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デート。ケーラ編

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

「……タケト?」


 いつの間にか宿の外に出ていたケーラが、リリアムが健人の呼び方が変わっているのに気づく。知らぬ間にそばにケーラがいて、ギョッとする健人。ジト目のケーラ。


「あ、ああ。昨日一緒にいて結構仲良くなったからな」驚きつつあたふたしながらも言い訳? する健人。嘘は言っていない。


「ふ~ん? ま、いいか。今日はタケトと二人きりだし!」ちょっと怪しいが気にしない事にしたケーラ。どうせあのブロンドの女は何も出来っこない。昨日も進展なんかなかったはず。そう思い込んでいるケーラ。


 だが、今しがた、二人で馬に乗って健人の家からやってきたという事は、昨晩お泊りした、という事なのだが。その思い込みのせいなのか、そこには気づいていない様子。


 そしてニコっとして当たり前のように健人の腕を組む。が、健人がいつものように拒否しない。


「……」じーっと不思議そうに上目遣いで健人の顔を見つける紫のメッシュが入った黒髪超絶美少女。額に汗をかいて上の空の健人。


 リリアムと恋仲になり、以前からずっと好意を寄せてくれているケーラに対して、申し訳なく思っている健人。だから今日は腕を組むくらいは許そうと思っていたりするのだった。


「と、とにかく、行こうか」ケーラの視線をよそに、おもむろにどこかへ向かおうとする健人。


「ん? どこか行くの?」


「ああ。ケーラの武器と防具を造るんだよ」


 ※※※


 腕を組んで歩く二人。道行く男どもは、そのカップルにしか見えない二人を見て、「グギギ」と音を立てている。ケーラは超絶美少女だから男どもの嫉妬も仕方ない。今日はいつもの冒険者の格好とは違い、黒のショートパンツに上半身は白い長袖のシャツに防寒用の黒い麻で出来たベストを着ている。ボーイッシュな服装だが、スタイルが良く分かるその服装は、ケーラのようなスタイルが抜群の美少女だからこそ着こなせているのだろう。


 そしてケーラはご機嫌だ。いつもの邪魔なブロンドの女はいない。独り占めなのだ。しかも腕組んでも何も言わないなんて。え? これってチャンスかも? などと、健人とリリアムの関係が進展したのも知らず、脳天気なケーラ。一方健人は、ケーラになんて言おうか、いつ言おうか、ずっとにこやかに嬉しそうなケーラを見ながら悩んでいた。


「あ、ここだよ」


 昨日も来たドルバーの鍛冶屋だ。


「昨日、リリアムの武器と防具を造る際、素材が余るって聞いたんだ。なら、ケーラの分も造ってしまおうと思って。今使ってるのって真白のだから、サイズが合わないだろ? なら、ケーラに合うサイズを造ったほうがいいと思うんだ」


「ふむふむ。なるほどね。でも、ここリリアムと来たんだ。ボクとタケトだけの場所が良かったな」


 ちょっとむくれるケーラ。今日はデートなのだから、あのブロンドの女と既に来たところに来るのは気が引ける。だが、健人の言う事も分かる。ずっと真白の武器や防具を借りているわけにもいかないし、慣れては来たけど、やはりサイズが違う。そして実は、ナックルはどうも自分に合わないと思っていたケーラ。デーモンとの戦いの時でも、余り力を発揮出来ていなかったのを気にしていた。せっかく武器を新調するなら、自分にあった新しい武器を見繕おう、そう思っていた。

 

 また、真白の物を使っている防具の、特に胸の辺りが気になっていた。ほんのちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、ほんとにほんのちょーっとだけ、スカスカなんです。ケーラ曰く。


