説明回って必要ですよね?くどくたって。ね?
書き溜めが結構あるので、今日は5話くらい投稿します。
「こいつは(火)の魔法だ」ランプに火をともしながら、ダンビルが説明する。
「この世界には、(魔法)と(魔力)がある。まず魔法についてだが、火・水・風・土ってのがある。これらの魔法は(属性持ち)という、一部の選ばれた人族のみが持つ事が出来る。その属性は、一人1種類しか持てない。例えば火の属性持ちは、水の属性持ちにはなれない。そして属性持ちかどうかは、生まれた時に既に確定していて、今後それが変わる事はない。殆どの人族は(無)って事だ。要するに属性持ちってのはエリートって事になるわな」
まず魔法には種類があって、そしてそれぞれ属性が4種類?あるのか。そしてその中から1種類だけ使える人が、極一部いるって事か。魔法使いは相当レアなんだな。そしてその他大勢は(無)という言い方をするのか。真白が、自分には才能がないから手助けに来たって言ってたから、きっと俺も(無)って事なんだろう。ダンビルの話を聞きながら、健人があれこれ考察する。
「じゃあ、今ランプに火をともしたダンビルさんは、数少ない(火属性)の魔法使いって事なんですか?」
「いや、俺は(無)だ。俺が火の魔法を使えたのは、この小さい三角の赤い石、(クリスタル)を使ったからだ。クリスタルは、魔法や魔力を込める事が出来る結晶みたいなもんだ。俺達はこれを使って、こうやって火をともしたり、水を出したり、風で乾かしたり、田畑を開墾したりしてる。俺らみたいな(無)が殆どだから、みなこうやって、クリスタルを活用して、生活してんだよ」
なるほど。前の世界のガスや電気を、魔法で補っているって感じか。でも、そのクリスタルってどうやって作ってるんだろう? 聞いているうちに色々疑問が沸いてくる健人。それを理解したかのように、続けて説明するダンビル。
「魔物をやっつけると、たまに(クリスタルの欠片)が出る。他にも採取方法があるらしいが、俺は魔物から出てくる欠片しか知らん。その欠片を集めて、加工するとクリスタルになる。しかしこの加工はエルフにしか出来ない。やつら独特の気功法? なんかの流れとか言ってたか? を用いて、クリスタルに加工するそうだ。因みにエルフが加工できるクリスタルは、何も入っていない空のものだけ。そこに魔法使いが、それぞれの属性を入れる事で、各属性魔法を、クリスタルを介して使えるようになるわけだ。因みに欠片のままでは魔法は入れられない。必ずクリスタルに加工する必要がある」
まずクリスタルは魔物を倒してたまに出る欠片を、エルフとやらに加工させる事で、作られるわけか。エルフとやらが作るクリスタルは、空のものしか作れず、そこに必要な4つそれぞれの属性の魔法を入れて、初めて使えるようになるわけか。ふむふむとダンビルの話を頷きながら聞いている健人。
……というか、エルフってなんだろう? 改めて疑問が出てくる健人。
「クリスタルに入っている魔法は、一度属性を入れたら、他の属性は入れられない。例えば、火の属性が入ったクリスタルに、水の属性は入れられないという事だ。そしていくら使っても火の属性は消えない。でも永久に使えるって事でもない。それは次に説明する(魔力)が関係する」
魔法とは違う、魔力。どう違うんだろうか?
「魔力とは、魔法を使うためのエネルギーみたいなもんだ。魔力も人によってあったりなかったりするが、これは属性とは違って、魔力持ちは大体人族の5割ほどはいる。と、いうことは、逆に言えば魔力がないやつも5割はいるって事だ」
さっきからダンビルの、(人族)って言い方が気になる健人。とりあえず、魔力は、魔法を発動するエネルギーだという事は理解した模様。
「繰り返すが、魔力がないと魔法は無意味だ。両方揃って初めて魔法は発動する。クリスタルに入っている魔法を、自分の魔力を使って発動させる事で、魔法が使えるって事だ。じゃあ、魔力もないって人はどうするのか? それは、実はクリスタルには魔力をいれる事も出来て、クリスタル二つを使って、発動させるんだ。魔力のクリスタルと、魔法のクリスタル2つだな。ただ、一回クリスタルに魔力を入れると、今度は魔法は入れられなくなるんだがな。魔力は有限なので、魔力を使い切ってしまったら、その都度魔力を補充する必要がある」
魔法も魔力もない人は、最低クリスタル2つ必要なんだな。魔力がある人は、自分の魔力を使えばいいから、属性の入ったクリスタル1つでいいと。複雑だなあ、と、考えるのに疲れてきた健人。でも、ダンビルがせっかく説明してくれているのだから、我慢して聞いているが。
「でも、自分に魔力があるかどうかなんて、どうやってわかるんですか? そして気になったんですが、魔力の量の大小によって、クリスタルには影響はないんでしょうか?」そこで質問を挟んでみる健人。
「その辺は大丈夫だ。例えばこのランプのクリスタルは三角形だが、こいつの場合、こめられる魔力の限界が決まっている。沢山入れようとしてもクリスタルが拒否するようになってる。多少炎を大きくしたり、小さくしたりは出来るが。まあ、沢山の魔力を込めて、それでクリスタルが壊れるって事は滅多にないんだけどな。稀にとんでもない魔力のやつが、そういう事をしでかすみたいだが。普通に使ってれば問題ない」
