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魔術師と手品師 - マジック対決に誘われて

作者: 内村

斎藤が何の気無しにSNSのサイトを開いたら、ある言葉が目に飛び込んできた。


「マジック対決をしませんか」


ネットに偶然見つけた書き込み。なぜだかその書き込みに斎藤は心惹かれた。


斎藤は日々手品を見せて、日銭を稼ぐ手品師だった。時には人通りの多い所でストリートパフォーマンスを行ったり、ホテルの宴会で、結婚式場でステージにあがり手品を見せていた。


日々手品の腕を磨き練習している斎藤にとって、他の手品師と腕を見せ合い、競い合うことは面白そうだった。それに手品対決をしておけば、何かと話題作りにもなり今後の仕事にも役に立つだろうと思った。


投稿主のほかの投稿を見てみると、実際にマジックをしている様子の写真が投稿されていた。ボールを浮かせていたり、手から火の玉を出していたりしている初老の老人が写っていた。斎藤には写真だけでは種がわからなかったが、なかなかの腕前であることは感じられた。


斎藤は「ぜひやりましょう」とメッセージを投稿主に送った。


夏の公園。


斎藤は、手品対決を行うために公園に来ていた。


斎藤は黒い燕尾服を着て、黒いシルクハットをかぶり、白いステッキを持っていた。日本ではなかなかに派手な格好だ。しかし、この非日常な格好だからこそ、観客たちは手品が魅せる不思議な世界を楽しめることができるのだと斎藤は考えていた。いかに現実ではないと思わせるのかが手品師の腕の見せ所だった。


斎藤はスーツケースを持ち込んでいた。スーツケースの中身は愛用の手品道具をだった。トランプに、コインに、赤い大きなハンカチ、ゴルフボールくらいの大きなの色付きの球、小さな白い鳩。


相手がどのようなマジックを使うのかわからないが、勝負をする以上は手を抜かないつもりだった。自分自身の全力の手品を披露して相手を驚かせるつもりだった。


まだ「魔術対決をしよう」と言っていた投稿主は来ていないようだった。


公園にいるのは小さな子供と、それを見守る親たちくらいだった。子どもたちが遊具に群がり、親たちはベンチにすわり世間話に花を咲かせている。


きゃっきゃっと子どもたちが笑い合う声がひびく。


斎藤は対戦相手がやってくるまで暇だった。暇を持て余している間に、子どもたちにマジックを見せてやることも考えた。しかし、今後のマジック対決のために控えていた。一度でも手品を披露してしまうと、再び見るときは手品のたねを明かそうということに観客たちは集中してしまうためだ。


斎藤はポケットから一枚コインを取り出し、弄び始めた。指の運動代わりに指から指へとコインをコロコロと転がしていく。コインロールというものだ。斎藤は手先が器用でマジックの前にちょっとした芸として、よく披露しているものだった。


5分程度待っていると、やや腰の曲がった老人が公園の入り口からやってくるのが見えた。


その老人の格好に斎藤は驚いた。深緑色のゆったりとした大きなローブに、顔がほぼ隠れるような大きなフードを被っていた。さらに老人は、ほぼ老人の身長と同じくらいの節くれだった杖を持っていた。映画で出てくるような魔法使いの格好だった。


斎藤は自分の格好も変だという認識はあったが、相手の老人の格好も相当変だった。


マジシャンというものはいかにキャラクターをつくり上げるということが重要であり、老人は見事に魔法使いというキャラクターだった。


「こんにちは、魔法使いさん。本日はマジック対決よろしくお願いします。」


斎藤は老人に挨拶をした。老人は斎藤のじーっと上から下まで見回すと、深い深いため息をついた。


「はー。お主では儂とマジック対決をできる気がしないのだが」


あきらかに斎藤を見くびっている言動に、斎藤はいらついた。


「私だってそこそこのマジックの腕はある自身があります!勝負をする前からバカにしないでいただきたい。」


「ほう、それならばお主のいうマジックとやらを見せてもらおうか」


「いいでしょう。」


斎藤はスーツケースから手品道具を取り出すと、次々と手品を披露していった。


手品を披露していくと、近くで遊んでいた子どもたちや話し込んでいた親たちも近寄ってきた。


斎藤は観客にカードを一枚引かせると、ピタリと引いたカードを当ててみたり、破いたと思ったトランプが次の瞬間にはシワ1つなく元通りに戻っていたり、不思議なことを次々と行った。


斎藤の行動に観客は目を見開き、口を大きく開けて驚いた。


観客は大いに斎藤のマジックを楽しんだ。


ただ一人を除いて。


「つまらぬ」


老人が言った。


「儂が望んだのはマジック対決である、お主のようなものを求めているわけではない」


「だから私は手品を披露しているのではないですか」


斎藤は老人が何を言っているのかわからなくて反論する


「お主がやっているのは手品であろう。儂が求めたのはマジック - 魔法だ」


「・・・・・・魔法?」


斎藤が首をかしげた。


「見ておれ」


老人はそういうと小さな声でブツブツとつぶやきだし、杖をひとふりした。


すると老人の体が地面から浮き上がり、斎藤の頭の上を飛び回った。


「っな!」


老人は空を飛びながらもブツブツとつぶやいており、もう一度杖をふった。


今度は杖の先端部分から真っ赤な炎が飛び出した!


真っ赤な炎は空中を10m くらい飛んだ後に空中に霧散した。


斎藤はこれにはびっくりである。いや、周りを取り囲む子供や親たちもそうだった。


「これが儂の求めていた魔法だ」


魔法使いは自慢気にそういった。そして若干のしかめっ面になり


「仲間を集めようと慣れないインターネットをせっかく使ったというのに。それなのにやってきたのは手品師の小僧とはな。やれやれじゃ」


と文句をのたまった。


魔法使いは公園の出口のほうへ歩き出した。


非現実を演出するというのが手品師の斎藤である。目の前で実際に作り物ではない非現実を見せられて斎藤は興奮していた。斎藤は手品師として魔法を使いたいと思った。よりリアルな非現実を作り出せる。より多くの人を驚かせることができると考えていた。


斎藤は去っていく老人を追いかけた。


「ちょっと待ってください。私に魔法を!魔法を教えてください!」


老人は立ち止まって斎藤へ振り返った。


「なんだ、魔法を使いたいというか。」


「はい、是非に教えていただきたい」


「そうだなぁ」


魔法使いは顎に手を当てて考えこむ。


「断る」


「ちょっと待ってくださいよ、少しだけでもいいですから」


斎藤は必死に懇願する。


「私に魔法を教えてくだされば、何でもご奉仕しますから」


老人の眼光が鋭くなる。


「ほほう。そこまでいうならば教えてやらんこともない」


「有難うございます!」


手品師の斎藤はこうして魔法使いの弟子となった。

この作品を書いた理由は、マジックっていうのが言葉として魔法と手品とふた通りの意味に取れるなぁっと思ったのがきっかけです。もうちょっとテンポよくかけるようになりたいなぁって思います。


今回は弟子入りルートでしたけど、お互いがお互いの腕前を認めあう話も面白いかなって感じてます。

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