ある日の教室での出来事。(Another Story)
「……まだかな〜」
昨日の彼のレースは凄かった。とにかく凄かった。
早くおめでとうを伝えたくていつもより少し……いやかなり早く学校に来てしまった。
20分ほど、本を読んで待っていると、窓の外に彼が登校してくる姿が見えた。
(やっと来た!!)
彼が教室に入ってきた。
「昨日はおめでとう!」
私は彼が教室に入ってきたと同時に声をかけた。
彼がちょっと驚いているのはわかったけど、私は昨日から我慢してきた言葉を立て続けに伝えた。
「いや〜、まさか100メートルも200メートルも優勝しちゃうなんて、凄すぎじゃん!!」
「ありがとう。でも、昨日はたまたま運が良かっただけだよ。2位とも0.3秒差だったし」
彼の返事は素っ気なかった。
でも私は気付いたよ。
君の顔が少し赤くなったことに。
「それでも、優勝は優勝だよ!! そ・れ・に・走ってる姿カッコよかった!!!」
ほら、また赤くなった。
そして君は言葉を少しつまらせながらこう答えた。
「……ありがとう。でも、そんなに褒めても何も出ないよ?」
動揺していることがバレバレだよ。
「見返りが欲しくて言ってるわけじゃないから。本当にカッコイイと思ったからだし」
そう君はとてもカッコよかった
みとれてしまう程に。
君に想いを伝えたい。
でもそれは出来ない。
だって私は君の隣にいる資格がないのだから。
君が私のことを好きでいてくれたとしても。
「ルミ、彼氏さんいるんだからそんな簡単に、カッコいいなんて他の男に言ったらダメだよ。彼氏さんに怒られるよ?」
急だった。そして私は少し焦ってしまった。
「………あんな奴なんか」
ボソッ。
私は彼に聞こえてしまいそうな声で呟いてしまった。
「ん? ルミ? 今、なんか言った?」
「ううん、何でもないよ。そうだね、怒られちゃうかもね。これからは気をつけるよ! ありがとね!」
よかった。聞こえてなかったんだ。
〜キーンコーンカーンコーン〜
「えっ、もうこんな時間なの?! やばいやばい。授業の準備何もしてないや。シュウまたあとでね!」
そう言って私はボロがまた出てしまわないようにそそくさと自分の机に戻った。
(ふぅ、危なかった〜)
(もう少しでボロが出でバレちゃうとこだったよ〜)
そう彼に絶対にバレてはいけない秘密がね。