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待ち人到着

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「ケーラお姉ちゃん!」ミリーが駆け足でやってきた。今日はミリーと一緒に買い物に行く予定だ。


「おはよう。今日も可愛いね」ニコっと超絶美少女スマイルをミリーに投げかけ、手を振るケーラ。


「ケーラお姉ちゃんには負けるよー」ニコっと同じく可愛らしく笑顔を返すミリー。


 宿泊している宿の受付前で待ち合わせしていた二人。今日はミリーとデートのケーラ。二人揃って嬉しそうだ。仲良く手を繋いで歩いて宿を出ていくその後ろ姿は、まるで本当の姉妹のようである。


 このガジット村に来て一週間になろうとしている。アクーから来る予定の神官がここに来るには、まだ時間がかかりそうなので、白猫と一緒に訓練したり、健人とイチャコラしたりデートしたり、そして今日のように、ミリーとお出かけしたりして、村での日々を楽しんで過ごしているケーラ。


 先日、魔薬で魔物になったバルターを倒した事もあって、村民達のケーラへの評価はだいぶ変わっていた。兵士達がケーラにぞっこんなのもあって、悪い魔族ではない事が広まりつつある。村長のガルバントとその奥さん、更にハロウズやミランダまでもが、ケーラの評判を上げるため、あちこち出かけてはケーラの事を色々語っているのも、理由の一つだろう。以前のようにヒソヒソする人はいなくなった。そして、ここで治癒を行うため常駐していたバルターは、やはりと言うか、村民達からの評判は余り良くなかった。それを倒してくれたケーラに対して、感謝をする村民もいるくらいである。


 季節はもうそろそろ冬だ。時折二人の間を吹き抜ける空っ風が突き刺さるように痛い。まだ雪が降るほど、冬が深まっているわけではないのだが、今までの服装では心許ない寒さだ。なので二人とも装いはさすがに冬模様。ケーラはショートパンツだがストッキングを履き、上は長袖のジャケットを羽織っている。村の中なので装備は付けていないが、一応トンファーは腰に装備している。そしてミリーは女の子らしく、フリルの付いた赤いロングスカートに赤いジャケットを来ている。おさげはそのままで。そしてケーラ今回、健人とリリアムの分も含め、旅に必要な防寒着を見繕うため、ミリーを誘って出かけていたのであった。


「ねえ、ケーラお姉ちゃん。この村にはいつまでいるの?」手を繋いで横に並び、服屋に向かう途中話しかけるミリー。


「うーん、そうだなあ。多分十日くらいかな?」多く見積もってそれくらいだが、早ければ一週間後に出発するかも知れない。


「じゃあ、それでお別れ?」


「そうだね。でも、ボクまたこの村に来るよ。ミリーちゃんがいるからね」ニコっと微笑むケーラ。


「……お姉ちゃんと離れるのやだな」寂しそうに呟くミリー。


「ミリーちゃんにはお父さんとお母さんがいるじゃない。それに、ボクともずっとお別れじゃないよ」その呟きに、慰めるように優しく話しかけるケーラ。


「ま、まだボクはこの村にいるから、先の事を考えるんじゃなくて、今を一緒に楽しもう」言い聞かせるように優しい瞳で微笑むケーラ。


「うん!」その言葉に元気よく答えるミリーだった。


 ※※※


「で、どうです? 」


「うーん、まあ。その設計図もあることだし、出来なくはないわよ。あのドルバーにだって作れたんでしょ? 大体三日くらい時間貰えればできるんじゃないかしらねえ」どうやらアクーの鍛冶屋のドルバーとは知り合いの様子。


「結構早いですね。じゃあ、お願いします」ドルバーにお願いした時は一週間くらい時間がかかった。だが、今はドルバーが作ってくれた設計図がある。だから早く出来上がるようで嬉しそうな健人。


 ここはガジット村の女性のドワーフが経営している鍛冶屋である。健人はここでも、()()を作って貰おうと依頼しに来たのだった。まだ暫くガジット村から離れられないなら時間もあるし、リリアムを元気付けたかったのである。お互い音楽は好きなので、自分の演奏で歌を歌うと、気分も晴れるだろう、そう思ったのだ。


「丁度大通りの真ん中が広場になってたから、そこで演ろうかと思ってさ」


「なるほど。私も歌っていいのかしら?」


「何言ってんだ。リリアムは既に参加確定だよ」笑顔でリリアムに返事する健人。


 あら、とウフフと笑うリリアム。先日の不安な表情はもう既にない。健人に相談して気持ちが晴れやかになっているリリアム。なるようにしかならない。でも、自分の決意は変わらない。それを健人に話した事で再確認出来たようである。


