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お披露目とアイドル誕生?

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

「なるほど。内緒なのか」


「まあ、そらそうだろうな。そもそも一介の冒険者が付き合っていい相手じゃないもんなあ」


「まさか、リリアム王女とそんな事になっていたとは」


 バッツ、ジルム、リシリーは、健人からの説明で、入り口で健人とリリアムが必死で関係を隠そうとしていた理由がようやく分かった。


「だから俺とリリアムの事は内緒で頼むよ」


「ったく。しょうがねえな」「しかし、またタケトに会えたのは良かったな」


 そうだな、と笑いながら肩を組み合う三人の青年。それを微笑ましく見ているリシリー。


「皆さん仲いいんですね」


「まあ、俺とタケトは兄弟になるもんな。そしてマシロちゃんも……グヘヘ」バッツがグヘヘと言ったところで健人がパコーンと頭を叩く。


「何がグヘヘやねん。あほか」華麗なる健人のツッコミ。


「いいじゃねーか。妹? なんだし」ツッコまれた頭をスリスリ撫でながら反論するバッツ。


「妹の風呂覗こうとする兄貴がどこにいるんだよ」


「ここにいるが?」


「開き直んな」またも健人のパコーンが響き渡る。


「あ、そういやリシリーさんは何故ここに? 神官はどうしたんです?」ふと気になって質問する健人。ジルムとバッツがエイミーの護衛というのは分かる。冒険者として依頼されたのだから。だが、リシリーは神官見習いのはずだ。事前に来るのは分かっていたが、神官見習いだから、エイミーの手伝いなのだろうか?


「リシリーちゃんは今、俺達と冒険者やってるんだよ」ジルムが代わりに説明する。


「なるほど。そうだったんですね。この二人についていってれば、きっと大丈夫ですよ」冒険者に転職しているとは思わなかった健人。そしてそのきっかけは、この黒髪のスケコマシさんだったりするのだが、当然当人は露程も知らない。


「はい。そうですね」まだちょっと顔の赤いリシリー。だがそれを全く気にしていない健人。彼女からは以前告白されキスまでされていて、今もどうやら気がある様子に見えるが、健人には既に三人、本気で惚れている相手がいるので、その他の好意を寄せてくれる異性の気持ちには、完全に無関心なのである。そしてそんなリシリーの様子を、不満気に見ているジルム。


「あ。来たね」


 あれこれ話しながら奥の道を進み、宿が立ち並ぶ辺りに来たところで、ケーラが向こうからやってきて声をかけてきた。


「「姐さん。お久しぶりです」」どっかの舎弟のような挨拶をする二人。そしてそれを聞いた姐さん、もといケーラが二人の頭をパコーンと叩く。


「姐さんって言うな!」


「じゃ、じゃあ、ケーラの姐さん?」バッツが言い直しても、怒った顔で更にパコーンと叩かれる。


「理不尽だ」頭を擦りながら泣きそうになるバッツ。


「それはこっちのセリフだよ! 全く」プンスカしているケーラ。


「まあまあ、そんな怒んなよ姐さん」笑いながら健人がからかう。


「もう! タケトまで!」プクーと膨れて健人を叩く。だが、健人にはポカポカ胸を可愛らしく、ではあるが。


「まさか、ケーラさんとも?」リシリーがその仲睦まじい二人の様子に気がついた。


「そうだよ、このスケコマシは王女殿下とこのケーラの姐さんをコマしたんだよ」


「だからコマしたとか言うな」「だから姐さん言うな!」仲睦まじいカップル二人からパコーンされるジルム。


「理不尽だ」頭を擦りながら文句垂れるジルム。


 そんなコントをやりながら、健人とケーラが泊まる宿を紹介される三人。だが、値が張るので、別の近くの宿に泊まることになった。


「金も持ってんのか。何かタケトが嫌いになりそうだ」「ほんとだな。色々嫉妬しそうだよ。てか既にしてるけどな」愚痴る二人。


「あのなあ。それだけ苦労もしてんだぞ」傍から見たら羨ましいかも知れないが、抱えているものも大きい健人。恋仲である超絶美女二人は、どちらも大きな決意と覚悟がないとお付き合い出来ない相手である。二人はそんな事全く知らないので仕方ないのだが。お金だってデーモンなどの大物を倒したり、冒険者として努力してきたから持っているだけである。なので二人のぐちに対して理不尽だと感じる健人だった。


