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真実に近づきつつあるが

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m


以前ご指摘頂いた点、少しずつ直していこうと努力していますが、

まだまだ至らないかもしれません><

読みにくくて申し訳ないです。

「グレゴーさん!」その様子を見た健人が叫ぶ。


「おお。その声は。タ、タケトか」ウググ、と苦しそうに唸りながら健人の顔を見るグレゴー。


 部屋は二十畳ほどの広さだろうか。レンガ造りになっていて結構広い。グレゴーは壁に上半身を預け、腹の辺りを抑えて苦痛に顔を歪めている。それに対峙するように、ブロンドの短髪の二十代くらいの若い男が、紫の玉を片手に持って、今にもグレゴーにぶつけそうな様子で構えている。もう片方の手には血糊がついた剣だ。グレゴーを斬ったのだろうか。


 対峙している二人の更に奥には、小さい子は4歳くらい、最年長で十五歳くらいの、十人ほどの子ども達が、、皆三角座りをして怯えた様子で蹲っている。


「……隷属の腕輪だ」ケーラの顔が歪む。比較的大きい何人かの女の子の腕には、木の腕輪がついていた。


「あなたがアヴァンね」リリアムが紫の玉を持つブロンドの短髪の男に声をかける。


「ああそうだよ。しかし、へ~え?」グレゴーから視線を外し、リリアムを見て嫌らしい顔でニヤニヤ嗤うアヴァン。その視線に寒気を感じ、つい健人の影に隠れるリリアム。


「そっちのは魔族? 珍しいな。しかし二人ともいい女だな」ギヒヒという、人の物とも思えない下卑た嗤いで、次にケーラをいやらしい目で見るアヴァン。


「気持ち悪い。あんた魔族の悪人より気持ち悪い」ケーラがべー、と舌を出す。


「それより、なんであの子達、隷属の腕輪してんの?」キッと睨んでケーラがアヴァンに問いかける。


「俺がつけたからに決まってんだろ」


「何のために?」


「そりゃあ、俺の物にするためだよ」そう言いながら一旦剣を自分の体に立てかけ、突然「ホーリーランス」と唱え、手から光の槍を出してケーラに飛ばした。しかし咄嗟にそれを健人が横から大剣の腹で防いだ。ギインという金属音に似た摩擦音が部屋に鳴り響く。


「じゃあ、リシリーさんとか他の人に隷属の腕輪をつけたのはなんでだ?」今度はホーリーランスを防いだ健人がアヴァンに質問する。


 ほお、あれを防ぐのか、そう感心しながら説明するアヴァン。


「隷属の腕輪をくれる代わりに、人間を貸してくれって言われたからだよ。あいつら自身が隷属の腕輪を使って、人族を奴隷にすると自分達の素性がバレる。それは困るってんで、あいつらの協力者になってたんだよ」


 そして話しをしながら再び剣を取り、ブンと振り払って血糊を掃い、剣先をグレゴーに突きつけるアヴァン。3人の顔に緊張が走る。グレゴーは光属性持ちなので、治癒魔法が使えるはずだが、それを使わせまいとアヴァンが睨みを利かせている。アヴァンを睨みながら、苦しそうに赤く染まった腹を抑えているグレゴー。


 そんなグレゴーを一瞥しながら、話を続けるアヴァン。


「あいつら魔族は、アクーの街中で手足のように使える人族が欲しかった。魔族の姿で行動するにはアクーでは目立つからな。俺はあいつらの企みの協力者って事だ。俺はいい女を言いなりにしたいから隷属の腕輪が欲しい。あいつらは人族の協力者が欲しい。お互いの利害が一致したって事さ」


「お、愚か者め。お前が何をやったか分かっておるのか」苦悶の表情でグレゴーが窘める。


「ふん。あんただって元は俺達と同じだったじゃないか。それがヌビル村から戻ってきたら、まるで人が変わったように、俺達に説教するわ、邪魔するわ。ほんと何様だよ? 俺達神官、特に光属性持ちはもっと崇められ讃えられる存在なんだ。光魔法で下民どもを治療してやる筋合いはないんだよ」


 そう言ってグレゴーを睨み返すアヴァン。その言葉を聞いて、健人の後ろから姿を現したリリアム。その表情は怒りに満ちている。


「その言葉、お父様が聞いたらどう思うのかしらね」


「お父様?」訝しがるアヴァン。お父様という言い方が気になるアヴァン。そして再度リリアムを注視して、ようやく誰か気づいたようだ。


「まさか、リリアム王女なのか?」驚くアヴァン。


「ええ、そうよ。神官の問題は以前から聞いていたけど、あなたのように腐った者がいるとは。ここまでひどいとは思っていなかったわ。この件、私が知ってしまったからには、このまま放置できないわよ」