 キイ、と健人が木の扉を開ける。すぐに怒鳴り声が飛び込んできた。


「こぉら! 作業中に勝手に入ってくんな!」「わあ!」ケーラは突然怒鳴られてびっくりする。


「ドルバーさん。俺ですよ」ドルバーの大声の怒鳴り声に驚く事もなく、笑顔でドルバーに話しかける健人。


「おお、何だタケトか」来訪者が誰か分かったところで、すぐに落ち着いた口調になるドルバー。


「びっくりした~」ケーラはまだドキドキしてるっぽい。びっくり箱を開けたような感じだろう。


「そっちが昨日言ってた娘か」ケーラのそんな様子を気にせず、質問するドルバー。


「そうです。じゃ、ケーラ、寸法測ってもらって」健人も何事もなかったように、慣れた様子でケーラに話す。


「う、うん。というか、これがこの店では普通なんだね」まだドキドキしているケーラだった。


 ※※※


「何だか落ち着かないわね」


 伯爵邸に到着し、門番に会釈して、そして中の邸宅まで馬で移動しながら、太ももをもぞもぞするリリアム。


「何かがずっと入っている感じがするわ」


 邸宅に到着して馬を降り、下腹部を擦りながら、昨晩の事を思い出す。この違和感は幸せの証。自分の想いが届いた証拠。そう思うと、王女らしからぬニヤアとしたちょっと気持ち悪い笑みを浮かべてしまう。その表情を見てビクっとなるメイド達。


「オ、オホン!」メイドの様子に気づき、わざとらしく咳払いする。そして居直って馬をメイドに預け、邸宅に入った。


「昨晩帰って来なかったから心配……」出迎えながらそう言いかけて、言葉を阻まれたアイラ。リリアムがアイラの胸に飛び込んだのだ。突然の事だがそれを逃さずうまくキャッチするアイラ。さすがレベル90ですね。


「お姉様! 私、今とても幸せなの!」満面の笑みでアイラに今の気持ちを告げるリリアム。アイラは何があったか気づいた模様。


「そう。良かったわね。頑張ったのね」そう言って優しく頭を撫でる。子どものように甘えた様子のリリアム。


「恋って凄いのね。叶うとこんなに満たされるなんて。こんなに幸せな気持ちになるなんて」頭を撫でられながら、健人への気持ちがついに叶った事を伝えるリリアム。


 叶わぬ恋だと思っていた。叶わないのに、敵わないのに、想いだけはずっと強く深くなっていく。その時はとても辛かった。悲しかった。悔しかった。ずっとそう思っていた。だからだろう。叶った時の達成感、開放感、そして幸福感は、これまでの人生の中で1番素敵で素晴らしかった。それを今日知った。だから今は、正に天にも昇りそうなほど幸せだ。覚悟を決めて本当に良かった。


「そうね。本当、よく我慢したわ。よく頑張ったわ」優しい口調で労うアイラ。ずっと妹の恋路を見てきた。自分の事のように嬉しい。アイラのその言葉が嬉しくて、目に嬉し涙を溜めるリリアム。


「で、今晩からこの家を出ようと思ってるの。勿論、行き先はタケトのところよ」


 ※※※


 ドルバーの鍛冶屋を出たら、結構時間がかかったため、昼時になってしまった。ケーラは健人から提案された()()()()()の出来上がりが楽しみのようで、鍛冶屋を出た後も嬉しそうにしている。ついでに、健人も新しい防具を作る事になった。


 そして二人は高台にある海と街が一望できる、ちょっと洒落たレストランに向かう事になった。高台に上がると、潮風が海から吹き上がってきて心地よい。季節はそろそろ冬に向かおうとしているが、やや冷たく感じる風も、秋から冬に変わる頃の快い寂しさを伴って、それも気持ちいい。……はい。前回のコピペです。


 何故かというと、ケーラは道中ずっと、魚料理が有名なこのレストランに行きたいと言っていたので、健人は断れず来てしまったのだった。昨日ブロンドの美女と来たばかりの健人。そして今日は別の紫と黒髪の超絶美少女と一緒。入るのに相当勇気がいるが仕方ない。意を決してカランカランと、来客を知らせる鈴がついた扉を開ける。


「いらっしゃい……ませ」従業員が健人とケーラを見て言葉を詰まらせた。気まずそうな健人。それを訝しむケーラ。従業員は何も言わず、二人を席に案内する。わざとなのだろうか? 昨日座ったところと同じ窓際の席に案内された。