「あんたら仲睦まじいねえ。そちらはリリアム王女じゃないですか。まあ、ドワーフは口が堅いからいいけど、よそでは気をつけたほうがいいですよ」呆れ顔で二人の様子を見て注意する女性ドワーフ。それを聞いてハッとして距離を取る二人。気をつけているつもりでも、自然とお互い距離が近くなってしまう。特にリリアムは健人病なので尚更である。女性ドワーフに嗜められ、苦笑いする二人だった。


 女性ドワーフにお金を払い、二人店を出た。ひゅう、と冬の風が二人を撫でる。痛みを伴う冷たい風に、ついリリアムが健人に体を預けてしまった。


「あ」人の目が気になる。慌てて離れようとしたら、健人がグイとリリアムを抱き寄せた。


「ダ、ダメよ」驚くリリアム。「大丈夫。ここは離れだし人はいないから」そして美しい蒼い瞳を見つめる健人。


「あんま思い詰めんなよ。俺に甘えてくれていいんだから」


「……ええ。甘えるわ」健人の目を見つめる宝石のように美しい蒼い瞳。そして嬉しそうな表情で、コテンと頭を健人の胸に預ける。


「手紙が来てから、メディーには行きたくなくなってきたの。本当は、メディーには向かわず、タケトとこのまま、どこかへ行ってしまいたい」


「俺としては嬉しい言葉だけど、けじめはつけないといけないからなあ」その視線の先は次の目的地メディーを見ているのだろうか。寒そうな冬空を見上げながら呟く健人。


「そうね……」健人の視線に、同じように空を見上げるリリアム。


「だから、今回の件も、俺がきちんと話つけるから」


「……分かったわ」健人が覚悟してくれている。その気持ちが嬉しくて、甘えるように再び健人の胸に頭を預けるリリアム。


 本当にこの人が好きでたまらない。この人を好きになって良かった。きっとメディーに行ったら大きなトラブルになる。それでも、自分はもうブレない、譲らない。そう覚悟したリリアムだった。


「ねえ、早く戻りましょう」顔を赤らめて家路を急がせるリリアム。その理由が分かった健人は、ニヤリとしてリリアムをお姫様抱っこする。そしてブーストとアクセルを唱えた。屋根を伝って走る上速いので人目に付きにくいだろうと思ったのだ。


「キャア! もう! いきなり過ぎるのよ!」怒り口調のリリアムだが、その表情は嬉しそうだった。


 ※※※


「思ったより早く着いたな」


 吐く息が白い。凍えるような朝の空気に身震いしながら、ようやく森が開け目的の村が見えて来て、ふう、と一息つきながら、バッツが皆に声を掛ける。。


「魔物殆どでなかったしなあ。順調そのものだったな。護衛要らなかったんじゃない?」


 ジルムも何も問題がなかった旅に安堵している。魔薬の件が片付いたからだろうか? 本当に魔物は一切出なかった。それもあって思ったより早く目的地に向かう事が出来た一行。アクーを出てから十日足らずで、ガジット村が見えてきた。


「そんな事ないですよー」「魔物だけじゃなく盗賊だっているかも知れないんですから、女だけだと不安です。お二人がいて良かったですよ」エイミーとリシリーがジルムの言葉に返す。


「まあ、そう言ってくれると嬉しいけどね」「なんて言うか、こう何もないと張り合いがないって言うか」


 ジルムとバッツはどこか残念そうでもある。この美女二人にいいところを見せられなかったのが残念だった、なんて本音は言えない。


「ん?」四人で会話しながら向かっていると、村の方から馬が一頭駆けてくるのが見えた。彼は遠目で四人がやってきたのが見えたので、村を出て出迎えに来たのだ。


「あ、あれは……」リシリーが誰か気づき、顔が赤くなる。


「よお。お疲れ様」四人の前で馬を止め、白い息を吐きながら、笑顔で挨拶をする黒髪の青年。


「え? タケト?」「なんでここにいんの?」久々に再開する友人にびっくりする二人。確かメディーに行ったはずでは?


「そうか。お前ら知らないもんな。実は今回の依頼の件、俺も絡んでんだよ」


 健人は事前に誰が護衛で来るか、風魔法でのやり取りで知っていたのだが、この四人は、今回の依頼はガジット村の村長ガルバントから、としか聞いていないので、健人がこの村にいる事自体知らないのである。


