説明しないといけないね』


 そうだにゃ、と、白猫が念話で返したところで、ピクっと耳が動いた。『誰か窓の外にいるにゃ』


「あ。ようやく帰ってきたね」ケーラは誰か分かっている模様。そして警戒せずおもむろに窓を開けた。ヒュウ、と冬の冷たい風が入り込み、つい身を屈めてしまうケーラ。そしてそこにはあのコウモリが、逆さになって窓の上の縁にぶら下がっていた。


「遅くなり申し訳御座いません」恭しく頭を下げる、いや、逆さなので頭を上げるコウモリ。


「久しぶりだね。で、どうだった?」


「その件よりも先に、ご報告差し上げたい旨が御座います」


「ん? どうしたの?」


 ※※※


「おはよう」『おはようございますにゃ』


 リリアムと健人が部屋から出てくるタイミングで、丁度ケーラと白猫が部屋から出てきた。


「おはよう。大浴場はどうだった?」気になった健人がケーラに聞いてみた。


「気持ちよかったよー! 広いお風呂最高だね!」サムズアップをビシィと決めてニカっと笑うケーラ。いつの間にかサムズアップ覚えたみたいです。きっと白猫の影響です。


「タケトとの二人きりのお風呂もいいけど、ゆったり広いお風呂もいいよ~」ムフフと笑う黒と紫髪の超絶美少女。


「そうか。じゃあこの宿出る前に入っていこうかな?」ケーラのムフフな表情に、つい大浴場の誘惑に駆られる健人。ベルアートの高級宿にもあった大浴場だが、あの宿を出てから半年以上はそういう大浴場は使っていない。日本人の健人としては、広い銭湯みたいな風呂も入りたい。出発するまでに時間があれば行ってみようと決めた健人。


「リリアム? 大丈夫?」一方うつむき加減で余り元気のなさそうリリアムの様子を怪訝に思うケーラ。健人と二人過ごした朝は、いつもご機嫌なのに。


「え? ええ、大丈夫よ」ケーラに声をかけられハッとするリリアム。


「手紙の事で悩んでるんでしょ? なるようにしかならないって言ってたの誰だよ?」


「わ、分かっているわよ! 分かっているけど……」その先が続かないリリアム。そのうじうじした様子にイラっとしたケーラがバーンとリリアムの背中を叩く。


「い、痛いわね!」多分叩かれた背中は赤く腫れているだろう。それくらい強く叩かれたリリアム。王女殿下にこんな事出来るのはケーラくらいのものだ。


「あんたも大浴場行ってきてスッキリしてきた方がいいよ」そう言って健人の腕に絡まり、さっさと下の食堂に誘うのであった。


『ケーラも心配してるんだにゃ』リリアムの足にそっと触れ、白猫が念話で声をかける。


『ええ。分かっているわ。でも、ケーラに心配されるなんてね。傍で見ていてわかる程、私落ち込んでいたのね』


 今日にはメディーに入る。もしかしたら、健人とはお別れになるかも知れない。それが永遠になるのかも知れない。そう考えるとと、不安ばかりがもたげてくるリリアムだった。


 ※※※


「色々ありがとうございました」リクルが宿の入口で、三人に挨拶をしていた。


「こちらこそ。思った以上にいい宿で良かったよ」風呂上がりでさっぱりしてご機嫌な健人が笑顔で答える。大浴場最高。そう心の中で呟きながら。


「そうね。大浴場、本当に良かったわ」どうやらリリアムも大浴場に行ったようである。朝だという事もあって、人がいなかったらしい。少し元気になった様子だ。


「ボクもこの宿すっごく気に入ったよ」ニコニコしながらケーラも続く。アクーでずっとお世話になっていた宿には、大浴場はなかった。あんな開放的な風呂は経験した事が無かったケーラも、大満足だ。


 そして何だか自分が誉められたようで、嬉しそうに照れるリクル。エヘヘと言いながら顔を赤くして頭を掻いている。


 三人が裏口に周り、自分達の馬を引いて表にやってきたところで、またのお越しを、と再度挨拶して手を振って笑顔で見送るリクル。三人も同じように笑顔で手を振った。


 そして、メディーに向かうべく、馬に跨がろうとした時、村の入り口の方から、馬を引きながら一つの人影がやってきた。



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