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改めてスタート

前回に引き続き、説明が多いですm(__)m

「なるほどにゃー。さっきのはそういう事だったのにゃ」お風呂上がりの火照った体で、真白は健人の話を聞いてそう言った。


「私は魔法は使えないのにゃー」そう話す真白に対し「いや、多分クリスタルに魔力を入れたのを持ってると、真白も使えると思うよ」と、健人が答える。


「でも、カラのクリスタルを手に入れるには、魔物を倒して、たまにでる欠片集めて、エルフって人に作って貰わないといけないんだにゃ? それってすごく面倒なんじゃないのかにゃ?」


「……そうなるな。結構大変だな。よく考えたら。売ってそうだけどなあ。まあ売ってるにしても高そうだ。そういや俺達、この世界のお金持ってないな」


 どちらにしろ、何かするには金が要る。明日から稼ぐ手段を考えないといけない二人。当然お金は生活していくには必要だ。


「それと、魔法の話だが、例えば火属性の人が、水属性のクリスタルを使って、水の魔法を使う事も出来る、要するに属性持ちでも別の属性を、クリスタルを使えば出来るみたいだ」


 そうにゃのかー、と、答えるもそろそろ飽きてきた感じの真白。健人が座っているベッドの向かいのベッドに座り、足をぶらんぶらんさせている。当人は元々魔法には執着がないので、余り興味はないようである。


 しかし、クリスタルってのは結構レアなものかもなあ。ランプとか水とか、そういうものに使われているものは、そうでもないのかも知れないけど。あれは一度属性を入れてしまっているから、そんな高くないのかも。用途決まってるしね。て事は、カラのクリスタルは、結構いい値段しそうだな。この世界の生活に根付いている魔法について、クリスタルについて、あれこれ推測してみる健人。


 そして、健人はこの世界の生活をもっと良く知りたい、これからこの世界で生きていくわけだから、自分がここで一生を終えるなら、もっとこの世界を知らないといけない、と思っていた。仕事だって何が出来るか分からない。様々な選択を考えるには、とにかく沢山情報がほしい。とりあえず明日はダンビルさんの仕事を手伝うけど、今後どうするか考えないと。明日時間があれば、村の中を散策してみよう。健人はそう決めた。


「とにかくもう寝るにゃ。明日早いってダンビルさん言ってたしにゃ」


「そうだな。ああ、それから、真白。改めてこれからも宜しくな」


「改まってどうしたんだにゃ?」真白はコテンと首を傾げる。可愛らしいその様子に、ほんっと無駄に美人だなこいつは、と、少し腹立ってしまう健人。大きいが程よく釣り上がった目は、猫時代の名残だろう。白い髪はしなやかで、風呂上がりという事もあって、艶がある。スタイルもほんといい。背は低めだが、いわゆるトランジスタグラマー。今は寝る前という事で、麻のトップスは外し、中のシャツと、スパッツのみになってる。これが今から健人の隣で寝るわけである。


 でも当然、何かする訳はない。真白は俺に恩返しがしたいからわざわざ前の世界からこっちに来たんだ。その思いに応えてやらないと。そこにつけ込んであれこれしようとは思ってはいけない。


「いや、これから一生、真白は獣人として生きていかないといけないわけだろ? 猫じゃない。人として。思ってるより大変だと思うぞ? 俺も真白がこの世界でやっていけるよう、出来る限り手助けするよ。お互いパートナーだ。そう思ったんだよ」


 「パートナーだにゃ。了解にゃ。私も宜しくにゃ! 明日から本格的にスタートだにゃ」そう言って笑顔で手を出す真白。健人もそれを見て握手して、お互い別々のベッドに横になった。そして、健人がランプの火を消した。健人は酒が入っていた事もあり、すぐに寝息を立てて眠った。


 ※※※


 ??? 「ふむ。どうやらあの猫はうまく出会えたようだな。しかし何故やつがこの世界に転移したのか調べてみたが、まさかそういう繋がりだったとはな。何の因果か。しかし()()()がここで出てくるのか。まあ、何にせよ、私には何も出来ない。()()()()()だったからな。やつがこの新しい世界を謳歌出来るよう、願っているよ」