 ※※※


「これが演奏ってやつ?」ケーラが不思議そうに、健人が簡易的に作った舞台の上で、ドラムセットを組み立てている最中の健人を見上げている。今組み立てているドラムセットも、アクーで作ったのと同じ、スネアとタムタム、それにバスドラとハイハットが一つのシンプルなものだ。


「これは、その演奏ってのををするための道具だよ」バスドラのペダルのネジを回しながら説明する健人。


 この村の中心辺りには、ヌビル村にもあったように、普段村民が屋台を開いたり、集会などを行うための広場がある。駐在所近くの訓練場よりは狭いが、それでもテニスコート二面分ほどの広さだ。今はそこに仮の舞台を組んで、その上で健人がドラムをセッティングしているのだ。


 今は夕方に差し掛かろうというところ。既に冬の季節ともあって流石に風が冷たいが、それでもほんの少し昼間の日差しの暖かさが残っている。健人はジルム達にもドラム演奏を見せたいと思って、この時間だが急いでセッティングしていた。ここの新たな神官となるエイミーがやって来たので、健人達はここにいる必要がなくなった。そしてエイミーが来るまでに、既に旅立つ準備は終わっている。明日にはここを離れる。そしてジルム達には暫く会わないだろう。なら、今がラストチャンスだと思ったのだ。


 因みに、健人がいない間このドラムセットは、神官の家の地下室に置いて貰う事にした。丁度良い空き室があって良かったと思っている健人。ただ、ここでドラムを披露するのは、今度はいつになるか分からないが。


 広場にはケーラやジルム達一行、そして村民達、更には非番の兵士達も、何が始まるのだろうかと、健人の様子を不思議そうに見ている。ハロウズ一家も同じくやって来ている。


「もしかして、タケトが前言ってたりずむってやつか?」ジルムが思い出してセッティングしている健人に声を掛ける。ヌビル村にいた時、健人が武器をうまく使えた理由として言っていた言葉だ。


「ああ。それだ。そのリズムってやつを今から見せるよ」汗を拭い白い息を吐きながら、笑顔で返事する健人。


 そして白猫はケーラの腕に抱かれている。この二人は普段訓練をしている事と、念話で意思疎通が出来るからか、かなり仲良くなっていた。


『マシロさんは知ってるの?』気になって聞いてみたケーラ。


『ご主人様によると、知っているみたいにゃ。私はまだ分からないにゃ』ご主人様によると、という事は、白猫は知らないがマシロさんは知っている、という事? やっぱりマシロさんの記憶ははっきりしていないのかな? 首を傾げるケーラ。


 以前、獣人の真白は間近で見ていたはずなので知っているはず。その時に初めてリリアムと知り合い、嫉妬という気持ちを知り、健人への想いを確実にしたきっかけになった。要する真白にとっては重要な出来事だったはずなのだが、白猫は分からない。近づいてきてはいるが、まだ真白の記憶との()()()()()()ようである。


「よし、出来上がった。じゃあやってみるか」


 そう呟いておもむろにドラムセットの椅子に座り、スティックを持つ健人。何が始まるんだろう、そんな期待感を持ちながら、既に集まっているギャラリーが健人の様子を見てざわつきだした。


 チッチッチッとスティックを叩き、ド、ターンとバスドラからスネアを一気に叩く。寒空にいきなり響く大音量に驚く観衆。そしてまずは8ビートの基本を叩いていく健人。時折ハイハットをシャンシャン合わせ、スティックでタターンと叩く。タムタムからスネア、ハイハットをリズミカルに叩きつつ、バスドラの重低音を響かせビートに合わせていく。


 そしてターン、とスネアを叩き演奏を終える。一瞬の静寂。それから、一気に うおおおおおおお!!!!! という大歓声が上がった。


「タケトーー!! すごーーい!! カッコいいーー!!」白猫を両手で空に突き出し、飛び上がって黄色い歓声を上げるケーラ。これが前にタケトが言ってた演奏なんだ。初めて聞く健人のドラムに興奮気味のケーラ。何だか泣きそうになっている。


