表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/241

猫覚醒?

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m


台本のセリフみたいな書き方が中々直らない><

難しい・・・・・・。


「ウニャアア!」突然猫の鳴き声が聞こえたかと思うと、白猫は柔らかい肉球で魔薬をキックし、健人の顔に当たる寸前で蹴り返した。そして空中でくるりんと一回転し、スタっと健人の頭の上に着地した。ドヤ顔で。猫だから表情までは分からないけど、多分ドヤ顔で。


「え?」びっくりする健人。何が起こったか分からない。


 アヴァンもまさか、投げた魔薬が自分に返ってくるとは思っていない。飛んでくる魔薬を躱す事も出来ず、そのままアヴァンの顎の下の首筋に当たった。破裂してブシャアと紫の液体のようなものが溢れ出し、当たった部分から、紫色のタコの手足のようなものがアヴァンに張り付いていく。


「う、うわああああ! 助けて! 助けてくれえええええ!」絶叫するアヴァン。叫んでいる間も徐々に浸食していく魔薬。それを一生懸命掻きむしるように取り除こうと必死になるアヴァン。だが、その甲斐虚しく、首筋から腕にかけて、徐々に体が紫色に変わっていく。


 一方健人は、眼の前で化け物に変わっていくアヴァンを見つつも、死ぬ覚悟を決めた後の、白猫の一連の行動に呆気にとられ固まっていた。猫になってからずっと健人に無関心だった白猫。それがこの土壇場で、まるで自分の意志があるかのように、健人を危機から救ってくれたのだ。


「真白、もしかして、意識が戻ったのか?」期待しつつ震える声で、頭に乗っている白猫に話しかける。


「にゃーん?」だが、健人の言葉の意味を理解していない様子で鳴く白猫。今は何事もなかったかのように自分の前足をペロペロ舐めている。健人の頭の上で。


「タケト! とにかくその子達を何とかしないと!」健人が白猫の事を考えていると、向かい側にいるケーラから激が飛んだ。


「あ、ああ。分かった」ハッとする健人。白猫の事が気になるが、とにかく今は現状を何とかしないといけない。ひとまず孤児達とグレゴーを避難させる事を優先する。頭上の白猫をそっと抱っこし、肩からかけているカバンに入れた。


 その間にも元アヴァンだったものは、徐々に歪な形をして膨れ上がっていく。ただ、以前劇場裏で中年のオッサンが変化したような、単なる紫の醜い塊ではなく、手足と顔は残っていて、そのまま大きくなっていくように見える。その顔は苦悶の表情を浮かべ、低い声で「グロオオオオ」と唸っている。


「グレゴーさん! 大丈夫ですか?」気持ちを取り戻した健人がグレゴーに駆け寄り、手を差し伸べる。その手を受け取って立ち上がるグレゴー。


「ああ、何とかな。しかし、妙なところで出会うものだ」緊急事態だがつい不思議な縁を感じて笑ってしまうグレゴー。健人も同意見だが、とにかく膨れ上がっていく元アヴァンから、孤児達とグレゴーを避難させないといけない。


「タケトさん! こっちへ」自分達が来た道を指差しながら健人に声を掛けるリリアム。健人は頷いて、グレゴーと孤児達を、自分達が入ってきた扉に誘導した。


 その時、「ギャオオオオオオ!!」と大絶叫が部屋中に響き渡る。危険を感じて振り返ると、元アヴァンだったそれは、既に部屋一杯になるくらい膨れ上がっていた。膨張は止まるどころかどんどん進み、腕が部屋の壁まで到達する。ミシミシと部屋の壁が音を立て、元アヴァンの肉体が部屋を破裂させんばかりに膨らんでいく。


「一旦部屋から退避だ!」孤児達とグレゴーを先に行かせた後、三人は急いで部屋から出る。元来た階段を急いで駆け上がる。部屋を出たと同時に、ゴゴゴゴと大きな音が聞こえた。部屋は完全に崩れたようだ。


 そして礼拝堂のような大きなホールに出る。ここもダメージに耐えきれないようで、あちこちからミシミシと音が聞こえ始めている。天井からパラパラと瓦礫が堕ちてくる。健人達三人は、急いで孤児達とグレゴーを孤児院の外に誘導する。


「走れ! ここももうすぐ崩れるぞ!」健人が大声で皆に声を掛ける。孤児達とグレゴーは走りながら外に逃げ出す。リリアムとケーラも急いで外に出て、最後に健人が出た瞬間、ドドーンという大音響と共に、孤児院が上から押しつぶされたようにぺちゃんこに崩れた。


 その大きな音に、周辺を歩いていた人達や、近所の家の中にいた人々が、何事かとわらわら集まってくる。


「あんなデカくなるのか」人々が集まってきたのを気にせず、健人が孤児院の方向を見上げ、呆気にとられている。


 崩れ落ちた孤児院の上に、元アヴァンであろう物の姿があった。既に人間だった面影は全く無い。体長は10mはありそうな巨大な魔物だ。紫の体毛に覆われ、顔は猿のように平面顔で、鼻の穴と耳が大きく、白い大きな牙が上向きに覗いている。足は短く腕が長い。大きな鼻の穴から息がシュコーシュコーと音を出しているのが聞こえる。まさしく見た目がゴリラだ。紫色の。


「うわあああ! 化け物だああ!」「キャアア!」化物に気づいた人々がパニックになり、散り散りに逃げ出し始める。


 外で待機していたカインツと兵士達も、その大きなゴリラの化け物に驚いていたが、「人々を避難させろ! 出来るだけ遠くに!」と、カインツが気を取り直して兵士達に指示を出す。カインツの声を聞いた兵士達が我に返り、人々を孤児院と神殿から離れるよう誘導する。リシリーは崩れた孤児院から出てきた孤児達に駆け寄り、同じく離れるよう誘導している。