 ※※※


 次の日の早朝、残念かどうかはともかく、特にラッキースケベとかもなく、二人は起きた。寝崩れた真白のシャツの双丘が際どいのは頑張って見ないようにした健人。


 そして洗面所で顔を洗う。この洗面所で出る水も魔法との事で、青い3角形のクリスタルに魔力を込めると、水が出た。昨日もランプでやってみたけど、ほんと不思議だ。真白は魔力がないので、ダンビルさんに魔力が入ったクリスタルを借り、同じく水を出すと驚いていた。あちこちに魔法があって、生活に溶け込んでいるのを確認する度、感心する健人。


 それから食卓でダンビルと共に朝食をとった。なんとパンが出た。そして卵とベーコンまで。地球の食事と変わらない。前の世界と食事が変わらないのはほんとありがたいと思う健人。だが、かなり薄味だったのが残念な様子。調味料が足らないせいだろうか。この世界ではこういう味付けが一般的なのか、単に調味料が手に入りにくいのか。


 そして朝食を済ませ、支度をして、ダンビルと最初に出会った倉庫まで荷馬車で移動する。以前来た時には気づかなかったが、倉庫の裏手に大きな小屋があり、そこに羊と山羊がいた。放牧するようだ。ダンビルの仕事は、こういった放牧と、鶏の世話のようだ。


 干し草をまとめたり、小屋掃除をしたり、一旦村に戻って、今度は鶏小屋の掃除を手伝った。健人は農作業のバイトをやっていた事があったので、手慣れた様子で手伝う。そしてあれこれ指示されながら、真白も一緒に手伝った。


「ほう、慣れてるな。教える事は特になさそうだな」健人の仕事の様子を見て、ダンビルは感心する。


「こういう仕事も以前はやってたので」汗を拭きながら笑顔で答える健人。


「そうだったのか。また機会があったら、タケトのいた世界の事も色々教えてくれ」


 勿論です、と答えながら、作業を続ける健人。そしてその日の晩も結局、泊まらせて貰う事になった。


 それから結局、健人と真白は、初日以降もダンビルの家の手伝いをしながらお世話になっていた。「行くとこないんだろう? なら決まるまでゆっくりしていったらいい」とダンビルも言ってくれたので、農作業を手伝いつつ、ご厚意に甘えている。そんなこんなで既に一か月が経とうとしていた。


 因みに初日以降、健人は真白と別の部屋にいる。ダンビルにお願いして部屋を分けて貰ったのだ。さすがに健人自身、理性が心配だったのだ。だって元猫とは言え、真白は無駄に超絶美少女なので。


 この村に来たこの奇妙な二人組は、さほど多くない村民達の間ですぐに噂になった。二人とも面倒にしたくないので、当然本当の事は話さない。ダンビルにも言われた通り、健人も真白も記憶がなく、知らない間にこの近くにいて、二人一緒なのはたまたまだという、かなり無理のある設定で押し切っている。


 健人と真白の関係も当然疑われたが、何にもない、他人だが、覚えていないが何かあって真白を助けた事があるらしい、という事でこちらも無理やり押し通している。兄妹というには真白には猫耳がついてて無理だし、そもそも真白は健人を「様」付けで呼ぶので、村人達が訝しがるのも無理はない。が、どうしようにも説明しようがないし、村人達もどうも恋人同士にしか見えないと感じているから、何とかなっている。


 ダンビルは村長なので、農作業以外の仕事もしなければならない。健人と真白が手伝ってくれているため、村長としての仕事に集中する事ができるので、実はダンビル自身も助かっていた。何より、広い家に独りで暮らしていた時と比べ、賑やかになり、時折笑い声が聞こえてくるようになり、ダンビルを心配していた村民達も、ホッとしていた。


 そして健人は線が細い割に力がある。真白は獣人だからなのか、人としては規格外に力があるので、力仕事が多い農作業にはかなり役に立っていた。大体仕事自体は夕方前には終わる。その数時間を利用して、健人は村の中を散策し、色んな村民とコミュニケーションをとっていた。もう最近では健人の事を知らない村民はいなかった。


「ようタケト。今日も散策してるのか。今日はマシロちゃんは一緒じゃないのか?」


「ようジルム。今日は入り口の警備はいいのか? みんなのアイドル真白ちゃんは今日も森に行ってるよ」手をヒラヒラさせて挨拶する健人。


 またかよー、と呆れながらに話すこのジルムという青年は、健人と真白がこの村に来た時、入り口で警備をしていた若者の一人だ。歳は18歳と真白と同い年。いつも真白に何かしら理由をつけて近付こうとしている。こんな辺鄙な村に、あれだけの美女がやってきたわけだから、うら若き成年男子なら仕方ない反応なのかも知れない。