「すげえ! タケトすげえ!」「これがりずむってやつか! なんだか熱いな!」ジルムとバッツも興奮している。


「はあ。やっぱりカッコいい。また惚れそう」そして一人静かに、ちょっと涙目でうっとりしている元神官見習い。


「なるほどぉ。リシリーが惚れてた理由がわかったよー」新たなガジット村の神官も感心している。


「お兄ちゃん凄い!」「ああ! あんな演奏聞いた事ない!」「何だか胸が熱くなるわね!」ハロウズ親子も興奮して話している。


 他の村民達や兵士達も一様に興奮している。いつの間にか村長と奥さんも来てい彼らも興奮した様子だ。その様子を舞台から満足げに見下ろしている健人。そんな完成鳴り止まぬ中、次はリリアムが静かに舞台に上がった。


「あれ? 王女様だ」ミリーがコテンと首を傾げて不思議そうに見ている。他の皆も何が始まるんだろうと期待しながら、静かに成り行きを見守っている。


 バッツ達は当然、(リリィ)を知らない。リシリーやエイミーは、アクーで噂程度に聞いてはいたが、実際歌を聞いた事がないし見た事もない。なので、ここにいる全員が初めてリリィことリリアムの歌を聴く事になる。しかも健人の演奏付きで。


 チラっと健人を見るリリアム。頷く健人。そしてチッチッチッとスティックでリズムを取り、ドン、とバスドラのペダルを踏み、4ビートのスロウなリズムを刻み始める。


 リリアムがすう、と複式で息を吸い、オレンジ色の夕焼けに向かって歌い始める。4ビートの優しいリズムに合わせながら、ややソプラノの音域を奏でるリリアム。先程の健人の強いリズムとは違う、優しく儚げな演奏に、観衆達は静かに、うっとりしながら聴き入っている。


 タン、と健人のスネアを叩く音と共にリリアムの歌が終わる。またも地響きのような大歓声が巻き起こった。


「こんなの、卑怯だよ」ケーラが感激して涙を流している。頬を涙が伝う。これが二人出会ったきっかけとなった演奏なんだ。確かに凄い。そして二人共何か通じ合っているのが分かる。シンパシーとでも言うのだろうか。ボクが今、この二人の間に入るのは無理だ。羨ましくもあり、少し嫉妬してしまうケーラ。


「う、うぐ、感動したあああ」「やばいよ、やばいよお」健人の友人二人も抱き合って何故か号泣している。


 それから健人とリリアムは、以前歌って貰った、健人の前の世界の曲を演ったり、16ビートの激しい演奏にリリアムが歌を乗せたりして、即興のセッションさながらに、二人思い思いに音楽を楽しんだ。その様子にケーラ達や村民達も、一緒に踊ったり聴き入ったりしていた。そしてアクーの劇場の時のように、ここでも大歓声、大盛況で幕を閉じた。


 ※※※


「タケト! カッコよかったよ!」寒い中だが汗だくで、体から蒸気した様子で舞台から降りてきた健人に、ケーラが飛びついて抱きついた。


「あ! ちょっと!」それをリリアムが諌めるが、ケーラは全く聞く気がない。興奮冷めやらぬようで我慢出来なかったらしい。


「もう大好き! 愛してる!」そして濃厚なキスをするケーラ。


「こらこらケーラ。それはダメだろ」苦笑いしながらケーラを引き剥がす健人。それでもニマ~として健人を抱きしめ離れないケーラ。


「ちょっと。ケーラどういうつもり?」冷ややかな声で再度諌めるリリアム。拳を握ってマジ怒りしています。下手したら光魔法で攻撃しそうなほど。私は我慢しているのに。私だってそうしたいのに、という意思がビリビリ伝わってくる。


「ごめーん。だって凄かったんだもん。かっこよかったんだもん」テヘヘと頭を掻くケーラ。実は二人に嫉妬していた、羨ましかったとは言わない。


「でも、リリアムばっかずるいよ。ボク歌なんて歌えないし」リリアムが健人と演奏をしている時、二人の世界に浸っていた様子がやはり悔しい。


「……なら、踊ってみるか?」そんなケーラに、ニヤリとしながら提案する健人。


「え?」キョトンとするケーラ。どういう意味?


