表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

137/241

やっぱりこうなる

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

「さすがに眠い」「私も」


 ケーラがふわあ~と欠伸をし、リリアムに欠伸が移ってリリアムも上品に手で口を抑えてあふぅ、と欠伸をした。今は健人の部屋に皆いる。既に日付は変わっている時間帯だ。


「そうだな。もう遅いもんな」健人も大きくうーんと伸びをする。


「しかし、真白がケーラの居場所が分かったのが不思議だったな」


 獣人だった頃の真白には、そんな能力はなかったはずだ。健人のその言葉を聞いたからか、「にゃっふん!」と、まるでエッヘン! と言ってるような鳴き方をし、後ろ足だけで立ってサムズアップをするように前足をビシィと差し出す白猫。


 そんな猫にあるまじき行動を呆れながら見ていた健人に、ケーラがもう我慢ならないと言った様子で腕に絡まった。そして涙を溜めた瞳で、上目遣いで健人を見つめる。


「怖かった」そう一言呟いて。


 そんなケーラを愛おしそうに優しく撫でる健人。自然と甘えるケーラ。頭をコテンと健人に預ける。もう少しで襲われそうになったケーラ。彼女を守れなかった健人は、申し訳ない気持ちで一杯だ。


「ごめんな。ケーラ」だから、自然と謝罪の言葉が出てくる。自分の不甲斐なさに腹が立つ健人。守る。そう偉そうな事を言っておきながら、今回、結局ハロウズがいなければどうなっていたのか。つい悔しくて拳を握り締めてしまう。


「気にしないで。これから守ってくれたらいいから」そんな健人の責任感、優しさが嬉しいケーラ。


 健人がケーラを抱き寄せる。自然に身体を預けるケーラ。ようやく大好きなタケトの中にいる。世界でこれほど心地よい、安心できる場所はどこにもない。幸せそうな顔のケーラ。そして今回の件で改めて分かった。例えタケトが人族であろうと、ボクはこの人が世界で一番大好きだ。ずっとこれからも一緒に生きて行きたい。


 そして、それを傍らで羨ましそうに見ているリリアム。そしてリリアムも辛抱たまらんなって、反対側の健人の腕に絡まった。


「部屋の中だし、いいでしょ?」そう言って愛おしそうに健人を見上げる。


 そう言えばリリアムとイチャコラする寸前だった。実際リリアムはなんかモゾモゾしている。だが、それより前からずっと、今日昼間からずっと、イチャコラしていたはずなんだが。どうもそっちの方も辛抱たまらんってなっているらしい王女殿下。


「「……」」そして目が合う美女二人。何か牽制し合っている。元々今晩はリリアムの番だった。だが、あんな事があったケーラも、出来たら今夜は健人と一緒にいたい。そしてそんなケーラの気持ちも分からなくはないリリアムだが、自分だって健人とイチャコラしたい。だって健人病なのだから。


「「一緒にいたい」」見事にハモる二人。


「じゃあ、今夜は三人一緒だな」ニヤリとする健人。しまった、という顔をする二人。そんな三人の様子を健人の足元で見ていた白猫が、「にゃにゃにゃ~」と、呆れた様子で何か言った。いや鳴いた。


 ※※※


「やっぱりこうなった」「仕方ないわね」


 諦め顔の裸の美女二人。既に今は朝である。そして三人は当然、そのまま健人の部屋。ベッドの真ん中には健人が満足げにスヤスヤ寝ている。その両脇にはケーラとリリアムが健人の腕枕に頭を預けている。


