提案
アルノンとリリアにそれを説明する。
「でもどうして魔族にならないといけないの?」
まあ、リリアが聞いてくるのは無理もないだろう。
一応、魔族の王――魔王だしな。人間で魔王なんてするやつはいないだろ。
あとは偶々、最初に手に取ったのが魔剣だっただけで、聖剣だったら勇者になってたのかもしれない。
実際はあいつを止めるに魔剣を取り魔王になっただけなのだから――
「あいつを止めるために魔族になった。それに俺、本来は一切魔法が使えない……」
「それは勇者カノンかい?まあ、言いたくないと思うからこれ以上は聞かないよ」
この男は、なんというか……。
そして俺が魔剣を手にしたのは魔法を使うため――
人間か魔族なら、魔法は当たり前に使えるのだが俺は特殊な理由で魔剣がないと魔法が使えない。
「ねえ、それよりも。アルヴァニス……様?」
「アルヴァニスでいい。呼びにくいならアルヴァンでいい」
リリアに様付けでよばれるものなんだかな。
ちなみに、アルヴァンは俺の愛称だ。
「じゃあ、アルヴァン。突然なんだけど……私たちの子供にならない?アルノンもいいでしょ年齢的にも悪くないし」
アルノンは一瞬ムスっとしたがリリアが言うならということで了承の様だ。
いや、しかしだな。
「ちょっと、待って。なんで俺、お前らの子供にならなきゃいけない。というか、お前ら20代くらいだろ」
「えー。やだ、私たち40代よ。アルヴァンが嫌ならいいのよ……。セルヴァラン様から聞いてみろと言われてただけだから……」
ちっ、セルヴァランの奴のお節介か。
しかし、こいつら40代なのかよ。どうみてもそんな歳には俺の目からは見えないんだが……。
こいつらの子供にならないかという提案だが、今の俺には帰る場所がないというのは明らかであるし、カノンが死んでいるなら……。
「なあ、カノンはどうなったのだ」
「勇者カノンのことかい。それは君が魔王アルヴァニスならよく知っていることだろう?勇者カノンは、千年前魔王アルヴァニスの魔剣に討たれたよ」
アルノンが答えてくれる。
ああ。やはり、父はあの時俺の剣を受けたのだな。
憎いと思っていたがやはり心のどこかでは寂しい。
もし、生きていたなら――
いや、これ以上は止そう。
「そうか。そうか……。ならば、その提案乗ってやる。セルヴァランのお節介だろ?」
この夫婦にもなんらかの事情があるのだろうが……。
セルヴァランに吹き込まれたなら仕方ない。あいつは、俺の事情を知ってるからな。
「え。ほんとにいいの!?」
リリアは、無邪気な子供のように寛美している。
アルノンも俺がそんなにあっさり了承するとは思ってなかったようで今は硬直中だ。
「正し、条件がある」
「それは何?」
リリアがそれくらいはとばかりに聞いてくる。
「俺は、その学園カノンレクイエムとやらに聖剣を取りに行く」
2人は、お互い顔をあわせ。
「「お安い御用だ(よ)」」