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大神官の行方

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m


遅まきながら、ようやく筆が乗ってきた^^;

 リシリーとの一悶着の後、三人は神殿から出てきた。神殿の外の階段の下には、五人ほどの神官見習いとみられる男女が、カインツと兵士達と何か話していた。歳は大体十五~二十歳くらいだろうか。


「タケト。彼らはアヴァンに隷属の腕輪を付けられた者達だ」健人の姿を見たカインツがこの若者達について説明する。


「僕達突然腕輪が外れて、何事かと思ってとりあえず神殿にやってきたんです」健人達の姿を見て、その中の一人がここにいる理由を話す。


 そして、皆で顔を見合わせ、頷いたかと思うと、「洞窟ではすみませんでした」と声を揃え、5人全員が健人達に頭を下げた。どうやらリシリーと共に、洞窟入り口の上から、健人達三人を攻撃したのは彼らだったらしい。


「気になさらないで。命令されてやらされていたのだから。これからは、神官の方々、特にグレゴー様に尽くしてね」


 その様子を見て、超絶美女スマイルでリリアムが彼らに優しく語りかける。あ、その振る舞いに男の子達がぽーっと見惚れてる。


「そうだよ。ボク達は気にしてないから。これからもっと良くなるように頑張って」


 そう言って超絶美少女スマイルを返し、神官見習いの男の子の肩をポンと叩くケーラ。あ、その気さくな感じに、そっちもぽーっと見惚れていますな。


 ……こんな美女二人といつも一緒にいる俺って、実は相当幸運なんじゃないか? 今更その事に気づく健人。真白の事しか頭になくて、他の女性には興味なかったので仕方がなかったのだが。


 なら、今は違う、という事なのだろうか。


「君達は一旦神殿の中に入って、グレゴー様の指示に従ってくれ。リシリーという神官見習いも中にいる」神官見習い達にそう声をかけ、彼らを神殿の中に促すカインツ。全員従って神殿の中に入っていった。


「さて、これから後片付けだが」カインツが健人に向き直る。


「化け物の処分は我々がする。孤児院の修繕は神殿が対応するだろう。そうだ。ギルドに説明に行かないといけないな。それと、ガームズとかいう、逃げた受付の神官の行方も気になるしな」


 そう言って一息ついて、神妙な顔つきになるカインツ。


「だが、それより、もっと重要な事なのだが、ここの責任者、大神官殿がいないのだ」


 ※※※


 確かに、これだけの大きな組織なら、各都市の神殿に責任者がいて当然だが、これだけの悪事を働いている者達を放置している責任者と言うのは、一体どんな人物なのだろうか?


「各都市の大神官は、基本メディーにある神殿の中心地、本殿にて選定されるのよ」仕組みをよく知らない健人とケーラに、リリアムが説明してくれている。


「グレゴー様は、大神官の一つ下の役職、大神官補佐みたいね。大体各都市の神殿には五十人から二百人の神官が働いているの。アクーは大きな都市だから、二百人はいるんじゃないかしら。そのうち光属性持ちは十人くらいと思うわ」


「じゃあ、残りはリシリーみたいな見習いって事か」


「そうとも言えないわ。リシリーのような孤児出身者だけじゃないもの。一般の領民が神官のお手伝いをしている事もあるのよ。例えばクリスタルの仕入れは、ギルドや魔法屋で仕入れる必要があるでしょ? そういう交渉が得意な領民が、神殿専属で神官となって勤める場合もあるのよ。そういう人は見習いではなく、ある程度の出世をしているわ」


 因みに魔法屋とは、クリスタルや魔法を売っている店の事である。冒険者ではない一般の人々がクリスタルを仕入れるには、この魔法屋かギルドで購入するのが、この世界の通例だった。また、魔法屋には、魔法の使い方の教本も売っている。この教本は、生活魔法の使い方だけでなく、戦闘で使う魔法の使い方まで覚える事が出来る。なので、魔法を主体とした冒険者などは、この教本を買って、独学か、または先輩に教えて貰いながら使い方を覚えたりしている。ただ、リリアムのような、ある程度身分ある王族や貴族の場合は、各都市にある魔法学校にて、攻撃魔法の使い方を学習している事が殆どであるのだが。


 だが、健人の場合、冒険者として活動している間、クリスタルは魔物討伐で自分で獲得していたし、魔法の使い方は、生活に必要な最低限の魔法はヌビル村でダンビルから習っていたので、魔法屋には全く縁がなかった。必要なかったのである。


 更に、今はパーティメンバーにリリアムがいる。治癒魔法が使える彼女がいれば、怪我などしても困らない。そもそも健人は(無)なので、クリスタルを使ったエンチャント魔法は使っても、魔法そのものを主体とした戦闘を一切使わない。エンチャント魔法の使い方は、ヴァロックとゲイルから教えて貰っている。なので、健人にとっては全くと言っていいほど縁のない類の店なのである。


 そして一応健人は、以前ヌビル村からアクーへの道中の際、ベルアートに借りて読んだ本のおかげで、知識として魔法屋の事は知っていた。一度も行った事はないが。


「で、アクーの大神官なのだけれど……」急に言いにくそうにするリリアム。


「リリアム様にご執心だったのだよ」


 困った表情のリリアムの代わりにカインツが口を挟む。カインツを見つめその言葉に頷き、大きくため息をつくリリアム。


「本当にひつこい人でしたわ。何度もお断りしたのに。時には待ち伏せまでされた事もあったのよ。ただ、彼の場合、私が王女だという立場である事も、私に拘っていた理由の一つだと思うの。王族からの枝分かれで構成されている神官が、直系の王族と結ばれる事で、より一層箔がつく。そうなると、自身の出世に大きく影響するだろうと、画策していたと思うわ」