「あ、あの、お久しぶりです」顔を赤らめ恥ずかしそうに挨拶するリシリー。以前無理やりキスして逃げて行った時以来の再会である。


「お久しぶりです。と、そちらが新しい神官の方ですね?」リシリーの羞恥した様子は気にしないようにした健人。そしてエイミーを見て声を掛ける。


「初めましてです。エイミーと言います」可愛らしくペコリと頭を下げるエイミー。


「初めまして。タケトです。とりあえず村に入りましょうか。ジルムとバッツも行くぞ」


「いやお前行くぞって。あっさりしてんなあ」「俺達のびっくりを返せ」何だか知らないが怒っている二人を見て笑う健人。


 そして皆馬に乗り、ガジット村へ向かった。健人はその最中に、事の顛末をかいつまんで説明した。


「リリアムちゃんが神官の代わりか。ならしょうがないわな」健人がここにいる理由が分かったバッツ。


「お前、人の彼女を(ちゃん)付けで呼ぶの?」しかもリリアムを? ある意味勇気あるなあ、と感心する健人。まあ、その勇気は後で蛮勇だと気づくだろうけど。


「じゃあ姐さんもいるんだろ?」ジルムが言う姐さんとは、勿論ケーラである。


「ああ、姐さんも元気だよ」姐さん呼びはそのまんまなのか、笑ってしまう健人。


「そういやリシリーちゃんと久しぶり、とか言ってなかった?」ふとジルムが気になって健人に聞いてみる。


「ああ、前にちょっとね」隷属の腕輪を付けられ、命令され魔族の手伝いをしていた事を気軽に話していいとは思わないので、含みを持たせる言い方をしてしまう健人。


「……お前、またコマしたのか?」何だか怒っているジルム。


「待て。盛大な勘違いするな。アクーでの魔薬騒動の件で知り合っただけだよ」


「ほんとなんだな? 何にもしてないんだな?」ジルムがやたら突っかかる。


「してないって」確かに健人は何もしていない。能動的に何かしたか? って質問されたからしてないって答えているので嘘は言っていない。受動的な感じで質問されたら知らんけど。


 そんな感じで話しながら、ガジット村の入り口に辿り着くと、リリアムが入り口前で待機していた。両脇には警備中の兵士二人も直立不動で待ち構えている。


「皆様。お待ちしていましたわ。お二人お久しぶりね。リシリーさんもご無沙汰ですね」


「お、リリアムちゃんじゃん。お久しぶり~」


 バッツがものっそい軽く、まるでナンパなチャラ男がちょり~っすってな感じで声をかけたところで、兵士二人が物凄い形相で、武器を構えバッツに走り寄ってきた。「へ?」その様子に驚くバッツ。そして剣を二人でバツの字にして、馬上のバッツの首に当てた。その表情は明らかに怒っている。


「お前、何者だ? 今王女殿下に対して何と呼んだ?」「場合によっては不敬罪に当たるが、王女殿下とはどういう関係だ?」


 一気に緊張感が漂う。バッツは「え? へ? 何これ?」と何が起こったか分からないといった表情。王女殿下って誰?


「お二人とも。その方は私の知り合いです。心配要りません。剣をお収めになって」リリアムが笑いを堪えながら、兵士二人を諫める。


「「はっ! かしこまりました! リリアム王女殿下」」威勢のいい返事をしてすぐさまバッツから離れ、そして剣を収めてから、リリアムに向き直って敬礼する兵士二人。


「……本当に王女だったの?」その様子を見ていたジルムが唖然とする。余りにリリアムが美人だから、タケトは冗談で王女だと言っていたと思っていたのに。本物だったとは。そして鯉のように口をパクパクして同じく唖然としているバッツ。


 やっぱりこうなったか。その様子を見ていた健人は心の中で呟いた。必死で笑いを堪えながら。


「で、でも、リリアムちゃ、いや、リリアム王女様は、タケトのカノ……」だが、バッツが衝撃の事実を口走りそうになる。それに気づいた健人が咄嗟にアクセルとブーストを唱え、瞬時にバッツの後ろに周り込み、速攻口を手で塞いだ。まるで疾風のような体捌き。さすが一線級の冒険者。ここでもその能力が役に立った。そして「フガ! モゴモゴ」ってなるバッツ。ふう、と一息つく彼氏さん。


「ジルムさんも余計な事は言わないように」バッツと健人の様子を見て、寒いはずなのに額に汗を滲ませるリリアムが、微笑みながらジルムをジロリと見て声を掛ける。リリアム王女殿下の氷のような視線にビクってなるジルム。それに恐怖してコクコクと黙って頷く。


「バッツも、分かるよな?」ぞわっと殺気を感じたバッツ。え? 俺タケトに殺される? それ程の殺気を感じたバッツは、同じく恐怖に怯えながら、口を塞がれつつコクコク頷く。


 そんな様子を怪訝な表情で見ている兵士達をよそに、リシリーとエイミーがリリアムに恭しく挨拶をする。


「リリアム王女。お久しぶりです」「初めまして。私が神官のエイミーです」


「リシリーさんお久しぶりですね。エイミーさん、お待ちしていました。とりあえず皆さんお疲れでしょうから、詳細は後ほどお話ししましょう」


 そして皆兵士二人からチェックを受けガジット村に入り、健人の案内でバッツ、ジルム、リシリーは奥の方に立ち並ぶ宿屋の方へ、エイミーはリリアムの案内で村の入り口近くの神殿に向かった。




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