 「まあマシロちゃん強いから心配しなくていいかも知れないけど、一応女の子なんだから、もっとこう、おしとやかにしてればいいのに」呆れ顔でジルムが話す。


 実は村の若い連中の中に、既に何人か真白にアタックしたツワモノがいた。「私に勝ったらデートくらいはしてもいいにゃん」と言われ、よーしやったるでぇ! と意気込んだ彼らだが、呆気なく倒された。それはもう圧倒的力の差で。


 それからというもの、真白はとんでもなく強いというのは、村民皆知っている事だった。だから、若い女の子一人で森に行こうと、ジルムは気にしていなかったのである。


「ま、女の冒険者もいるしな。今更女の子だからどうこうってのもおかしな話かもなあ」


「その冒険者ってのは、この村に来たりするのか?」冒険者、という言葉に反応する健人。


「たまにな。まあここは以前のゴブリン騒動があるまでは、殆ど魔物が出なかったくらい平和なとこだから、余り来る事はないけどな。しかし毎回マシロちゃんは、何しに森に行ってるんだ?」


「血が騒ぐんだと」やれやれという感じで、両手を広げ肩を竦ませる健人。


「なんだそれ?」呆れ顔のジルム。


「さあ?」多分猫時代の名残だろう、と勝手に思っている健人。多分それはあながち間違いでもなさそうだが。まあ、真白が森に行ってる間、俺は色々情報収集してよう。そう心の中で呟いて、健人はジルムに軽く手を振って別れ、それから今日もまだ話できていない村民と、交流を持とうと村中を散策するのであった。


 健人は村に来た初日から精力的に村民に話しかけ、情報を集めている。とにかく何でも良いからこの世界の事が知りたかった。そのおかげで色々な事が分かった。


 まず通貨だが、この世界共通の通貨があり、銅貨、銀貨、金貨、白金貨とグレードがあがっていく。銅貨が1枚10円くらいだろうか? それ以下が必要な場合は、銅貨の欠片を使うとの事。銅貨の欠片10個=1銅貨。でも余りそういう細かい取引はしてないらしい。大体は端数切り上げまたは切り捨てというのが、この世界の取引の通例だそうだ。


 銀貨=千円、金貨=1万円、白金貨=10万円と思っておけばいいかな? 日本円で自分なりに換算してみる健人。因みに卵一個1銅貨だ。まあ、金銭価値はこれから自分自身が売買していかないとわからないだろう。そういう意味でも、村を出てもっと大きな都市に行ってみたい。やはり旅好きの血が騒ぐ健人だった。


 他に、魔物というのは、ゴブリン以外にもいて、もっと強い魔物がいるところもあるという。オーガとかいう巨人みたいなのや、動物から魔物になった一角ウサギなど。それを退治する専門が(冒険者)という事。冒険者はギルドという、集会所みたいなところで、魔物の討伐依頼を受けるのが普通らしい。冒険者には誰でもなれるし、討伐する事で収入を得る事ができるが、命と隣り合わせの危ない職業だという。剣や斧、槍などの武器が普通に売っていて、それを用いて魔物退治をする冒険者もいれば、魔法使いの冒険者もいるとの事。


 まあ、魔物がいるんだから自衛しないといけないし、それが出来ないなら出来る人間に頼るのは当然だな。武器が普通に売っている世界か。血生臭いと思いつつも、この世界の常識に早く慣れないと、と思って入る健人だった。


 更に、このヌビル村は、アクーという名前の水の都市の一部で、伯爵が統治しているらしい。この辺りはアクーの中心都市からかなり離れたところだが、アクー自体は海に面した都市だとの事。


 更にアクー以外にも3つの都市があり、そして中央に王都メディーがあるそうで、人の数が物凄く多いらしい。王都には王がいて、王族が統治している。他の各都市は全て伯爵が統治しているそうだ。


 アクーは水の都か。魚一杯食えそうだ。是非行ってみたい。他の都市も気になるが、王都メディーも行ってみたいなあ。今日も色々聞きながら、あれこれ思案する健人だった。


 でも、とりあえず収入どうしようか……。いつまでもダンビルさんのところにいるわけにもいかないし。このままではいけないなあ、と悩む健人だった。



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