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ようやく一段落

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「……」


 サリーアが腕を組んでムスっとしている。だが、自業自得なので仕方ない。本人も分かってはいるようだが、未だ受け入れられないと言った様子だ。


「協力しないと……」「わ、分かったわよ。やるわよ!」慌ててケーラの言葉を遮ったサリーア。


「寧ろその程度で今回の罪が済んで良かったと思わんといけないんだぞ?」そんなむくれた様子のサリーアをガルバントが諫める。


「でも、風の魔法までって思わないじゃない」ムスーとしたまま愚痴るサリーア。


「サリーアさんでしたっけ? 宜しくお願いしますね」そこでニコっと微笑みながら声を掛ける王女殿下。だが、その目は全く笑っていない。ケーラを騙しバルターに引き渡した張本人に対し、まだお怒りのご様子。ただ、サリーアも隷属の腕輪を付けられていたのを知っているので、強くは言わないのだが。


「ひえ! あ、は、はいいい~」リリアムの冷たい微笑みを見て、ガクブルするサリーア。リリアム王女に言われては、さすがに大人しく言う事を聞くしかない。


「まあでも、タケト君だったな? 君の話は確かに一理あるな」禿げ上がった頭をぺしぺし叩きながら唸るガルバント。どうやらぺしぺしは癖らしい。


「はい。やっぱり慎重になったほうがいいと思うんです」笑いはしないがそんなガルバントの癖を不思議そうに見ている健人。一方ケーラは笑いを堪えている。笑ったら失礼なので頑張って耐えているのは分かるが、気づかれないようにして欲しいと心の中でちょっと焦る健人。


 健人がガルバントに話した事とは、神官をメディーからではなく、アクーから派遣してはどうか、という事である。バルターによると、メディーの神官達は隷属の腕輪を沢山持っているという話だ。なら、メディーから派遣された神官だと、再度隷属の腕輪や魔薬を持ち込まれる可能性がないとは言えない。


 そして、メディーの神官の品性も気になる。サリーアの件のように、村民を騙すような神官は当然困る。それなら、現在人格が540°変わったまともなグレゴーが大神官代理を勤めている、アクーから派遣された神官であれば、信用出来る人材を派遣して貰えるだろう。そして隷属の腕輪や魔薬の件も、アクーでは既に解決しているのでその心配もない。神官を派遣するのであれば、アクーからの方が信用出来る。


  そしてその事をアクーとメディー両方に伝える必要がある。村長であるガルバントは、ヌビル村のダンビルが持っていたように、緊急連絡用の風魔法のクリスタルを持っているが、今回勿体無いのでそれを使わず、サリーアの店の風魔法を使わせて貰おうという事になった。サリーアはエルフなので、何度も魔法の補充が出来る。交信する際、いくらでも繰り返し返信、送信が可能だ。普段は商売としてお金を貰えばいくらでも風魔法の補充をやっているサリーアだが、今回の処罰の一環として、無料でやって貰う事になったのである。


「ともかくその提案、有難く受けたいかと。バルターのような神官はもう二度とごめんだ」


「グレゴー神官であれば、きっといい神官を派遣してくれると思います。ご安心なさって」ニコっと微笑むリリアム。


「大神官代理のグレゴーさんは、俺達の事をよく知ってるので、多分すんなりいくと思いますよ」グレゴーとは何だかんだ言って付き合いが長い健人。ヌビル村からずっと何かしら関係が続いている。


「でも、アクーだったら遠いし、向こうから神官を連れてくるとなったら、より出発が遅れるね」ケーラの言う通り、ここガジット村はメディーには近いがアクーからは離れている。


「そうね。でも、仕方ないわ」諦め顔のリリアム。本当は早くメディーに行かなければならない。だが、健人の言う通り、メディーから神官を派遣して、また同じ問題が起こったら本末転倒だ。メディー出身者としては情けない話だとも思っているリリアム。


「すまん。ちょっといいか?」皆が神官について話している最中、一人の兵士がやってきた。


「あの魔物の素材やクリスタルはどうする? 良ければ、倒してくれた礼に俺達が捌いておくが?」ケーラに話があったようだ。そしてケーラにとっては有り難い話である。出来たら元バルターには触りたくない。特に腹割いたりするのは嫌だ。


「助かります。お願いします」感謝しながら笑顔でお礼を言うケーラ。その表情を見てみるみる顔が真っ赤になり、黙ってそそくさとその場を離れ、元バルターの元へ戻る兵士。


「……もう大丈夫だな」「ええ、そうね」


「何が?」二人の様子を不思議そうに見ているケーラ。


「いや。ケーラが魔族だからどうこうって話だよ。兵士達はきっと大丈夫だよ」


「なんで分かるの?」


「それだけケーラが可愛いって事だよ」


「何それ?」フフ、と笑う超絶美少女。そして自然に健人の腕に絡む。グギギ、と久々に聞くあの嫉妬音? が兵士達のいる辺りから聞こえたような?