「で、でも、今晩は私でいいでしょ?」お願いするような口ぶりでケーラに話しかけるリリアム。


「え~? ボクの番じゃん」嫌そうに反論するケーラ。


「だってだって、私昨晩タケトと二人になりたかったのに、なれなかったんだもの」デモデモダッテと泣きそうな顔をするリリアム。かなり必死な王女殿下。


「……ボクだってタケトと二人きりになりたいのに」むくれるケーラ。昨日の事があったから尚更、健人と二人きりになって遠慮なく甘えたい。


「じゃあ、今から午後まではケーラで、それから明日の朝までリリアム、って事でどうだ?」何時の間にか起きて二人の会話を聞いていた健人からの提案。


「……むう。それなら、まあ」リリアムがどうやら妥協した様子。今日の午後からなら今からそんなに時間も空いていない。それにケーラの気持ちも分からなくはない。


「んで、明日はケーラと一日ずっと一緒にいるよ」


「そうだね。それならいいかな」今から二人でいられるし、今からタケトを独占できるし。


「じゃあ、午後にまた来るわ」仕方ないわね、と諦め顔のリリアム。昨晩も本当は二人きりが良かったが、朝まで三人一緒だった事もあって、不完全燃焼な様子。それでも、ある程度満たされたリリアムは、一人ベッドから出て、そして着替えて素直に健人の泊る部屋を出て行った。


「タケト。リリアムに会うまでずっとこのままでいて」そしてリリアムが出ていったのを確認から、改めて健人に甘え出すケーラ。


「いいけど、真白に朝ご飯あげたいから。それからな」


 ※※※


「「「「あ」」」」


 下の受付で偶然ハロウズの家族と鉢合わせたリリアム。ハロウズ達家族は朝食をとろうと食堂にやってきていたのだ。


「王女様だ。どうしてあのお兄ちゃんの部屋から出てきたの?」


 今は朝なのに? 不思議そうにコテンと首を傾げて質問する純粋無垢なミリー。ミリーは昨晩ハロウズからリリアムの事を聞いていたので、王女だと言うのは知っていた模様。


「え? あ、その、オホホホ」ものっそい困惑した顔をしながら、王女殿下らしい高貴な笑いを振りまきつつ、そのまま足早に逃げるように宿を出て行くリリアム。全く何も誤魔化し切れていない。ただ逃げただけ。


「……あの黒髪の兄ちゃん、やるなあ」「せめて私達は知らなかった事にしましょう」


 ハロウズとミランダはやはりと言うか、気づいた。そして二人は気遣いの出来る大人のようだ。何の気遣いかは、ご想像にお任せします。


 そしてリリアムが逃げるように、自分が泊まっている高級宿にやってくると、下の受付で兵士二人が待機していた。どうやら外から帰ってきたのは彼らにはバレていない様子。だが、リリアムはまさかこんな朝早くから兵士達が自分の泊っている宿にいるとは思わず、彼らを見て驚いてビクっとしてしまった。


「王女殿下。朝早い時間に失礼致します」リリアムを見つけ、敬礼する兵士二人。丁度リリアムが部屋から降りてきたと思ったようである。バレていないようなのでホッとするリリアム。


「ど、どうされたのです?」おどおどしながら、ここに来た理由を兵士達に質問する。


「昨晩の件で、村長がお話したいと申しております。その事をお伝えに参りました」リリアムの様子を若干訝しがりながら、それでも礼を弁えた態度で用件を伝える兵士。


「村長とお話するのは構いませんが、私は今日の午後から明日まで、とてもとても大事な用があります。その時間帯は絶対に不可能です。ですが、今日の午前中の間で宜しければお会いするのは可能です。村長のお時間のご都合はいかがですの?」


 因みに、とてもとても大事な用とは、健人とのイチャコラです。


「事前に村長より、本日であればいつでも良いと伺っておりますので、これからすぐでも問題は御座いません」よほど大事な用なのだろう。王女殿下のお邪魔になってはいけない。兵士二人はそう思って、すぐに村長宅へお連れしようと決断した。


 因みに、とてもとても大事な用とは、健人とのイチャコラです。王女殿下にとってはとてもとても大事なので、二回言いました。


 ※※※


「ボクね。やっぱりタケトがこの世で一番大好き」


 今回の件で気づいた。思っていた以上に自分の想いは強い。絶対彼から離れない。


「そうか。ありがとうな。俺も大好きだよ」


 健人も同じだ。今回、ケーラが裸にされているのを見て、あれ程自分は怒りが沸くんだと改めて気づいた。ケーラに対する想いの強さを改めて気づかされた。真白もリリアムも勿論大事だが、この子も大事だ。これからは何としてでも守る。それは命に代えても。