 ※※※


 もう既に日は傾き、夜になろうとしている時間帯なので、肌寒くなってきているが、健人が再び舞台に上がった。


 帰ろうとしていた村民達や非番の兵士達は、再び舞台に上がった健人に気づき足を止めた。バッツ達も村民達の様子を見て舞台に振り返る。そしてドラムの横には、今度は魔族の超絶美少女が、恥ずかしそうにもじもじしながら立っている。


「そう言えばこんな風に傍からタケトの演奏を見るのって、久々だわ」リリアムは舞台の下からその様子を眺めている。演奏する時は自分も健人の側にいて歌っていたのだが。そして今度はリリアムが白猫を抱えている。白猫は健人の演奏を聞いても、どうも反応が良くない。耳が良すぎるので煩いのが嫌な様子。仕方ないから我慢しているみたいだが。


「で、でもボク踊りなんてやった事ないよ」舞台に立ってみると、思ったより人の顔が近い。リリアムはこんなとこで歌ってたの? タケトはこんな近いのに演奏できたの? 場違いな気がしてつい緊張してしまうケーラ。


「適当でいいんだよ。さっきも下で色々やってただろ?」白猫を下に置いて、汗をかくくらい踊っていたのを健人は知っている。気づかれていたのが恥ずかしくて顔が赤くなるケーラ。


「で、でも」何か言いかけたケーラを無視するように、健人がドドン、とバスドラのペダルを踏んだ。そしてまたもや8ビートを奏でる。ツ、タン、ツツ、タン。ハイハットとタムタムの間をスティックが行き交う。


 ああ、始まっちゃった。舞台上で何もせず突っ立っているのもおかしいので、諦め顔でケーラが仕方なさそうに目を瞑る。そして静かに健人の奏でるリズムを感じる。トン、トンと健人の奏でるドラムのリズムに合わせながら、その場でストレッチをするようにジャンプし始めるケーラ。そして足をクロスしステップを踏み始める。上半身をくねらせ時には体を開き、時にはバックステップをし、それでもリズムを損なわず、健人の演奏に合わせ踊る出す。


「何これ? 楽しい!」呟きながら思い思いにステップを踏む。その様子を見て笑顔になる健人。リズムに合わせて遠慮なく自由に動かす事がこんなに楽しいとは思わなかったケーラ。寒い空気の中汗が舞台に滴り落ちる。それに構わず一心不乱にステップを踏むケーラ。冷たい空気の中、蒸気した体から湯気が立ち込め、白い息が口から出てくる。その様子を見ながらケーラのダンスを邪魔しないタイミングで、タン、とスネアを叩いて演奏を終える。


 うおおおおおおおおお!!! と先程と同じく、怒涛の如く沸き上がる大歓声。リリアムの時は違う、高揚した雰囲気。


「ケーラお姉ちゃんカッコいい!!」ミリーの黄色い歓声。


「……凄いわ。私には出来ないわ。あんな風にタケトの演奏に合わせるなんて」リリアムも感動している様子だ。


「「「「「「「「「ケーラさああーーーーーん!!!!!」」」」」」」」」」」 兵士達の一糸乱れぬケーラコール。ん? 彼らはどうした?


「楽しい! 凄いね!」兵士達の様子が若干気になりながらも、笑顔で健人に声を掛けるケーラ。


 そしてそれに答えず、ニヤっと笑って代わりにタン とスネアを叩く健人。そしてドン、とバスドラのペダルを踏み、今度は16ビートを叩き出した。ケーラも健人の意図が分かった。同じく健人にニヤリとして踊り始めるケーラ。先程とは違い激しく速いリズム。それに着いていくケーラ。そして徐々に二人のリズムがリンクしていく。リンクすると、まるで音楽を(観ている)かのような錯覚に陥る観衆。


 タン、とスネアが鳴って、ケーラのダンスもそこで止まる。またも地響きのような大歓声に包まれる。


「「「「「「「「「「「「K・E・L・A ! はい! はい! はい! はい! は~~~~い!! ! ケーラさあああーーーん!!!」」」」」」」」」 


 兵士達の一糸乱れぬケーラコール。それはさながらアイドルのコンサートのよう。そしてなんでアルファベットが分かるんでしょうね? 因みに彼らは由緒正しいメディー王都直属の兵士です。盾と剣が描かれた、赤い胸の紋章が、彼らの雄叫びで揺れています。


 周りの村民達やジルム達がドン引きしているのもお構いなしに、ケーラコールを続ける親衛隊、もとい、兵士達。


「……あれ何?」「シッ! 良い子は見ちゃダメ」純粋無垢なミリーは疑問を口にしただけだが、大人なミランダは必死でミリーの目と耳を隠す。


「……あれ何?」「まあ、ケーラがそれだけ凄かったって事だよ」ドン引きしている応援された本人と、アイドルのコンサートの雰囲気みたいだと冷静に思っている健人。


 そしてここに、アイドルケーラが誕生したのだった。か、どうかは分からないがなんかそんな感じ。






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