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ハーレム化回避? 

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

「よし。とりあえずもう大丈夫だろう」


 既に化け物は倒したので、危険はないだろうと判断したようだカインツがそう言って、逃していた人々を呼び戻すよう兵達に指示をし始めた。


 そして一旦落ち着いてから、グレゴーに改まって話しかけるカインツ。


「グレゴー様。何があったか説明して頂きたい」


「そうだな。何処か落ち着けるところで話したいのだが、神殿の中はどうだ?」


「カインツさん。俺達も一緒に行っていいですか? 依頼貰っていた身としては、詳細を知りたいのですが」


 分かった、と健人の依頼をカインツは了承し、皆で神殿の中に入り、応接室に向かった。リシリーも一緒だ。


 応接室は以前真白と来た時に、グレゴーと話した時に使ったところと同じだった。特に装飾のない、質素な大きめの木のテーブルが真ん中に置いてあり、その周囲に八個椅子が等間隔に並べられている。部屋には絵が飾られているわけでもなく、殺風景だ。入り口のそばには一輪指しが置いてあるが、装飾と言えばそれくらいの、本当に何もない部屋。


 そこで各々着席し、まずは孤児院の裏手から聞こえた爆発について、オホン、と一つ咳払いし、説明し始めるグレゴー。


「多分お主達が来たからだろう。受付の者が慌てふためいてアヴァンを探しに行くので、不思議に思って後を付けたのだ。すると、神殿の裏手の、隠し扉のような扉を開き、中に入っていくではないか。怪しいと思い気付かれないように入っていったのだが、どうやら隣の孤児院と繋がっている地下道のようだった。そしてそこには儂も知らない部屋があった。気づかれないようこっそり中を覗いたら、中には孤児達がいるではないか。そしてアヴァンと受付の者が二人、ギャーギャー喚いておった。詳しい内容までは聞き取れなかったが、その会話の中で孤児達を全て殺すとか、縁起でもない言葉が聞こえてきてな。たまらず踏み込んだのだ」


 ふう、と一息ついて、話しを続けるグレゴー。


「儂が入ってきて二人は大層驚き、光魔法でいきなり攻撃を仕掛けてきたのだ。咄嗟に避けたはいいが、背後の壁に魔法が当たり、爆発したのだ」


 孤児院裏での大きな音は、アヴァン達がグレゴーに放った光魔法だったようだ。


「それからアヴァンがおもむろに剣を取り出し、儂に攻撃してきたのだ。避ける事が出来ず刃を受けてしまった。受付の、ガームズは悲鳴を上げながら逃げてしまった。その時、タケト達が反対側の扉から入ってきたのだ」


 受付の中年の白服の男はガームズと言うらしい。


 なら、あの中年の、嫌らしい目で真白を見た、ガームズとかいう神官を探せば、手がかりが見つかるかも知れない。あいつもグルだったみたいだ。まだ手がかりは掴めるかも知れない。


「グレゴー様は、私の隷属の腕輪を何度も外そうと言って下さったのですが、私が拒否したのです。外せば当然見つかりますから、外した人をアヴァンさ、アヴァンは探すでしょう。そうなったら、グレゴー様にも危険が迫ってしまう。せっかくここの神殿を改革なさろうとしているお方が、自分のせいで危険な目に合わせる訳にはいかない。それは、他の神官見習い達も同じでした」


 リシリーがグレゴーの話に入って、アヴァンに()付けをせず、自身や他の神官見習い達が、隷属の腕輪を外せなかった理由を説明する。光属性持ちのグレゴーがいる神殿で働いていれば、隷属の腕輪をすぐ外せるはずだったのに、それをしない理由が分かった健人達。


「そう言って頑として聞かないので、なら、せめてアヴァンから守ってやろう、そう思ってあやつがリシリーに余計な事をしようとするのを、あれこれ妨害しておったのだ。勿論、リシリーだけではないぞ。他にも数人、元孤児の神官見習いの中に、隷属の腕輪を付けられた者がいたから、そやつらも同じく、儂の出来る範囲で、無茶な事をさせないよう、気を付けておったのだ」


