番外…子供のつぶやき(長男アレン)
私はアレン、今年で二十歳になる城勤めの文官だ。直属の上司が宰相である点からも有能であることが分かるだろう。
髪と瞳の色は父親と同じ金髪碧眼で、幼い頃の父にうり二つと言われて見目麗しく大変モテる。こんなことを謙遜しても仕方がないので自分でも認めている。
十三歳のころから彼女が途切れたことがないが、入れ替わりが激しいのが悩みだ。両手の指では足りないほどだ。ちなみに浮気や二股など一度たりともしたことがない。
対して弟のカインは恋人がいた過去がない。七歳年上のプリシラに叶わぬ想いを寄せ続けている変わり者だ。私もプリシラが初恋だったので、プリシラに害が及ぶような事になりそうだったら何とかするつもりでいる。
私の家族は国だけではなく、他国でも有名らしい。宰相について外交の席に出た時には、必ず父のことを聞かれる。王家の血を引く父ではなく、もう一人の異形の父のことだ。
私と異形の父に血縁関係はないが、私にとっては生まれたときから父だったので、血の繋がりはどうでもいいことだ。
母は一昔前の偉大な魔法使いの血を引く魔法使いの直系だが、まったく魔法がつかえない。魔力もない。私と双子の弟カインには強い魔力が引き継がれている。が、私は魔法使いになる選択をしなかった。
カインは小さい頃は魔法使いになると言っていたが、何故か急に近衛騎士になると言ってなってしまった。カインは仕事で魔法も使うことがあるが、私はやっても治癒くらいのものだ。
あと二人、私には八歳年下の弟アスタと、十歳年下の妹メイリがいる。
この二人は異形と言われる父の血を引いていて、人間の父がめちゃくちゃ溺愛している。特に一番下の妹のことは「嫁にやらない」と本気で言っている。目が真剣すぎて怖い。
確かにメイリはとてつもなく可愛い。瞳孔が縦長で、瞳は桃色。光を受けて虹色に輝くのは神秘的だ。神々しさすらある。真っ白な肌に所々鱗模様が浮き出ていて爪が鋭い美少女。この先が楽しみかつ怖くもある。
今年で十二歳になったアスタは背中にコウモリみたいな羽がある。アスタが五歳くらいの時だったか。私とカインとアスタで風呂に入っていたら、アスタの背中から突然羽が飛び出してそれは驚いたものだ。
その後アスタは高熱を出して生死の境を彷徨い……空を飛べるようになった。大変羨ましいことだ。
アスタの背中に羽が生えてから、蜥蜴と呼ばれていた父が竜と呼ばれるようになった。父の生まれた世界に竜は存在せず、こちらの世界でも竜は想像でしかないので、父は蜥蜴の方がいいと言っていたが、正直私は竜の方がかっこいいと思う。カインは竜より蜥蜴がいいという父がかっこいいと言っていたかな?
先日、国王から「両親は息災か」と聞かれたので「目のやり場に困るほど息災です」と答えた。
王に対して無礼な態度だったが、王が人目を忍んで手招きし、柱の陰でこっそり囁いて聞いていたので大丈夫。
こういう時は伯父と甥としての関係を求められていると分かっていて、それに応じれる私は素晴らしいと思う。
人間の父は王家から籍を抜いて貴族でもないが、顔が綺麗で女性ウケが良いので度々外交に利用されていた。私も父を外交に使っている。父も生まれのせいだから仕方がないと分かっているようだが、暫く家を開けるときは「行きたくない」と母に甘えて離れなくなる。
二人の父は母への溺愛が年々酷くなっているが、まぁ親が仲良きことは私たち子供にとっては良いことだろう。




