終焉
「なぜ、殺さない!!」
声を張り上げ目の前の男に言う。
ついでに右胸に刺さった聖剣を左手で掴み体から無理やり引き抜く。俺の体から血が飛び散るが数秒もすれば血は収まった。
「こ……。殺せるわけない……だ……ろ」
この男は、勇者カノン。そして俺の父でもある男。
俺は、この男が嫌いだ。大嫌いだ。殺したいほど憎んでいた男が魔剣アビシオンにより心臓を貫かれている。
まぎれもなくこの男の心臓に魔剣を刺したのは俺なのだが。
「ならば、もう一度この質問に答えよ!!――僕の父は誰――」
勇者の核と言われる5つの心核を破壊され、心臓に魔剣が刺さっているのに未だ生き絶え絶えだが会話ができるところは流石勇者と言ったところか。
しかし、目の前の男がこの質問に答えられるはずがない。この質問は俺の父との約束だ。
「……」
目の前の男は父と同じ顔をしているのに、目の前の男は父とは違う存在。
「クククッ。やっぱり、お前は違う!! 」
俺は、今どんな顔をしているのだろうか。きっと憎悪満ちた醜い顔をしているのだろう。
「勇者よ。俺は、お前が嫌いだ! 」
左手にある聖剣を勇者に向ける。
魔剣は今は勇者の心臓に刺さっているし利き手である右手は勇者との戦いにより動かないからな。
ただ、威嚇するのに勇者にちょうど持っていた聖剣を向けただけのこと。
誰も、魔王が聖剣を扱えるとこの場にいる誰も思っていないだろう。もちろん、魔王である俺も思ってはない。
だが、
「くっ」
俺は、その場に崩れ落ちる。空気とかしている。魔王軍、勇者軍一同は一体なにが起こっているのか分からない様子であるが。
「くそっ」
持っていた聖剣を激しく投げつけると聖剣はカランと音を立てて剣士アレスの足元に落ちた。
それどころではない、俺から見える俺の手が魔族のような鋭い爪が生え鱗のような甲骨に覆われていた俺の手が人間の手になっているのだから。
「「魔王(様)その姿は……」」
魔王軍、勇者軍が声を揃えって言いたいことはわかる。
魔族の特徴である大きな翼も長い尻尾も今の俺には感覚がないとなると答えは1つだ。
「勇者、貴様!何をした!!俺を人間にしたな!!」
俺は目の前ので倒れている勇者に掴みかかろうとするが魔族の体と人間の体では感覚が違い勇者の方に倒れてしまう。しかも最悪なことに勇者の胸の中に飛び込むように倒れこんだため、周りからみると俺がまるで勇者に抱かれているようではないか。
最悪だ。
でも最悪なことばかりではなく勇者の胸に倒れこんだため俺の愛剣――魔剣アビシオンは目の前にあった。
魔剣を掴んだ瞬間だった。
「答えは……。アル……ニス……の……父は……カノ……ン。だから。生きて…く…れ。―転移―」
俺は、目を見開く。俺が望んでいた答え――。
そして、勇者の転移魔法がただの転移魔法ではないことは明らかだ。
魔剣を力まかせで最後の抵抗だといわんばかりに抜く。
「俺を殺さず封印したこと後悔するぞ! ……父さんの……バカ」
俺が薄れていく意識の中、見た勇者カノン‐父の顔はどこか穏やかそうで俺が幼いころ見た父だった。
「ア……ヴァ……す……ない。人間…と…魔族…が手を…取りあって…世界を……」