 ヒソヒソと従業員が二人を見て何か言っている。健人がダラダラ冷や汗をかきながら俯いている。昨日、あの有名人のブロンドの美女とここで食事していた、黒髪の青年。昨日のその様子は、正にカップルそのものだった。だが、次の日には違う美少女と共にやってきている。従業員からの冷たい眼差しと、余り良くない内容である事が想像できる従業員のヒソヒソ。正に針のむしろ状態の健人である。


「なんか様子がおかしいね?」何も知らないケーラは、店の雰囲気も健人もどうもおかしいので、怪訝な表情だ。


「そ、そうか? まあ、とりあえず腹減ったから注文しよう」何とか気を取り直し、さっさと食事を終えて出てしまおうと思っている健人。ある意味地獄かも知れない。自業自得とも言えるが。


 注文は、昨日リリアムが頼んだ魚の煮付けにした健人。ご飯と味噌汁がないがリリアムが昨日食べてたのを見て、つい欲しくなったのだった。箸がないのが辛いと思いつつ。そしてケーラは狙ったのかどうなのか、昨日健人が注文した魚フライだった。


「むおー! 何これ! 美味しい!」興奮した様子で嬉しそうに魚のフライを食べるケーラ。以前から眺めがよく料理の評判がいいと聞いていたこの店に来たかった、そう道中で嬉しそうに話していたので、より一層喜びもひとしおだろう。だから健人は、ここに来るのを拒めなかったのだ。


「そうだな。俺とケーラが食べてるこの料理って、前の世界にいた時よく食べてたんだ。どうやらこの料理って、百年くらい前に俺と同じ世界から来た、勇者が残した調理法で作られてるらしいよ」昨日リリアムから聞いた知識をケーラに話す。複雑な心境で。


「なるほどー。タケトの世界って美味しいもの多かったんだね」余程美味しいのだろう。手を止める事無く嬉しそうにフライを食べるケーラ。因みにタルタルソースはない。


「そうだな。特に俺が住んでた国、日本は、色んな国の料理が食べれたからね」


「にほん? て言うんだ。行ってみたいな。面白そう」


「うーん。どうかなあ。この世界みたいに魔法使えないからなあ。魔物もいないけどね」


「へー、でも、タケトがいた世界は興味ある」フフっと笑う超絶美少女。好奇心旺盛なところは真白とかぶるなあ、とコロコロ笑う顔を見ながら思う健人。


 そして食べ終わって会計が済み、ようやくレストラン地獄? から開放され大きく伸びをする健人。会計の際の女性従業員の冷ややかな視線でライフをガリガリ削られていたのはケーラには内緒だ。


「なんか疲れたの?」不思議そうに健人を見るケーラ。


「いや、ちょっと堅苦しかったから」嘘は言っていない。だが、ケーラとしてはどう考えても堅苦しいはずがない。寧ろリラックスして食事を楽しんでいたのに。


「そうかなー?」食事が美味しくて、景色も良くて満足げなケーラに、健人の気持ちは到底分からないだろう。


 そしてもうすぐ冬になりそうな、肌寒い潮風がビュンと吹き抜ける。ブルルと震えるケーラ。そして甘えるように、遠慮なく健人の腕を組み、二人下の市場へ歩いていく。


「ハハ」健人はふと思い出す。猫耳美少女の事を。こんな感じで二人歩いていた時の事を。


「なになに?」前触れもなく笑った健人を、上目遣いで見つめる超絶美少女。


「ちょっと思い出しただけ」


「何を?」


「聞かない方がいいと思う」


「気になるから聞きたい」ジーッと見つめる。赤いその瞳はまるで宝石のように美しい。吸い込まれるような瞳に少し困惑しつつ、仕方なさそうに答える健人。


「……昔真白と、よくこうやって二人で歩いてたのを思い出したんだよ。前から思ってたけど、ケーラって真白に似てるんだよ」


「……聞かなきゃ良かった」


「だからそう言ったのに」


 そしてぎゅっと、より一層強く、健人の腕を掴む。


「いつかボクも、気を使わずにこうやって自然に一緒に歩きたい」


「……」その言葉に何も答えない健人。


 そんな二人の様子を、見つからないように慎重に後方の家の影から覗いている人影がいた。後をつけているようだ。二人はその影に気付いていない。


 そして市場にたどり着き、ケーラは珍しい人族の様々な物、特に衣服に興味を持ったようだ。スカートは履いた事がないという。じゃあ、という事でドレスを試着してみるケーラ。膝上までの短いスカートのドレス。色柄はやや青の強い空色で、少し白い雲のような柄が入っている。正に空をイメージしたドレスだ。


