表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/241

ジェット◯トリームアタックって思いつきで出来るほど簡単ではないようです

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

感想、レビュー、評価など頂けると励みになります。

宜しくお願い致しますm(__)m

「やりがいのある人族だ。さあ、続きはどうした?」手のひらでコイコイして健人を招くデーモン。


「まずは確認だ」健人の言葉に頷く二人。


 そして健人がウォーターエッジのかかったままの大剣を構える。その後ろにケーラ。更にリリアムが後ろに配置する。


「行くぞ!」一斉に並んだまま3人が走り出す。「シャドウバインド!」健人の後ろでケーラが叫び、ケーラの足元から黒い触手が一斉に現れ、デーモンの脚に絡みつく。


「フン」それを気にせず力づくでブチブチと引きちぎる。が、「ウォータースラッシュ!」次は健人が水圧で切り裂く水魔法を大剣から繰り出す。


「小賢しい!」上にジャンプして避けるデーモン。だが、それを読んでいた健人も更にデーモンの上にジャンプし、「うりゃあ!」と気合一閃、ウォーターエッジのかかった大剣を振り下ろす。「クッ!」やや不意をつかれたデーモンが左に躱したところに、「ホーリーナックル!」と、ケーラが拳に光を溜め、空に向かって打ち出す。◯動拳のように光の衝撃波がデーモンに飛んでいく。


「なんだと?」驚くデーモン。先程のホーリーニードル程度の光属性魔法ならともかく、魔族のケーラにそこまでの攻撃力のあるホーリー系の攻撃魔法が使えると思っていなかったデーモン。しかも当たると確実にダメージを食らう。


 だが、そこはさすがデーモンといったところか、避けられないと分かると、ダメージを覚悟して左手で受けた。ブシュウという音とともに、左手が吹っ飛ぶ。「ウグアア! だ、だが、光の玉を止めたぞ」苦悶の表情を浮かべるも、ニヤリと嗤うデーモン。ケーラに攻撃を仕掛けしようと右手の拳を振り上げるが、健人がケーラの前にサッと現れ、その拳を大剣の腹で止める。ガインという音と共に競り合う両者。


「ぐっ」圧倒的なパワーに飛ばされそうになるも、「ブースト、ブースト」と呟きながらぐぐぐ、と大剣の腹で押し返す。


「な、何?」抗われ驚くデーモン。「この細い体のどこにそんな力が?」


 そして更にケーラが、ホーリーナックルそのままの拳を、デーモンのこめかみ、というより角を目掛けて「はあ!」と気合を入れて叩き込む。ガン、と角とナックルのぶつかる音が響く。


「グアア!」「うわあ!」両者共々その衝撃でお互い反対側吹っ飛ばされる。二人ともゴロゴロと地面に転がる。転がったケーラの横に健人がバックステップで下がり、すぐさまケーラが立ち上がる。


「はあ、はあ。よし。いけそうだ」「はあ、はあ。そうだね」


 荒い息づかいとともにお互い顔を見合わせて確認しあう健人とケーラ。作戦の前にホーリーナックルの効果を試したのだ。ホーリーニードルほどの弱い光属性魔法は効かなかったが、魔力が多い光属性魔法なら効果があるのが分かった。


 ただ、ケーラは元々魔族。いくらエンチャントで光属性魔法を使えると言っても限界がある。何度も使えるわけではない。


「リリアム。次行くぞ」そして健人が後ろでスタンバイしていたリリアムに声をかける。緊張した面持ちで頷くリリアム。


 そして再度三人は、デーモンの正面に健人、次にケーラ、最後尾にリリアムの順番で縦に並んだ。


 一方左手の先をホーリーナックルの攻撃のせいで失ったデーモン。だが、その無くなった左手の手首辺りから、紫の瘴気のようなものがシュウシュウと音を立てて湧き上がっている。なんと吹っ飛ばされた手がぐしゅぐしゅという音と共に徐々に再生されていくではないか。