 リシリーがグレゴーの話に頷く。


「だが、孤児達にまで手を出しているとは。気づけなくてとても残念だ。あやつらも辛い目にあったろうに。あやつらは守ってやれんかった」


 神官見習い達だけではなかったのだ、と、グレゴーが悔しそうに唇をかみしめている。


「でも、今はもう隷属の腕輪は外れましたし、主従関係だったアヴァンはもういません。これからの事を考えましょう」健人がグレゴーを慰める。グレゴーは何も悪くない。悪いのは孤児達を貶めたアヴァンやその協力者達だ。


「ところで、アヴァンみたいな輩は、他にもこの神殿にはいるとお思いですか?」そこでカインツが質問をする。


「残念ながら、大抵の神官は何かしら悪事を働いておるだろうな。今までは領主様も手を出せなかっただろうが、今回の件で徹底的に調べる事が出来る大義名分が出来た。ある意味膿を出し切るいい機会だと思う。カインツ殿。徹底的に調べて貰いたい」そう言って頭を下げるグレゴー。


「頭をお上げ下さい」恐縮するカインツ。「でも、確かに仰る通りですな。我々もこの機会を無駄にはせず、悪事を暴きたいと思います」


「ああ。宜しく頼む。儂も出来る限り協力する」再度深々と頭を下げるグレゴー。もうこの人、有る意味人格者だな。ヌビル村に来た時のあれは他人だと思うようにしよう。白いオッサンという別人だったという事にしよう。そうする事にした健人だった。


 話を終えて、それから健人達三人は一旦ギルドに戻る事になった。カインツは兵達と共に、元アヴァンだった化け物の処分をするらしい。知らない魔物? 化け物なので、素材が使えるかどうかは分からないが、何か使えそうなら、健人達に売った取り分をくれるとの事だ。クリスタルの確認も一応するらしい。元人間だから余り期待はしていないが、その作業をやってくれるだけでもありがたいと、三人は思っていた。今は化け物とは言え、元人間の腹をかっさばいてゴソゴソするのは、さすがに嫌だったのだ。


 グレゴーに別れを告げ、神殿から出ていこうとした時、健人は不意に呼び止められた。ケーラとリリアムに神殿の外で待っているよう伝え、振り返って声の主の方に向かう。


「あ、あの。タケト様。この度は色々有難う御座いました」分かっていたがリシリーだ。思いつめた表情をして健人にお礼を言う。


「いえいえ。これからも神殿でのお仕事、頑張って下さい。グレゴーさんを支えてあげて下さい」リシリーの様子を気遣ってか、笑顔で答える健人。


「あ、あの。私にも、私にも、タケト様のお力になれる事がありますでしょうか? ケーラ様やリリアム様のように」


 何かを懇願するように、必死な表情で訴えるように質問するリシリー。


「……」


 その言葉の意味は分かっている。だが、健人にはその気はない。


「俺、既に恋人がいるんですけど、とある理由で今は会えないんです。自分が冒険者やってるのは、彼女に会うためなんです」嘘は言っていない。紛らわしい説明を省くための方弁は多少織り交ぜたが。


「そう、だったんですか」明らかに落ち込むリシリー。彼女がいたというのは初耳だ。健人の話を聞いたからか、目にはうっすらと涙が溜まっているように見える。


「ケーラやリリアムも、俺の恋人とか、そういうんじゃないんです。それぞれ目的があって一緒に行動しているだけです。リシリーさんが、もし彼女達みたいに役に立ちたいというなら、彼女達くらいに強くないといけない。でもそれは多分無理だと思います。だから、リシリーさんが頑張れるところで、頑張って下さい」


 光属性持ちで元勇者メンバーアイラの妹、魔力は膨大に持っているリリアム。闇属性持ちで魔族、健人やリリアムと共に修業を重ね、相当強くなったケーラ。この二人と肩を並べるのは、属性のない、ほぼ素人のリシリーには相当厳しい。だから敢えて無理だという事を、親切心で遠まわしに伝える健人。


