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怒りから身体を奮わせ熱くなり、煙を纏いながら剣握り締めたブリキッドは、勢いよくドラリオンへ飛び込みました。しかしオモチャ達がそれに目を奪われたのも束の間に、ブリキッドは容易く呆気なく尻尾に叩かれて噴水に飛ばされて鎮火してしまいました。
『弱っ!!』
駆け寄るリリー以外が衝撃を受ける中、またドラリオンが口を開きます。
「もう時間がない。
あの灯りが、より明るくなる時が最期だと」
急な話に慌てふためくオモチャ達の中で、おじさんなオモチャが呟きました。
「いいや、急な話じゃない。
今まで何度も疑問はあった。
わしらはその疑問と、向き合うことをしなかった。
ただ誤魔化そうと、毎日を繰り返したんだ」
プカプカと浮かぶブリキッドを、鷲づかむドラリオンから受け取ったリリーは彼を降ろして、みんなに言いました。
「じゃあ、みんなでご飯を食べない?
ブリキッドは何処へも行かない、
ドラリオンは私を拐わない。
ね?みんなで宴を開きましょう」
オモチャ達はそれに賛成して、慌ただしく準備を始めました。ブリキッドは唐揚げをつまみ食い、ドラリオンはブリキッドごと机を持ち上げ運んだり。そしてようやく、乾杯をあげて思い思いにそれぞれに。
「ヒーローより強いなんて、
ダメだぞドラリオン!」
「君が弱いんだよブリキッド。
それに僕は怪物。
ヒーローの君には敵わない。
僕らはお互いに、敵わないんだ」
「うん、よく分からん」
「だろうね」
「おのれドラリオン!」
飛び掛かろうとするブリキッドを引き止めるリリー、それにそれを軽くあしらい唐揚げを横取るドラリオンに、その場はとても和やかでした。そしてそんな雰囲気を壊すことなく、明かりは強くなり光は彼等の影を消していきました。最初で最後の晩餐に、オモチャ達はオモチャらしくらしからず。
ガチャリ。