「あれだけのダメージでも、治癒魔法なしで再生するのか」徐々に治っていくデーモンの手を見つめながら、つばを飲み込み戦慄する健人。だが、先程ケーラがホーリーニードルで殴って傷ついた時よりは、治りが遅い。なら、もっと強い光属性魔法でダメージを当てれば効果があるはずだ。


「我をここまで追い込むとは。侮っていた。人間よ。これからは本気でいくぞ」


 目つきが変わった。デーモンの背後から大きな影が襲い掛かるような、強大な殺気を感じる。ビリビリと皮膚が震える。だが、三人はその殺気に気圧される事なく、必死でデーモンを見据えている。


 そう言って口を大きく開け、「コオオオオ」と息を大きく吸うデーモン。何かする気だ。


「リリアム!」健人が叫んだ瞬間、デーモンの口から、黒い光線が辺り一帯に放たれた。ゴオオオオという轟音とともに、デーモンを中心に一面の木々や地面が、その光線でチリになって消えていく。フュウウウウウウ、という声を出しながら、黒い光を収束させていくデーモン。


 デーモンの正面から扇形に、100m範囲ほど一帯が、跡形もなくなくなった。黒い光線を食らった人や馬の死体、幌馬車、森の一部や地面までも。


「……さすが光属性といったところか」正面にいる三人の人影を見て呟くデーモン。健人達は無事だった。リリアムが咄嗟にリフレクションを三人の前に発動させていたのだ。だが、反射はできなかった。それくらい強いエネルギー波。防ぐのが精一杯だ。


 ガクっとその場に崩れるリリアム。一気に急激に魔力を使ったのが原因か、意識を失ってしまった。駆け寄りたいがデーモンから目が離せない。地面にうつ伏したリリアムの様子を見て、息を飲む健人。


「ケーラ。さっきの作戦は無理になってしまったが、二人で何とかやってみるぞ。ホーリーナックルを無駄遣いしないようにな」


 健人の言葉に、緊張した顔で頷くケーラ。本当は三人で縦に並び、前の二人が死角を作って、リリアムがホーリージャベリンでとどめを刺す、という作戦だったのだが、さっきの黒い光線を防ぐために一気に魔力を使ってしまったリリアムが戦えなくなってしまい、事前に考えていた作戦が使えなくなってしまった。だが、リリアムがいなければ、さっきの黒い光線で、三人とも死んでいただろう。リリアムの戦線離脱は仕方ない事だ。


「光属性持ちの人間は倒れたようだな」ニヤリと嗤うデーモン。そう言ってもう一度、口を大きく開く。さっきのをもう一度やる気だ。


「させるか!」健人が「ウォータースラッシュ」と唱え、デーモンの口を大剣を横薙ぎに水圧のカッターを飛ばす。「チッ」仕方なく口を閉じ、ジャンプしてその水圧のカッターを躱す。その隙にケーラが横から「はあ!」と気合の入った蹴りを入れる。だが、「フン」とそれを左腕で遮るデーモン。


 どうやらケーラの通常攻撃は余り効いていない。光属性魔法なら効果はあるようだが。


「ケーラ。光属性は大丈夫か?」「うん! まだ大丈夫!」


 それを確認して、ケーラに耳打ちする健人。頷くケーラ。そして健人がデーモンの前に立つ。そして改めて大剣を構える。


 よし。久々にリズムだ。16ビートから24ビート。ブツブツ言いながらデーモンに疾風の速さで駆け寄り、斜め下から大剣を逆袈裟斬りで振るう。そして更に袈裟斬り、更に横薙ぎ、そして逆から更に、更に、更に、更に、どんどん速くなる健人の攻撃。


「ム、グ、ウオ」竜巻のように怒涛の攻撃を仕掛ける健人にたじろぐデーモン。先程までとは威力も早さも全然違う。一体何があったのか。焦るデーモン。先程とは間合いも違う。距離を取ろうとバックステップするが、ウォータースラッシュが幾重にも飛んでくる。それを躱すとすぐに健人が迫ってまた竜巻が舞う。