魔力の量が多いからって、ランプの火がでかくなる事はないって事か。クリスタルの許容量が決まってるんだな。魔法を魔力で使用する。一応どっちもない人でも、クリスタルを活用すれば、生活に困らない程度には使える、て事か。しかしエリートだと言う属性持ちの人は、専売特許持ってるみたいなもんだな。なんか生まれ持ってそう言う素質があるって羨ましい。てか卑怯じゃね? とりあえず、健人は、この世界の魔法については大体理解できたようだ。
「じゃあタケト。お前このランプで火の魔法を試してみろ。魔力を込める事が出来たら、お前には魔力があるって事だ」
おお、さっそく魔法を使うのか俺? さすがにわくわくしている様子。
「でも、魔力を込めるって、どうやってやるんです?」
「火の魔法の場合は、単に念じるだけでいいぞ。火よ着けーってな」
そんな単純な感じでいいらしい。とりあえずドキドキしながらやってみる。ダンビルが一旦ランプの火を消す。火を消すのは、魔力を止める事で出来るようだ。スイッチのオンオフの要領で行けるのが分かった。そして健人はランプの下についている赤い三角形のクリスタルに手を当て、ランプの下の部分を両手で包むように持って、「火よ着け」と念じてみた。
すると、「ボッ」という音と共にランプに火が灯った。「おおおー! 魔法が使えた! すげぇ!」健人は歓喜してつい大声で叫んでしまった。
生まれて初めて魔法使ったぞ俺! 相当嬉しい。
「よかったな! タケトにも魔力はあったみたいだ。属性は分からんけどな」
「そういや属性を持ってるかどうかって、どうやってわかるんですか?」
「都市にギルドがある。そこに水晶玉があって、そこで分かるようになってる。俺達は生まれてから、子どもの時に都市に行って、確認しにいってんだ。もし属性持ちだと判明したらエリートだからな。親達も期待しながら向かうもんなんだぞ。属性もちになったら死ぬまで食い扶持には困らなくなるからな。まあ、大抵は冒険者になったり、王都に仕えたりするんだが」
ギルドとやらで分かるのか。また知らない新しい単語が出てきた、と思った健人。そして冒険者? 王都? なんか俺が生きてた時代ではめったに聞かないワードが沢山出てきたなあ。そして都市か。いつか行ってみたいなあ。ここは村だから、かなり小さな集落だろう。街もあるだろう。そして都市となれば、結構な人がいるんだろうな。産業とかどうなっているのかも見てみたい。健人の旅好きが疼いて来たようだ。
「ああ、因みに、お前が寝る部屋にも同じタイプのランプがあるが、マシロは使えないと思うぞ」
「え? どうしてですか?」
「あいつは獣人だからだ。獣人は魔力も属性も持たないのが普通だ。そういや(種族)については説明してなかったな。この世界には俺達 人族、そしてマシロみたいな獣人族、エルフ族、ドワーフ族、更には魔族がいる。さっき属性を持てるのは人族だけって言ったが、実は魔族も属性魔法を持っている。というか、魔族は全員(闇)属性を生まれながらに持ってる。でもエルフ、ドワーフ、獣人族は持っていない」
魔族というのがいるらしい。そして闇魔法……。名前からして恐ろしそうな魔法だな。他にエルフやドワーフてのも人と違う種族なのか。獣人、正しくは獣人族っていうのか。ほんと色々いるなあ。だから人族、という言い方をしてのか。色々分かってきた健人。
「なんか大きい声聞こえたにゃ。どうしたんだにゃ?」真白があくびしながら降りてきた。健人がランプに火を灯す魔法を成功させて、喜んで大声出した時の声だろう。
「そうだな。明日も早いしそろそろ寝るか。ああそうだ、風呂入るか。ちょうどいい。水と火の魔法を使うからついてこい」
そういってダンビルは、健人と真白を奥の水場へ案内した。そこには人一人入れるくらいの、立方体の木でできた桶のような入れ物があり、壁には蛇口のような鉄のノズルみたいなものがあった。その上には、今度は青色の三角形のクリスタルがついてある。
「おうタケト。お前が水を出してみろ。これは水のクリスタルだ」
「にゃ? 健人様、魔法使えるのにゃ?」
「まあ、使えるというか、使えるんだけど、自分の力じゃないというかね」説明に苦労する健人。
とりあえずダンビルに教えてもらったとおり、(水よ出ろ)と、ノズルの上の青いクリスタルを手で覆って念じてみる。すると、ノズルからジョバーと水が出てきた。
「にゃ?これ普通に水道水じゃないのかにゃ? ……あ、この世界水道ってあるのかにゃ?」
「多分ないと思う。これは俺が魔法で出したんだよ。俺が、っていうのは正しいかどうか分からんけど」
??? ってなってる真白。とりあえず真白には後で説明するつもりなので、真白の様子は気にせず、今度は桶の下についている赤い三角形のクリスタルに、これもダンビルに教えてもらったとおり、(熱くなれ)と念じる健人。すると、溜まっていく水から、少しずつ湯気が出てきた。
「これ下に薪でもあるのかにゃ?」
「違うよ。桶の下にある赤い宝石みたいなのから、熱を出してるんだよ」
真白が首をひねりながらふーんと返事する。
「水を出したり、熱を止めたりして、適温にして入るんだ。マシロは魔法使えないから、とりあえず湯が溜まったら適温にしてやるといい」
わかりました、と返事して、暫くしてちょうどいい高さまでお湯が溜まったので、手で触って熱くない程度に温度設定をする。
そして真白が風呂に入って、その後ダンビルさん、俺と入ってから、明日早朝からダンビルさんの手伝いをする事を約束し、部屋に戻った。