「どう? 可愛いかな?」くるっと周ってみるケーラ。思った以上に似合っていて、健人を含め、その様子を見ていた男どもがぽけーと見惚れている。


「かなり似合うな」褒め言葉ではない。事実だ。可憐さと美しさが同居したような佇まい。ケーラは魔族と言っても色が白い。貴族のようだと言っても誰も否定しないだろう。不思議と高貴な雰囲気も漂っている。


「へへー、やったー!」ぴょんと飛び跳ねるケーラ。スカートの中が見えそうで危ない。おお、と周りの男どもがざわめく。見えそうになったので。


「それ俺が買ってあげるよ」嬉しそうなケーラを見て、自然と健人も笑顔になる。プレゼントしようと決めたのだった。


「え? いいの? やったー! タケトからの贈り物だー!」


 そして満面の笑みで健人の腕にしがみ付く。一気に周りから殺気が溢れ出す。「グギギ」という不協和音があちこちから聞こえてくる。


「と、とにかくここから離れようか」不協和音の正体が何となく分かった健人は、さっさとドレスの支払いをして、ケーラを連れて市場の出口に向かう。ケーラは健人に褒められたので、ドレスのままで移動する様子。嬉しくて仕方がないといった表情のケーラ。因みに着替えた後の服は健人が持ってます。


 正にご満悦のケーラ。だが、ヒュン、という、何かが飛んでくる音が聞こえ、急にケーラが組んでいた腕を離し、その場に崩れ落ちた。


「どうした?」突然地面に蹲るケーラを見て、驚く健人。


「ウ、ウグ……」唸るケーラ。


 ケーラの背中に、矢が刺さっていた。少しずつ赤く浸食していく、買って貰ったばかりの空色のドレス。市場には複数人がいるが、皆何が起こったのか分かったようだ。「きゃあー!」「血が出てるぞ!」叫ぶ人達。その叫び声を聞いてざわざわし始める市場。


 ケーラを見て、ザワっと殺気が沸き立つ健人。ケーラを攻撃したやつは誰だ? 腰に下げたミスリルの刀に手をかけ、犯人を探す健人。


「ハ、ハハ、ハハハハハ! ざまあみろ! 魔族を倒したぞ!」


 大声が聞こえた先をキッと睨む健人。そこには、痩せた中年男性が、道の真ん中で弓を構えてしたり顔で立っていた。そして更に弓を番える男。男の姿を見て、周りにいた人々は一斉に散り散りに逃げ出す。そして、男を見つけた健人から一気に殺気が沸き上がる。


「……何やってんだ?」静かに低い声で健人が聞く。その声は怒りに満ちている。健人からどんどん殺気が溢れ出す。


「何やってんだって聞きたいのはこっちの方だ! そいつは魔族だ。俺達の敵だ。なのになんで人族のお前が魔族と仲良くしてんだ!」怒鳴り返す中年男性。


「そいつら魔族は、五年前に俺の家族を殺したやつの仲間だ! 許さねえ!」


 そう言って蹲っているケーラに再度弓を放った。それを健人は、ミスリルの刀を鞘から一閃、居合斬りでスパン、と飛んできた弓を叩き斬る。


「だからって、ケーラには何の罪もないだろうがああああ!!」


 怒りが収まらない健人。刀を斜め下に構えながら、怒りの形相で男に走っていく。健人のスピードに驚く。弓は間に合わない。急いでナイフを取り出し構える男。だが、明らかに素人なのは分かった。