「凄い」健人に言われ待機しているケーラが、その様子を見て驚いている。


 実は健人自身も驚いていたりする。そう言えばリズムを使い本気で戦うのは久しぶりだ。多分ヴァロックとの修行以来だろう。実は先程化け物となったアヴァンを倒した事で、更にレベルアップしていたのが理由なのだが、当人達は気付いていない。


 ウォーターエッジの魔法が切れたが、それでもお構いなしに大剣を振るう健人。デーモンも速すぎて激しすぎてさすがに大剣を掴めない。避けるのが精一杯だ。


「このっ!」呟いて口を開いて健人に向けて黒い塊をボンボン打ち出すデーモン。が、それさえも躱す健人。躱しつつも攻撃をやめない。躱された黒い塊は地面のあちこちに当たって爆発している。


 ザク! と、とうとうデーモンに大剣がめり込む。「ウガアア!」右肩に刺さる大剣。ぐぐぐ、と健人は力を込めてデーモンの体の中に徐々に食い込ませていこうとする。だが、中々大剣が入っていかない。デーモンが大剣を握り、歯を食いしばって押し返しているのだ。


「重さだ。重力を下にかけているイメージだ」そう呟く健人。ズン、と一気に大剣が重くなる。「な、何だ?」驚愕するデーモン。どんどん体に入っていく大剣。重い。まるで大きな岩のように重い大剣。「更に更に、下に重力のイメージ」ブツブツ呟く健人。その度、ズン、ズン、と重くなる。「ウゴアアア!」叫ぶデーモン。とうとう両手でも抗えなくなる。大剣が食い込み逃げられない。苦悶の表情で山羊独特の縦長の瞳で健人を睨むデーモン。


「調子に、乗るな!」苦しみながらも足を振り上げ健人の腹に蹴りを入れようとするが、それでバランスを崩してしまう。「ウガアアアア!」絶叫とともに肩口から下へ切り裂かれるデーモン。ブシャアア、と青い血飛沫が切り口から吹き出す。それを見て一旦バックステップでデーモンから離れる健人。だが、健人も疲労困憊だ。下がったその場でガクっと地面に膝を付き肩で息をしている。


「はあ。はあ。ケーラ、行けるか?」


 健人とデーモンの攻防の凄まじさを目の当たりにして固まっていたケーラ。だが、健人に声をかけられハッとし、そして緊張の面持ちでコクンと頷く。


「こ、このおおおお、人間のくせに、人間のくせにいいいいい!!」デーモンから更なる殺気が溢れる。それだけで小動物は死亡してしまうのではないかという程の凄まじい殺気。ビリビリと地面の小石が震えているようだ。だが、その殺気に負けない気合を入れる健人とケーラ。勝てる。その気持ちが殺気に負けない気持ちを奮い立たせている。


 口がガパアと開く。またあの黒い光だ。健人はまだ肩で息をしていて片膝を付いていて動けない。ケーラが意を決してデーモンに走っていく。「ホーリーナックル」そう唱えケーラの拳が白い光に包まれる。そしてデーモンの顎にアッパーを入れる。


「ブゴロオオ!」黒い光を出す瞬間だったのか、ケーラのアッパーで口を塞がれ黒い光がデーモンの口から溢れる。そしてボゴーンという音と共に、口が爆発してしまう。口を閉じても圧力が凄まじい。大爆風が吹き荒れる。


「うわあ!」その爆風でケーラが飛ばされる。だがすぐにバッと立ち上がり戦闘態勢を取り警戒するケーラ。そしてデーモンを見据える。あの攻撃で倒せたとは思っていない。


 デーモンは下の顎がなくなり、ボタボタと青い血がデーモンの無くなった下顎辺りから滴り落ちる。右半身が健人に切り割かれたまま、そこからも未だ青い血がダラダラそこから流れている。満身創痍に見えるが、まだその縦長の瞳は生気を失っていない。殺気もまだ収まっていない。その表情は明らかに怒りに満ちている。