「ちょっと!」それを見てリリアムが怒る。あ、つい、と呟いてすぐ腕を離したケーラ。そしてどうやらグギギも収まった模様。


『私もいるの、忘れるにゃー』そして白猫がジト目でケーラを見上げる。


『え? あ、ごめんなさい』マシロさんはやっぱり嫉妬してるのかな? なら、今までタケトに甘える際、リリアムだけ意識していたけど、これからはマシロさんこと、白猫さんにも気を使わなければいけないのかも。ふとそう思ったケーラ。


「とりあえず、神官の事はそういう事で決まりですね。じゃあ、俺達一旦宿に戻りますね」


「ああ、詳しい話はまた伝えに行くよ」健人の言葉にガルバントが返事した。頭をぺしぺししながら。


 そして皆で馬に跨り宿に戻った。健人の馬にケーラが一緒に乗った。その密着具合が気に入らないリリアムのこめかみに青筋がスッと浮き出るが、仕方がないので知らんぷりしている二人。白猫は健人とケーラが乗る馬の頭の上にちょこんと座している。結構揺れるはずなのにとても器用に座っている。レベルが上ったからだろうか? はい、その通りです。


「アクーから新たな神官が来るのって、二週間はかかりそうだな」ここからメディーへは三日程の道のりだが、思わぬトラブルで足止めを食らってしまう事になってしまった三人。


「そうね……。でも仕方がないわ。タケトの言う通り、メディーから来る神官は信用出来ないもの」複雑な顔をするリリアム。出来たら早くメディーに行って、神官の件を王に伝え早急に対応したいのだが。


「まあ、仕方ないよな。その間訓練したりしてゆっくり過ごすとしようか」「そうだね」


諦め顔の健人とケーラ。白猫は退屈そうにくわぁ、と欠伸をした。ものっそい揺れる馬の頭に乗りながら。


 ※※※


「んじゃ頼むぞ」


「了解です。ロックさん」「じゃあ行ってきます」


 盾を背負い腰に剣を付けた青年と、斧を背中に背負った青年が、ロックから依頼された案件を確認し、これからギルドを出ようとしていた。


「はあ、はあ。お待たせしました」「ごめんなさ~い。遅れちゃったですぅ」二人がギルドを出たところで、弓を背負った、冒険者スタイルのピンク色のセミロングの髪の美女と、白いローブを身に纏った、銀色のボブショートの美女が、ギルドの前に慌てた様子で走ってやってきた。


「やあ、リシリーちゃん。これから出ようとしてたとこだからそんなに慌てなくていいよ」頑張ってにこやかに笑顔を作り、挨拶する斧を背負った青年。どうやらリシリーが美人なので若干緊張しているようである。


「あ、その子が今回連れて行く神官かな?」もう一人の、腰に剣を装備した青年が確認する。


「ええ。エイミーと言います」「エイミーです。宜しくですぅ」ちょっと甘ったれたような口調の、エイミーと言う名のこの美女が、今回護衛する神官らしい。そしてどうやらリシリーとエイミーは顔見知りのようである。


「二人とも美人だからこっちも護衛し甲斐があるよ」斧を背負った青年、バッツが嬉しそうに挨拶しながら話しかける。


「まあ、リシリーちゃんは護衛じゃないけどね。もう何度か俺達と一緒に魔物討伐してるしね」もう一人の青年、ジルムが口を挟む。


「私なんか、お二人に守られているようなものですので。まだまだ冒険者とは言えないです」謙遜しつつ申し訳なさそうに答えるリシリー。


「まあまあ。それでも弓の腕は相当上達してきたと思うよ。それに俺達もリシリーちゃんの弓矢に何度か助けられてるし」


「そうそう。気にしなくていいよ」


 以前ファルから紹介されたこの美女に、二人は飛び上がって喜んだ。その直前までヌビル村で知り合った黒髪の友人に、超絶美女二人を侍らせている様子をずっと見せつけられていたからだ。


 そして一緒に冒険者として魔物討伐をするようになったジルムとバッツだが、最初はリシリーに話しかける事さえ緊張していた二人。だが、何度も一緒に魔物討伐するにつれ、徐々に慣れてきて最近ようやく普通に会話出来るようになっていた。リシリーも、戦い慣れている二人に、戦い方を教えて貰ったり、討伐後の素材やクリスタルの回収の方法まで学んでいたので、一緒に討伐するのは有り難いと思っていた。なので、今はお互いそれなりに打ち解けている。


 そんな中、今回ここから少し離れたガジット村から、神官派遣の依頼がここアクーの神殿に来た。そこで護衛が必要という事になり、元々神殿に勤めていて、エイミーと顔見知りのリシリー、そしていつもリシリーと一緒に魔物討伐しているジルムとバッツが選ばれたのだった。


「しかし、エイミーちゃんもほんと可愛いねえ」バッツがニヤニヤしながら呟く。美人と打ち解けるのに緊張するくせに、こういう軽口は平気で言えるバッツ。


「バッツ。顔がいやらしい」ジルムが突っ込む。そんなジルムも顔が赤い。ジルムも同じ事考えていたりする。


「え? ええ~、そんな事ないですよぉ」クネクネして照れるエイミー。


「エイミー。この二人はいい人ぶって実はオオカミだから、気を付けたほうがいいわよ」そんな二人にリシリーの冷水を浴びせるような一言。


「え! そ、そうなんですかぁ?」ビクっとして後ずさりするエイミー。


「リシリーちゃん! どうしてそういう事言うかなあ?」「そうだよ! 俺達一度もリシリーちゃんに手出した事ないじゃん! 寧ろ紳士じゃん!」ちょっと涙目になって必死に訴えるうぶな青年二人。


「フフフ、冗談ですよ」いたずらっぽく、そして艶っぽい笑顔で答えるリシリー。普段は真面目な感じなのに、たまにこうやってからかってくるリシリーに、実は振り回されっぱなしの二人。


「とりあえず、準備が出来次第向かうよ。ガジット村からの要請内容によると、出来るだけ早く来てほしいみたいだからね」ジルムが仕切り直す。


 そして準備を整え、四人は仲良く? ガジット村に向かうのだった。




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