「うん。嬉しい。だけど、人族との付き合いは、これからは気をつけようと思った」


「なんか、あんな人族のせいで済まなかったな」


「タケトが謝る事じゃないよ」タケト自身が何かしたわけじゃない。あのバルターという神官が問題だっただけだ。


「ケーラだって、魔族がした事を謝っただろ? 同じだよ」


「でも、ボク大好きなタケトに、その事で謝ってほしくない」


「そうか? ケーラが嫌ならやめとくよ。それより、俺としてはケーラを守れなかった事が本当に申し訳なくて」心の底からの本音。そう言って優しくケーラを抱きしめる健人。これからはこの子をちゃんと守っていこう、そう決意する健人。


「仕方ないよ。もう済んだ事だし、これから守ってくれたらいいから」この抱擁の中は世界一の安全地帯。心地良さそうにそれを受け入れ、そして愛おしそうに健人を見つめるケーラ。


「ごめんな」「うん。もう気にしてない」そしてキスをする二人。


 普段とは違う、しんみりした様子の二人だが、それでもやる事はいつも通りやってましたとさ。


 そして午後になってから、慌ただしい様子で、やや遅れ気味にリリアムが息を切らせながら部屋にやってきた。それから健人とケーラは着替え、三人と白猫は皆で下の食堂で昼食を取っている。白猫は健人の足元で鶏肉の焼いたものを美味しそうに食べている。


「二人に話があるの」食事を取りながらリリアムが二人に話しかけた。


「どうしたんだ?」


「さっき、ここの村長に会ってきたのよ。神官が捕まってしまったから、光属性持ちがこの村から一時期いなくなるので、もし可能なら、代わりが来るまで私に神官の代わりとして、治癒などして欲しいって依頼されたの。メディーから次の神官が来るのに、人選とか準備とか考えて一週間くらいかかるから、その間だけでもって言われたのよ」


「俺はいいけど、リリアムはいいのか?」しかしメディーから、か。何か引っかかる様子の健人。


「うーん。本当は隷属の腕輪の件を早くお父様に伝えたいから、出来るだけ早めにメディーへ行きたいのだけれど。でもその間、ここの村の人達の病気や怪我を放置できないわ。ここはアクーとメディーの中継地だから、それなりに光魔法の需要もあるみたいなの」


「なるほどなあ。じゃあ仕方ないな」


「あ。そうだ。土のクリスタル取りに行かないと」ふとケーラが思い出した。魔法屋のエルフに依頼していた魔法の補充。半日で出来ると聞いていたから、本来なら既に出来上がっているはずだが。


「でも、魔法屋のエルフって捕まったんじゃないのか?」健人の言う通り、昨晩の件でサリーアは兵士に捕まっている。


「そうね。じゃあ、ケーラ。そのエルフの件、直接村長のところに行ってどうするのか聞いてくれないかしら」


「なんでボクが行くの?」顔の知れてる、しかも王女のリリアムの方が都合がいいのでは? しかもケーラは魔族。また余計なもめ事が起こらないとも限らない。


「その村長は、ケーラが魔族という事については大丈夫よ。私が仲間だって話しているから。それに、だって、私ほら、これから……ね?」よほど待ち遠しかったのだろう。リリアムが訴えるような視線をケーラに投げかける。絶対に譲らない、という決意を込めて。


「ああ~。了解だよ」そうだった。これからリリアムの健人タイムだった。その熱い視線の理由を理解したケーラ。健人もリリアムにずっと拘束? されるから、村長のところに行けるのは自分しかいない。


 じゃあ行ってくる、とケーラは健人とリリアムに挨拶し、食堂を後にした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