 割かれた右肩を、無事な左腕でくっつけるように抑えるデーモン。また再生する気だ。


 だが、ケーラに食らった下顎は再生できないようだ。相当ダメージを喰らい体力がなくなってきたので、ホーリーナックルで食らったダメージまでは回復できないのだろう。光属性魔法を食らった方は再生が遅いようだ。


「困った。せっかくタケトが弱らせたのに、また再生しちゃう」


 ケーラが額から汗を流しながら、悔しそうに呟く。健人はようやく落ち着いてきたようだ。リリアムはまだ地面にうつ伏している。気を失っているだけだから大丈夫だろうが。


「はあ、はあ。もう一回行くぞ、ケーラ。今度は二人一緒だ」


 肩で息をしながらケーラに告げる。そしてケーラに耳打ちした。右肩を再生しながら睨み続けるデーモンから目を外さず、ケーラが頷く。


 ふう、と一息つき、ケーラの顔を見る。合図と見て頷くケーラ。


「ウォータースラッシュ!」わざと大きな声で叫ぶ健人。デーモンはその言葉を聞いて、あの水圧のカッターを警戒する。斬り方が横一閃だ。なら、真横に水圧のカッターが飛んでくるはず。そう読んだデーモンが上にジャンプする。


 が、水圧のカッターは飛んでこない。その間に「はああああ!」と気合一閃、ケーラがデーモンのジャンプした更に上に飛んでいた。「ホーリーナックルウゥ!!」叫びながら光の拳を両手で作り、上から両拳を組んで思い切りデーモンの頭を叩きつけた。

「ガアアア!」ボコンとデーモンの頭がへしゃげ、一気に地面に叩きつけられるデーモン。ドゴンと大きな音がして、デーモンが落ちたところがクレーターのように陥没した。


 実はウォータースラッシュはブラフだった。既にエンチャントの水魔法は切れていたのだが、フェイントをかけたのだ。右肩を割かれ左腕でそれを抑えている。なら、横向きに放たれるカッターを避けるとすれば、上に避けるだろうと予想し、ケーラに事前に耳打ちで、ホーリーナックルで攻撃するよう打ち合わせしていたのだった。


 スタっと地面に降りるケーラだが、すぐにガクっと片膝を付いた。


「はあっ、はあっ」息が荒い。魔力が尽きたようだ。


「ケーラ、よくやった」労う健人。健人もまだ息が荒い。ケーラは何も言えず、苦しそうにしながらも笑顔を返す。


 健人は笑顔を返し、それからデーモンを確認しに慎重に近づいていく。そっと陥没した地面を覗くと、デーモンがうつ伏せで倒れていた。シュウシュウと音を立て、紫色の瘴気のようなものがデーモンの頭から立ち昇っている。ようやく倒せたようだ。ホッとする健人。


「疲れた~」そう言って大剣を放り出し、その場で地面に大の字になって仰向けに寝転がる健人。


「たお、せ、たの?」まだ息の荒いケーラが、途切れ途切れになりながら、片膝を付いたままで健人に聞く。


「ああ。間違いないよ」


「そう、か。良かった」はああ~、と、大きな息をつくケーラ。ケーラもようやく安心した様子。


 そして少し休憩し、立ち上がる健人。ケーラもようやく息が落ち着いてきたようだ。


「ケーラ。リリアム頼むよ。俺はデーモンの素材とか確認するから」


「分かった」恐怖から解放されたからだろう、晴れやかな笑顔のケーラ。そしてまだ地面に仰向けで寝ているリリアムのところに向かう。健人は陥没した地面へ降りていこうと下を覗く。


 その時、


「ぐあっ」


 突如激痛が健人を襲う。痛みを感じた箇所を見る。心臓辺りだ。健人の服が徐々に鮮血に染まっていく。そこには、黒い槍のようなものが貫いていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