行方
「知ってるよ。聖剣は……」
さあ、聖剣は今どこにあるのか――
「聖剣は学園カノンレクイエイムにあるんだ。しかも、聖剣の間にあって……」
「学園……カノンレクイエイム?聖剣の間?」
俺の予想では聖剣の間というのは聖剣は台座に戻っているのだろう。
それより学園カノンレクイエイムとはなんのことだ。
「カノンが死んでから、聖剣は千年間ずっと誰にも抜けないでいるんだ…。しかおカノンの息子剣士アレスですら聖剣は使えなかったと……」
「ほう。要するに聖剣は聖剣の台座に戻っているのだな」
アルノンは、うなづく。
というか、カノンの息子が剣士アレス――。
今は、アレスなどどうでもいい。俺に必要なのは聖剣だ。
「ならば俺はその学園カノンレクイエムにいく」
不本意ながら、この姿なら人間の姿の時と違い翼があるから飛べる。
飛び立つために翼を大きく羽ばたかせる。
「ちょっと待って!」
俺を引き留めたのはリリアだった。
羽ばたこうとした翼が背中に折りたたまれる。
「なんだ」
「学園カノンレクイエムには、いけないの」
いけないだと……
「どういうことだ」
「僕が説明するよ」
アルノンが説明してくれるようだ。
しかし、いけないとはどういうことなのだろうか。
「あそこには特殊な結界魔法がかかっているんだ。しかも、勇者軍の5人がかけた魔法だ」
それがどうしたというのだ。あいつら5人の結界魔法ならば魔力が半減している今の俺でも破壊できるはずだ。
「それを破壊しようと思ってるでしょ?」
「ああ」
よくわかったな。
リリアが青ざめ……。
「絶対にそれだけはダメ。お願いよ……。そんなことすれば、100年前と同じく人間と魔族の戦争になるわ」
100年前?
1000年前ではなく、100年前に何かあったのか!?
「1000年前ではなく、100年前といったな。100年前に何があった」
アルノンが渋るように。
「そうだね……。僕達も話でしか聞いたことがないだけど。魔族が人間の王族を殺したらしい。詳しくは嵐帝のセルヴァラン様に聞くといいよ」
ん?セルヴァランだと。
「なんでセルヴァランを知っているんだ」
「え。だってここ嵐帝セルヴァラン様の森。嵐竜の森よ」
開いた口が塞がらないとはこのことだ。
嵐竜の森なら、ここは魔族領ではないか。
100年前と何か関係があるのか?
「嵐竜の森。ではなぜ人間のお前たちがいるのだ。ここは魔族領のはずだぞ」
2人はお互い顔を合わせると。
「リリアはセネリオ様の孫の孫で僕はその夫だからセルヴァラン様が住んでいいって」
「ここは王様からもらったと」
「嵐帝領だから王様はセルヴァラン様だよ」
なんということだ。それでは
「今の魔王はセルヴァランなのか……」
「いや違うよ。最後の魔王アルヴァニスがカノンに封印されてから魔族領は5つに分かれたんだよ。そして、今魔族領は五帝により4人の魔王によって統制されているんだ」
それでは、俺が封印されてから魔族領は5つに分かれたというのか。
しかし、五帝が魔王代行をしているなら魔王は5人にいなければおかしいのだが……。
「ならば、セルヴァランはどこにいる」
セルヴァラン――俺の叔父に当たる魔族だ。
あいつに聞けば何でも答えくれるはずだ。
「セルヴァラン様はここにはいないわ……。この森を私たちに渡して、そろそろ最後の魔王――アルヴァニス様の封印が解けるだろうから探してくると言って出て行ったわ。10年程前に……」
……。あいつが何でアルノンとリリアをここに住まわせたか分かったぞ。
留守にするから留守番よろしく。という意味だ。