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かなり遅れましたが更新です。
多少というかグロい要素があるので閲覧注意です。
アリスィアの手記を読み進めていたのは售だった。
明音にはあれから触らせてもいない。
見る?と僕は呟いた、でもすぐに後になってやめようと
何故かその言葉が口から出たのだ。
「…読み進めても読み進めても同じ言葉が続くなぁ…」
售は疑問を口にする。
読み進めて読み進めても同じ言葉がそのまま続いていく。
だからといってその言葉が分かると言ったら
そうではなかった。
明音に一度見せたこともあったが駄目だった。
それに…
『だってあのとき私があの死神に
喋った言語は書き言葉でもあるのよ。
だからこういう魔法がかった本とかには
そういう言語が書かれているはずなの。』
明音はこういった本には自分が読める
言葉が書かれているといった。
でもこれにはそれがない。
だからこそそれが不思議だった。
読み進めたあとに出てくるのは
"真実はこの手記に"という文章だった。
正直何が言いたいのかはよく分からない。
だからこそ僕は手記を閉じてベッドに潜り込んだ。
(そういえば明音は…)
今の時間は土曜15時35分、昨日の騒動があって
僕と明音は休学届を学校に提出した。
理由は様々であれ明音が相当なことで追いかけられて
そしてあのときディオミスという男が助けていなければ
捕まっていただろう。
そういった理由に僕と明音はこれ以上
事件という事件を増やさせないためにも
休んだりして身を隠す必要があった。
姉ちゃんや母さんには適当な理由をつけて休学するといった。
やりたいことがあるだとか、進学先を考えるだとか。
明音はそれこそ誰かに狙われているだとか言って
無理にでも学校や外に行かせないようにと頼み込んだ。
警察に行って何とかしてくれる…とかは多分出来ないだろう。
警察に行って"命を狙われているんです、助けてください"と
言って信じられるだろうかと言われたら答えはノーだ。
まあどちらにせよ言えることはできない…
(じゃあ…結局どうすればいいんだ?)
誰に話しても信じられない状況下で
誰かに追いかけられてそして逃げることすら
出来ず隠れている。
これって…ピンチ?危機的状況とか言うんじゃないか?
四方八方逃げ場がなく無いからこそ留まっている。
遅く決断をしたところで相手に
位置がバレてしまえば一巻の終わりだ。
…これが四面楚歌という状況なのだろうか。
信じられるものとしたら…明音だけだ。
相手の狙いは明音だとして、だ。
そもそもこの状況になったのは明音が天使という
種族だということから始まっている。
そして明音からは何も言われず今まで追いかけられてきた。
もともと自分の家族親類を陰陽師に殺されたことで
僕と一緒に逃げ、また明音を助けている。
だがしかし、ディオミスという男に会う前の
謎の集団は本当に陰陽師だったのか?
…いや待て。
そもそも論点がズレてる。
そうだ、日記のときに話半分聞き流していたが
あのとき確かに言っていた。
「死神…そうだ死神。
明音は死神に追いかけられている…!」
でもなんで僕に声をかけて助けてといったとき
陰陽師にと言ったんだ?
…。
まさか陰陽師と死神に追いかけられていて
はじめは陰陽師に、今は死神にとそういうことか?
あのとき出くわしてからそういうことに行動が
情報が上書きされてしまったのだろうか。
「はぁ……分からない。
今僕たちに起きているのは一体何なんだ?
アリスィアの手記…これも……って」
と何気に開いたページには新しく文字が、
リアルタイムで開いた瞬間に浮かび上がっていた。
今まではタイトルである"アリスィアの手記"と
"真実はこの手記に"という言葉しかなかった。
手記という日記帳に文章が連ねられていくのは
今回が初めてだ。
僕はその文章を読む。
「"もしも明日が来るのなら
それは私が望む明日ではない。
彼女を失った明日にどれだけの幸せがあるというのか"」
…これだけか。
なんとも壮絶な始まり方だ。
これを書いたアリスィアという人?は
今まで文章書くということをしなかったのだろうか。
話を要約するにアリスィアという者は男なのだろう。
そして何かがあって彼女をこれを書いた次の日か
もっとそれより短い単位で死ぬのだろう。
そしてその失った明日に幸せはあるのか?と自問自答している。
日記ではあるが文体からして物語に近いのは分かる。
この先を読みたいと少なからずは思うだろう。
おそらくこの手記は、物語は悲劇だ。
「これから
どうするのが先決か。……明音にまずはこれを見せた方が良いか。」
と售はベッドから出て立ち上がって扉を開ける。
開けた扉から出てくる冷気に僕は一瞬寒いと感じた。
それもそうだ、布団の中でぬくぬくとしていたんだ。
一気に体が覚めていく感覚を手にしながらコンコンとノックする。
「明音?起きてるか?……入るぞ?」
とドアに手を伸ばして引いた瞬間、聴き慣れない
どしゃっという音とともにドアが完全に開かれる。
なぜ完全に開かれたか、それはドアにそれが寄りかかってたから。
「え…――――!!!」
寄りかかっていたそれの身体にはいくつもの穴が開いていた。
そこから大量の血をまき散らしてその血がべったりとドアと部屋中に
広がっていた。窓は開いていてそこから入ってくる風が
その光景と光景のなかの雰囲気を鼻に纏わせた。
售はやっとそれが誰なのかを理解して退きながら尻餅をつく。
天草明音は全身の穴という穴から血を噴出させていて死んでいた。
售はその異様な光景にいつからか吐き出しながら
それが明音とは信じられなくてそのまま明音を探した。
階段を下りて居間につく。
そこにも同じようなそれが二人分あって售は怖気づいた。
售は両手を顔に当てながら懸命に溢れる水を拭う。
「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして…あ…あああぁ…!」
そして拭う水がいつからか赤くなっていることに
售は気付くとそのまま自分の手や腕を確かめる。
毛穴という毛穴が異常な大きさになって血が噴き出るのを見て
售はまた懸命に助けを呼ぶ。
誰か助けて、助けて。
そうだディオミスという男に聴こう。
これが何なのかを、これは夢なのかを。
聴いて聞いて効いて利いて訊いて解決して…
そうして鳥栫售の意識は途切れた。
次回はもうすぐ、です。