「グレゴー様!」そしてリシリーが孤児達と一緒にいるグレゴーを発見し声を掛ける。


「おお、リシリーか。無事だったか?」自分が危険に侵されていたのに、リシリーを気遣うグレゴー。


「はい。腕輪もこの通り外れました」そして右腕を見せ、笑顔になるリシリー。グレゴーもその様子を見て微笑む。そして二人も孤児達と共に、一旦この場所から避難した。


「タケト、あれは何だ?」兵士達に指示を出し終え、パニックになっていた人々を誘導し終えたカインツが、驚愕した面持ちで質問する。


「あれはアヴァンという神官の成れの果てです。魔薬のせいでああなったんです」そう説明しながら、大剣を化け物に向け構える。能力を開放し、臨戦態勢を取る。


 カインツが何か言いかけた時、突如化け物の方が、健人の眼の前に飛んできた。ズドーンと大きな音を立て着地する。着地した地面がその重さで陥没する。巨体なのにかなりのスピードだ。


「グオオオオ!」大きな咆哮と共に胸を自ら思い切り叩いてドラミングする化け物。そしてグッと握り拳を作って健人に殴りかかった。健人の隣りにいたカインツは咄嗟にバックステップで下がり、そして健人はその拳を大剣の腹で受け止め、体全身で止めた。健人の足から土煙が立ち上る。


「グオオワ?」避けもせず、まさか受け止められるとは思っていなかったらしい化け物。驚いた顔をしている。続けてアッパーを健人に振るう。が、それをサイドステップで躱す健人。


「タケト一人にやらせないよ!」少し離れたところから、健人と化け物の攻防を見ていたケーラが、ゴリリという音を立ててナックルを握り直し、ゴリラの化け物と化したアヴァンに突撃する。「うりゃああ!」気合一擲、健人の横から飛んでいきながら、正面からナックルを顔面に振るう。が、それを咄嗟に腕をクロスにして遮ぎるゴリラの化け物。そしてそのまま腕をブンとふるい、ケーラを吹き飛ばす。


「うわ!」叫びながら飛ばされるも、ゴロゴロ回転して勢いを殺し、受け身をとって難を逃れるケーラ。


「今度は私の番ですわ」同じく離れた場所に居たリリアムが、「ホーリーレイン」を詠唱する。ゴリラの化け物の上空に雲が現れ、聖なる雨が降り注ぐ。だが、ニヤリという表情? をしたゴリラの化け物。なんとホーリーレインが全く効かない。


「な、なぜ?」驚くリリアム。


「多分元神官だからじゃないか?」健人が大剣を構えながらリリアムに声を掛ける。


 健人の言う通り、元アヴァンことこのゴリラの化け物は、神官であったために、ホーリー系の魔法に免疫がある。以前舞台裏で戦った中年のオッサンの時とは違い、ホーリー系の魔法が効かないのである。


「じゃあ、闇だね!」ケーラがそう言いながら、「シャドウスプラッシュ」と唱える。ケーラの足元の影から、沢山の黒い水飛沫がゴリラの化け物の上空辺りに飛んでいく。そして重力そのままに、ゴリラの化け物に降り注ぐ。「グオアア!」水飛沫なのに、まるで小石のようにガン、ガンと、当たっているところから音が鳴る。痛そうにしているゴリラの化け物。ダメージはあるようだが、決定打に欠けているようだ。


「こいつ物理攻撃は効くみたいだ」以前舞台裏で戦った中年のオッサンとは質が違うようだ。


 次は健人が構える。「ファイアエッジ」炎の大剣を作り出し、大剣を斜め下に構えながら、ゴリラの化け物に走っていく健人。


「はあ!」そして上から振りかぶり、ゴリラの化け物に振り下ろす。それを真剣白刃取りの要領で受け止めようとするゴリラの化け物だが、ファイアエッジで炎に包まれた大剣が熱く燃え盛っていて、素手で受け止める事が出来ない。反射的に手をのけてしまい、そのままゴリラの化け物は頭部に大剣を食らってしまった。


「グルアアアア」痛みで苦しむゴリラの化け物。「下に重力をかけるイメージだ」健人がそう呟いた途端、グンと一気に頭部から大剣がめり込み、地面まで一刀両断にした。


「グギュ、ギョ、ギョヴォフォ!」顔を半分切り裂かれ、叫び声のようなそうでないような咆哮をあげ、ズドーンと大きな音を立てて、前のめりに、元アヴァンは倒れた。


 切り口からは紫色の瘴気のような、煙のようなものがモクモクと上がっている。「ふう」と一息ついて、血糊のついた大剣を片手でブンと振り、背中に背負っている鞘に収めた。


「……本当にあのタケトなのか?」明らかに強い。カインツがヌビル村で見た、戦闘未経験の若者とは全く違うと言ってもいいほど、強くなっていた健人に驚くカインツ。多分自分ではもう勝てないだろうとも思っていた。


 結局倒してしまった。残念そうな健人。本当は色々情報を聞き出したかった。だが、不意に自分に魔薬で攻撃されてしまった。それを反撃したのは白猫だったが。そして化物になってしまったから、理性は残っていないだろう。倒すしかなかった。仕方ないと言ってしまえばそうではあるが。そして元、人である。化け物になったとは言え、以前の劇場裏のオッサンもそうだが、人を殺めるのは余りいい気分では無かった。


 すると、孤児達の方から、パキンパキンと、何かが壊れる音が聞こえた。アヴァンが死んだ事で、隷属の腕輪の効力が切れたようだ。驚きと共に一斉に喜ぶ孤児達だった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