 チィ、と舌打ちするアヴァン。


「まさかあんたみたいな王族、しかも王女様と、こんなとこでこんな場面で会うなんて。俺も運が悪い」


「知ってるわよね? 私のお姉さまが誰か。そして、その夫が誰かという事も」


 元勇者メンバーであり、ここの領主、ゲイルとアイラ。リリアムがこの事を知るという事は、彼らにも情報が共有されるという事。そして、万が一アクーの中でリリアムに何かあれば、この二人が動かないわけはない。


 今までうまく伯爵と距離を取っていた神殿側だが、ここにリリアムがいる時点で、この事件が明るみに出るのは時間の問題だ。


 とにかくグレゴーが気になる。アヴァンにジリジリと詰め寄る健人達三人。一方額に汗を滲ませ、グレゴーと健人達双方を睨むアヴァン。


「なあ。王女様。俺達神官はあんた達と等しく高貴なる者のはずだ。下民どもの病気や怪我の治癒をやってるなんて、プライドが許さないと思わないか? 下民どもは俺達神官を崇めはしても、俺達が使われる身であってはいけないんだ。そう思うだろ?」


「思いませんわ」強い口調ではっきり否定するリリアム。アヴァンを見つめるその視線は鋭く、冷たい。


「下民? それは一体誰の事です? 私達王族は、ここの領民を含め、全ての人族の皆様のおかげで、王族でいられるのです。領民の皆様を見下すなんて、畏れ多くて出来ません。彼らは私達を王族として敬ってくれますが、だからといって私達が偉いというわけではありません」


 額から汗が一筋流れるアヴァン。黙ったままリリアムを見つめ、話を聞いている。


「私達王族は、この世界の人族の皆が平和に暮らせるよう、皆を守る使命があります。そのために教育を受け、私のように時には冒険者として自らを鍛え、そして不測の事態になった時、矢面に立って人族を守るのです。高貴なる者とは、血筋がどうあれ、人のため国のため、自らを犠牲にできる者の事です」


「例えば、五年前の勇者のように」そう言ってチラっと健人を見てから、再度アヴァンを睨む。


「だから、あなたのように、光属性だから高貴、と言う事ではありません。詭弁です」


 そう言い切って、より強く、キッとアヴァンを睨み、ダガーを逆手に構えるリリアム。


「分かったなら、剣とその魔薬を置いて投降しなさい!」


 そこで、突然グレゴーが「ホーリーニードル」と叫んだ。アヴァンがリリアムに向かい合っている間に、「ヒール」をかけ自分の怪我を治療していたのだ。小さな光の針がアヴァンに飛んでいく。


「しまった」完全に不意を付かれたアヴァン。持っていた剣で光の針を何とか防ぐ。そして奥の方で固まって怯えている孤児達の元に向かおうとする。


「まずい!」孤児達を人質にする気だ。健人は能力を開放し、風のようなスピードで、アヴァンより先に孤児達の前に立ち塞がった。


「クッソ! 邪魔すんな!」そう言って持っていた紫の玉、魔薬を健人に投げつける。後ろには孤児達がいる。避けると彼らに当たってしまう。大剣で防ぐと魔薬が破裂するかも知れない。間に合わない。


「タケト!」「タケトさん!」ケーラとリリアムの悲痛な叫びが部屋の中に響き渡る。


 健人は覚悟した。せめて自分が魔薬を受けても、他の人達に被害が及ばないよう、願った。


 ああ、真白と同じく魔薬を喰らう運命か。だが、俺は真白と違い元々猫じゃない。これで俺の人生終わったな。でも、約1年くらいか? 本当は死んでいたのに生き延びる事が出来ただけでも良かった。一番良かったのは、真白に会えた事だ。死を覚悟したからか、このほんの一瞬で、この世界での一番大事な想い人を思い出す。


 そして、せめてケーラやリリアムが、魔物となるであろう、自分をすぐ殺してくれるよう願って、魔薬が飛んでくるのを、何も出来ずスローモーションで見つめていた。


 が、突然、


「ウニャアア!」


 と、猫の鳴き声が聞こえ、そして健人のカバンから、白い影がヒュンと飛び出し、健人に投げつけられた紫の玉を、肉球の柔らかいキックで蹴り返した。



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