 知らなかった。リリアムにそんな事があったとは。まあ確かに、リリアムほどの美女であれば、そういう面倒な事に巻き込まれていてもおかしくはなさそうだが。他にも沢山縁談はありそうだし。そう言えば、自分はリリアムの過去を一切知らないなあ、と、今更ながら思う健人。


「で、どんな人?」ケーラが不躾にリリアムに質問する。


「……気持ち悪い人」リリアムが顔を曇らせる。説明するのさえ嫌そうだ。


「俺から説明しよう」そこで気を遣ったカインツが間に入る。


「見た目は、まああれだ、よくもまあ、あれだけ太ったなあという体型だ。肥満体というやつだ。歳は確か三十代半ば。白い髪色で二重あご。ただ、大神官だけあって光属性持ちの中では相当魔法が使える。治癒魔法も攻撃魔法もな。そして好色家だ。()()の性欲は底なしだろうな」そう言って肩を竦める。


「たまに神官を女関係の犯罪で捕まえる事があるが、大神官の身代わりとして捕まった神官も少なからずいる。だが、それを知っていても、我々も中々尻尾を掴めず困っていたのだ」


 トップからしてアクーの神殿って腐った組織だったのか。話を聞いて呆れる健人。だが大神官だけあって、光属性魔法は名前に恥じないだけの実力はあるって事らしい。それがメディーの本殿の選定によって、アクーの大神官として選ばれた理由なのだろう。それにしても、人格は度外視の人選なのだろうか? 


「そんな奴に好意寄せられてたなんて、さすがに同情するよ」カインツの説明を聞いて、さすがにケーラもリリアムを哀れんでいる様子。


「そうね。正直顔を見ても悪寒しか走らなかったわ。あの男のせいでアクーに来るんじゃなかったって何度思った事か」何かを思い出したようで、自分の体を両手で抱きしめ、体を震わせるリリアム。


「それでも、今は別の理由で、アクーに来て良かったと思ってるのだけれど」そう言ってチラっと健人を見て、すぐにニコっと微笑む。健人によってリリアムのアクーに対するイメージは良くなったのよ、そう言いたげに。


「でも、その大神官を探さないと、今回の件の本質って分からないから、これから探さないといけない。リリアム。嫌なら無理しなくていいんだぞ? 何なら今回、外れてくれてもいい」リリアムの笑顔はともかく、話を聞いて彼女を気遣う健人。


「タケトさんって本当、いつも優しいわね」微笑みながら見つめるリリアム。ちょっとドキっとしてしまう健人。やっぱり美人です。


「大丈夫よ。寧ろ、今回の件に関わっているなら、遠慮なく攻撃出来るわ。これまでは大神官という事で、私は一切手出し出来なかったんだから」そして今度はフフフ、と低い声で不敵に笑うリリアム。ちょっと怖い。


「そうか、分かった」リリアムの気持ちを確認して、すぐに、「と言うわけで、これから俺らで大神官を探してみます。ギルドにはその後に行きます。ガームズとかいう神官も探さないといけないですけど、優先順位は大神官だと思いますので。カインツさんは化け物の処分だったり後片付けがあるでしょうから」と、カインツに自分達のこれからの予定を伝える健人。


「ああ。宜しく頼む。今のタケトなら何が出てきても負けないだろう」ポンと肩を叩いて微笑むカインツ。


「本当に強くなったな。マシロも早く元に戻せるといいな」そう言って手を上げてじゃあな、と挨拶し、化け物の処理をしている兵達の元に走っていった。


 ヌビル村で試合して貰った時は手も足も出なかったカインツに、強くなったと言って貰った。つい嬉しくなる健人。今更ながら、自分が冒険者として普通にやってる今の状況が信じられなくなったりする。ただのフリーターだった前の世界の自分が、今の自分を見たらどう思うだろう?


 そしてふと、二人の美女を見てみる。そういやこんな美女二人に囲まれて毎日を過ごすって、これも前の世界ではあり得なかっただろう。そしてこの世界では重婚はよくある話らしい。ギルド長のロックには奥さんが3人いると知って驚いた健人である。


「どうしたの?」「ボクに見惚れた?」見つめる健人に、それぞれ言葉をかける二人。


 違う反応の二人がおかしくて、フフっと笑い、何でもないよ、と返す健人。考えてみればこの世界の自分は幸せかもな。


「なんだか気になるわね」「ねーねー、何なの? 教えてよ~」ジト目で見るリリアムに健人の腕を引っ張るケーラ。それをあしらいながらも、やっぱりこの場に真白がいて欲しい。彼女がいないのは、まだ自分の本当の幸せではない、とも思っていたのだった。白猫はいるのだが。まだカバンの中でスヤスヤ寝てるっぽい。


 という訳で、これからその大神官をこれから捜索しないといけないのだが、まずは手がかりからだろう。逃げてしまったガームズも見つけたいが、手分けして探すべきかどうか。


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