プロローグ
それは、今から1000年も昔の事。
人々から勇者と言われる男がおりました。
その名を――カノンと言いました。
勇者カノンは聖剣を持ち、人々の為――平和の為――最後の魔王――アルヴァニス――と戦いました。
勇者軍五騎士 聖者ユゲル 魔導士マリア 戦士ミラノ 巫女イルア 剣士アレス 魔王軍五帝 炎帝アゲハ 氷帝ミズハ 雷帝ラフィエル 嵐帝セルヴァラン 地帝クレイムが見守る中その戦いに終止符が打たれました。
魔王の魔剣は、勇者の左胸に――。勇者の聖剣は、魔王の右胸に――。
勇者は魔王の心臓を業と外したのです。
理由は定かではありませんが勇者は魔王を殺さず、聖剣により千年封印することにしたのです。
魔王は封印の際に「我を殺さず封印したこと後悔するぞ!」と言い残し、魔王の体は光になり勇者軍、魔王軍そして勇者の前から消えていきました。
そして、同時に魔王に刺さっていた聖剣が音を立てて落ちるのでした。
それを合図に勇者カノンは行き絶え絶えに「人間と魔族が手を取り合って世界を」と言葉を最後に息絶えるのでした。
「カレン、これを覚えておけよ。1年後の魔法学園カノンレクイエムの入試問題はこの中からどこか伏字で出る。まあ、魔王のセリフか勇者のセリフだろうがな」
そんなこと言っているのは僕の兄さん―カレス、現在魔法学園カノンレクイエムの現在2年生。
僕が入るころには、学園の生徒会長を務めるであろう兄さんは、いつも僕に対して心配ばかりしてくる。
「兄さん。僕、特待で入ることになったから。筆記試験は免除だよ。それよりも、僕はその物語の勇者か魔王と戦ってみたいな」
「そうだったな。魔王はともかく、勇者は俺たちの祖先だぞ。なんたって俺たちは勇者カノンの息子――剣士アレスの末裔だからな」
目の前の兄の言う通り、僕は勇者カノンの息子――剣士アレスの末裔。
魔王と戦うならともかく、勇者と戦うことは本当にないだろう。
だって僕の祖先だし、勇者はすでに死んでいるのだから。
それに、人間は勇者がいなくなった今、勇者軍五騎士の末裔により成り立っているといって過言でない。その中でも勇者の息子と言われると剣士アレスの末裔はとして人間の王とされている。
勇者と戦うなら、僕の兄さんや父さんあとおじさんに頼めばいいだけだしね。
でも、この時はまだ僕は知らなかった。本当の勇者カノンの本当の息子が誰なのかを――。
これは、僕が学園に通った4年間の記憶である。