「お、お前! 魔族に味方するのか? じゃあお前も敵だ!」そう言ってナイフを振り回しかかってくる。が、健人には全く当たらない。デーモンと比べたら可愛いもんだ。ゴブリン相手にしているようなもんだ。パンという音とともに、男のナイフを刀で弾く健人。カランカランと音がして、男のナイフは地面に転がった。そして殺気のこもった目で睨みながら、男の首に刀の刃を当てる。皮一枚が斬れたらしく、男の首からツーと血が流れる。健人の気迫、殺気に身動きできない。ガタガタ震える男。この黒髪、思ったより強い。


「よくも、よくもケーラを!」そう叫んで男の首を切ろうとした時、


「タケト! 待って!」そう叫んでから、ゴホ、ゴホと咳き込むケーラ。そうだ。この男よりケーラの方が大事だ。怒りで我を忘れてしまっていた健人。刃先を男の首から外し、ケーラに駆け寄る。男は腰を抜かし、その場に尻もちをついた。


「大丈夫か?」優しくケーラを抱き上げる健人。背中に刺さっている矢を出来るだけ痛みがないように慎重に抜く。「ウッ」それでも若干の痛みを感じたケーラが呻く。それを見て優しく頭を撫で、ケーラが持っていた光属性のクリスタルが入ったオリハルコンナックルを健人が握り、「ヒール」を唱える健人。背中の傷が、徐々にふさがり、美しい背中が元に戻った。


 ただ、血まみれのドレスまでは、当然元に戻らないが。


「お、俺は悪くない。こいつらが、こいつらが悪いんだ! 俺の家族を殺したこいつらが!」


 未だ腰を抜かしている男性が喚く。それを聞いてキッと睨む健人。スッと立ち上がる。健人が男の元に行こうとした時、ケーラが諭す。


「タケトだって、最初会った時同じだったよ!」


 その叫びにハッとする健人。


「……そう、だったな」


 思い出した。初めてケーラと会った時、魔族と聞いて食って掛かったのを。真白を猫にした原因は魔族。同族のケーラに、殺気を向けた事を。


 そして落ち着いた健人が、刀を鞘に納めて男性のところにゆっくり歩み寄る。「ヒッ」と尻もちをついたまま声を出し怯える男性。殺されると思っているのだろう。


「攻撃して悪かった。でも、確かに彼女は魔族だけど、人族との和平に前向きな子なんだ。凄く良い子なんだ。優しい子なんだ。人族にも悪いやつがいて、魔族にもそういうやつがいる。そういう事なんだ。種族が悪いんじゃないんだ。そこは分かって欲しい」そう言って、今度は優しい面持ちで男性に手を差し伸べる健人。


 健人を見つめながら黙って聞いている男性。だが、キッと睨むように健人を見て、手を取らず自ら立ち上がった。


「その魔族は悪くないんだろうけどな、魔族に恨み持ってるやつがいるって事忘れんなよ」


 そう捨て台詞を吐いて走っていった。


「ケーラ。大丈夫か?」男が去っていって、ケーラに駆け寄る健人。


「うん。もう平気だよ。それより、せっかく買ってくれたドレスが汚れちゃった」血まみれになってしまった空色のドレス。地面に蹲った事もあり、土で汚れてもいる。その事が悲しくて、物凄く落ち込んでいるケーラ。


「……もう一着買ってやるよ」


 悲しそうなケーラを見たくない。喜んでほしいと思って優しく声を掛ける健人。


「ほんとに? いいの?」落ち込んだままだが、不意に上目遣いで見上げる超絶美少女、目に涙を溜めている。


「勿論」優しい笑顔で返事をする健人。


「ありがとう」ニコっと微笑む超絶美少女。どうやら彼女の落ち込んだ気分は治りそうだ。その微笑みに不覚にもドキっとしてしまった健人。


 そして今度は藍色のこれまた膝上くらいの短いスカートのドレスを健人に買って貰い、テンションアゲアゲのケーラ。喜んでくるくる回ってます。また中が見えそうなのを気にせず。


 そして小腹が減ったので、屋台のようなところで肉串を買い食いしながら歩く二人。だが、楽しい時間はそろそろ終わろうとしている。もうすぐ夕方に差し掛かろうとしていた。


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