 そしてあの二人じゃない、自分の知らない誰かが彼女だと言った健人。そしてその人に対する想いは強いようだ。厳しい現実を理解し、グスっと鼻をすするリシリー。


「そう、ですね」寂しそうに呟くリシリー。「でも、あの、また神殿には寄ってくれますか?」


「機会があれば。でも、これから他の都市を周る予定なので、相当先になります」


 期待はさせない。


「じゃあ、二人が待ってるので。お仕事頑張って下さい」


 そう言って去ろうとした時、ジャンプ一番、急に首に飛びかかって抱きついてきたリシリー。抱きつかれてびっくりして「おおっと」と体勢を崩す健人。いきなりの事で反応できない。「グエ」と腕で首を絞められ、変な声が出てしまう。そして一瞬の隙をつかれ、強引にキスされてしまった。


「これくらいは許してよね! じゃあねタケト! 私の初恋の人」


 急に言葉使いがフランクになり、踵を返して神殿の奥に走っていくリシリー。頬を伝う涙はそのままに。


 一方突然の事でその場に尻もちをついたまま、ポカーンとしている健人。今までの丁寧な言葉使いは猫かぶりだったっぽい。あれが素のリシリーだとなんだろう。


「……この世界の人間は、いきなりキスするのが流行りなのか?」リリアムもケーラもそうだった。そういや真白もだった。


「……モテるね。ほんっと、モテるね。あーイライラする!」「私も久々にイライラしたわ。このスケコマシ」


 「!」いないはずの二つの影を見つけてびっくりする健人。いつの間にか、仲間の美女二人が仁王立ちして地面に座り込んでいる健人の側に立っていた。二人とも一部始終を見ていたらしい。美女二人はジト目で健人を見ている。凄い威圧感があります。ちょっと殺気? が漏れている気がしないでもない。


「スケコマシって。俺何もしてない。ひどくないか?」リリアムにキツい一言を食らい、ちょっと泣きそうな健人。


 そりゃ、男なんだからリシリーみたいな美女に好意を持たれて嬉しくないわけはない。だが、俺には真白がいる。真白だけで十分なのに、更に今は超絶美少女のケーラまであれこれ迫ってくる。更に、何もしないがリリアムだって超絶美女なのだ。この二人が普段ずっと一緒なのだ。これ以上は理性が保てるかどうか自信ないのです。勘弁してほしいのです。


「ねえ。リシリーがもしついてくるって言ってたらどうしたの?」ふとケーラが気になって聞いてみる。


「断っただろうな。よほどの理由がない限り」


「私達だけで十分って事なのかしら?」


「そうだな。それに、何だかんだ言って二人といるのは楽しいしね。だからこれ以上は要らないかな」


「「!」」その言葉に、二人揃って顔を真っ赤にしている。自分達といて楽しい。その言葉が嬉しい二人。


「こ、言葉だけじゃ信じない! そうだ。明日デートしようよ?」唐突過ぎるケーラの提案。


「何でやねん」そりゃツッコミます。


「あ、そうだわ。私お買い物行きたいの。一緒に行って下さらない?」リリアムもチャンスだと思いケーラの提案に乗る。ちょっとドキドキしながら。


「……まあ、買い物なら別にいいよ」


「え? 宜しいの?」


 自分で言っといて貰ってびっくりしているリリアム。そして思いがけない健人のOKに、小さくグッと握り拳を作る。


「ちょ、ちょっと待てーい! ボクも買い物行くよ!」必死だ。コレ以上ないほど必死なケーラ。


 その様子がおかしくて、つい笑ってしまう健人。


「アハハ。わかったよ。じゃあ明日は買い物行こうか」


 因みにリシリーのキスからのやり取りの間、白猫は疲れていたらしく、ずっと健人のカバンの中で寝ていましたとさ。







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