遭遇
らんらんらーん♪
るんるんるーん♪
1人と1匹はとても楽しそうにお散歩していました。
「よ〜しよしよし」
劔の腕に抱えられているフーは耳や顎下をコショコショされたり撫でられるのが好きようで時折「キュ〜」と鳴きながらとても満足気だ。
そんなフーを見ている劔の顔はデレデレだった。
フーと出会って1時間。
変わらず山を目標にしながら歩いていたがその間にフー同様に今までに見たことのない動物をちらほら発見していた。
「ここが天国か…」
劔は無類の動物好きであり、一般的にかわいいと言われる動物だけでなく蛇やワニ、トカゲや蜂なども愛せる愛の幅が広い男だ。
「キュ!」
腕の中ですっかりリラックスしているフーだったが突然耳を立て起き上がる。
「ん?何か見つけたのか?」
フーが見つめている方へ視線を移す。
動物好きの劔でも苦手な動物もいた。
「…嘘だろ」
それが今目の前に現れた。
「ピギィー!」
大きな芋虫のような生き物が劔達がいる方へもぞもぞと動きながら近づいてくる。
「ひぃー⁉︎キモすぎる‼︎」
小さいならまだ我慢できたが中型犬よりやや大きな見た目と多くの脚が動いているのを見るとゾゾゾと悪寒が走る。
「うわぁー!これは無理だー‼︎」
大の大人が無様に叫び声を上げながら逃げる。
幸い巨大芋虫は脚は遅いらしく追いつかれることはなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ、あぁ〜ホントここはどこなんだよ〜日本じゃないんだろうなぁ〜。あんな巨大な虫が日本にいるとは思えないし」
劔の趣味は様々なスポーツやゲーム、音楽・アニメ鑑賞、それと読書で、好きなジャンルは時代小説・ファンタジー・SF・ホラーなど様々。
「…薄々そうなんじゃないかなとは思ってたけど、ここはファンタジー世界かな?」
フーを見下ろしながらため息をついてしまう。
そのフーは吐息が当たってくすぐったかったのか耳をわしわししている姿に癒される。
「とにかく何がいてもおかしくないな。一応武器を確保しておいた方がいいだろうな」
そう言いながらフーを地面に降ろし、地面に落ちている枝を探すがそこそこ耐久性がありそうで丁度いい大きさの物が見つからないため、自分で木の枝を折り、石や木の幹を使い余分な枝を折り、先端を尖らせ研磨する。
「まぁこれで刺すくらいはできるな」
できた槍もどきと同じものをもう2本作り脇に抱え進む。
その途中で殴打用の太めよ棒を拾う。
「うぅ〜人恋しいよぉ〜」
つい不満が口に出てしまう。
「…ウゥ!」
べしべしとフーが劔の足に大きな耳でビンタ?する
「えっ?あっごめんな、フーがいてくれるだけで嬉しいよ」
拗ねてしまった様なフーを撫でるとビンタをやめてくれた。
「少し暗くなってきたな。これだと今日中に人に会うのは無理かな」
これでも大分歩いたつもりだったんだけどな〜と思わなくもない。
かれこれ4・5時間は歩いていた。
喉も渇いていたし、なによりお腹がへっていた。
「はぁ…ん?なんだあれ?」
よく見ないと分かりづらいが白い煙が上がっていた。
「何か燃やしているのか?ということは人がいる?よっしゃ!行くぞフー!」
「キュ!」
1人と1匹は意気揚々と煙に向かって歩き始めた。
歩くこと10分後、もうすぐ煙が上がる場所へ辿り着くぞというところで止まった。
「…うん、間違いないな。ここは日本じゃない」
劔の視線の先には5人の男がいた。
「eryrd:erjjdgwggdizgdgmgdi!」
「ysdim@wpovtgdiwgmrmpw'!」
「mswmga!&kflryvoga!」
「「「「「グハハハッ!」」」」」
「何言ってるのか分からん」
言葉だけだったら外国語に不慣れなので、まだ日本の可能性が少しはあった。
「どこの原始人?盗賊?山賊?だよ」
何かの動物の毛や皮で作られ、必要最低限の所を覆い隠している野性味溢れる男達が何語かは分からないが余程良いことがあったのか爆笑していたのだ。
「しかも剣だか鉈だか帯剣してるし」
これは迂闊に近づけないと改めて注意深く見ると麻袋があり、それがモゾモゾ動いていた。
「おいおい、マジかよ」
麻袋の中は分からないが人の声のようなものが聞こえ、劔はあちゃ〜とおでこに手をやり空を見上げる。
「cfvrygloz!」
1人の男が怒鳴り麻袋を蹴りつけた。
するとビクビクとは動くもの麻袋から声は聞こえなくなった。
「今のは多分うるせぇとかそんな意味だったんだろうな」
そう冷静に呟くも劔ははらわたが煮えくり返る思いだった。