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「創造神」の能力者が異世界に飛ばされ魔王軍を作り変える!  作者: 田中中田太郎
第一章 魔王軍改革編
4/5

再建4 魔王軍の朝飯はかなり豪勢!

豪邸っていいですよね。もちろん外見もそうですけど、「豪邸」という言葉の響きも。

 魔王城の部屋から見る外は夜の帳が下りていた。

 部屋には鍾乳洞のような涼気が流れ込み、空は雲が覆いつくしていた。

 ここ、アフィルヴェレンにも朝・昼・夜が存在するようで安心した。

 ということは太陽系の惑星なのだろうか、それとも……。

 いや、底知れぬ深みにはまっていくような気がするから考えることはやめよう。


異世界に来て初めての夜だ。

 別に元の世界に帰りたいという願望はないが、やはり普段とは慣れない環境のためか、心にはいくつもの穴が空いている。

しかし、そんな環境に早く慣れないと、やっていけないだろう。

 何せ魔王軍の総統閣下だ。

 はっきり言って、荷が重い役職であることは間違いない。

 俺は戦闘面では自信があるが、内政面では一切の自信がない。


「まったく、どうすりゃいいんだか……」


 天蓋付きベッドに勢いよく飛び込み、うつ伏せの体勢になる。

 コンコンコン。

ノックの音が聞こえる。すると、次には声が聞こえてくる。


「誠志郎……寝た?」


 俺のことを誠志郎と呼ぶのはただ一人、ガレウスだ。

 俺はベッドから起き上がり、ドアを開ける。


「起きてるぞ。どうした、寝れないのか?」

「うん。何か魔王城って慣れなくて……えへへ」


 ガレウスはウサギ柄のピンクの子供用パジャマを着て、両手でウサギのぬいぐるみを抱えていた。

 何この子、ホント可愛い。


「じゃあ、絵本でも読んでやるよ」

「うん!」


 天蓋付きベッドにガレウスを寝かせて、俺は絵本を読んでやることにした。

 絵本は元の世界では知らない者はいないだろう、というほど有名な「シンデレラ」だ。

 こんなこともあろうかと、俺の「創造神」の能力で作っておいた。


「それ何って本なの?」

「これはな『シンデレラ』っていうんだけど、俺がいた世界で大人気の絵本なんだ」

「そうなんだ! 面白そうだね!」

「あぁ、元の世界では爆発的な人気だったからな」

「……ねぇ、誠志郎」


 ガレウスは突然、シリアスな雰囲気を出して名前を呼んだ。

 その声は、心情の揺れが感じられるほどに不安げな気持ちを帯びていた。


「どうした?」

「誠志郎は、いつか元の世界に帰っちゃうの?」


 ガレウスの瞳からは哀愁を感じることができた。

 そうか、ガレウスはずっとそれが心配だったのか。


「分からない、っていうのが正直なところだ」


 実際、転移魔法でアフィルヴェレンに呼ばれて来ている以上は、戻る魔法だって存在するはずだ。

 戻ろうと思えば、おそらく戻れるだろう。

 

「…………」

「でも、ガレウスを置いて一人で帰ったりとかしないから安心しろ」

「……うん!」


 ガレウスは呪縛から解かれたようにホッとした。




「シンデレラは――

「……zzz」

 いつの間にか、ガレウスは深い眠りに陥っていた。

 やだ、寝顔ちょーかわいい。写メ撮りた、い……。

 そんなことを考えているうちに、俺も自然と瞼をゆっくり閉じた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「誠志郎、起きてー。誠志郎ってばー」


 誰かが俺の身体をゆさゆさと揺さぶっている。


「ねぇ。起きてってばー」

「……あと、五分」

「起きないと、メッだよ!」


 おそらく起きないと終わらないエンドレスシステムだろうと察した俺は、渋々

目を覚ます。


「あ、やっと起きたー。おはよ! 誠志郎!」


 声の主はガレウスだった。

 そうか、俺は寝落ちしたのか。


「あーおはよ。ガレウス」


 朝の挨拶は大事だと分かっていながらも、俺は朝に弱い。

 つまり、朝はかなりテンションが低い。

 でも、朝からガレウスと一緒にいると自然とテンションが上がる。


 俺とガレウスはパジャマ姿のまま、部屋の外に出る。


「魔王様、おはようございます。今日は快晴ですね」


 部屋を出て、すぐの場所にグリゼルが待機していた。

 ずっと待っていたんだろうか。


「あー、おはよう。ずっとスタンバってたのか?」

「スタンバってる、というのはどういう意味なのでしょうか?」


 そうか、アフィルヴェレンでそんな言葉が通じるはずもないか。

 寝起きは俺の感覚を狂わせる。 


「悪い忘れてくれ。ずっと待っていたのか?」

「はい、魔王様が出てこられるまでずっと待機しておりました」

「そうか、悪いな」

「お気になさらず」


 ストーカーなのだろうか、ちょっと不気味だ。

 なんて思ってしまった。


「そうだ、朝食の場所に案内してくれるか?」

「もちろんです」


 会話をしながら歩く。

 が、一人足を止めていた。


「あ……ぼ、僕はここで待ってます」


 ガレウスは俺の部屋の前で止まっていた。


「なんでだよ」

「いや、僕は誠志郎の側近でもないし、朝食にはついていけない、かな。なんて……」

「じゃあガレウスは俺の側近に追加。よし、行くぞガレウス」

「え、でも……」

「ガレウス、これは魔王命令だ。俺の側近になったお前は俺たちと一緒に朝食に行かなければならない。分かったか? 分かったらついて来い」

「……分かった。ありがとう、誠志郎!」


 ガレウスは嬉しそうに笑顔でスキップしながら俺の腕に飛びついてきた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「こちらが魔王様専用の食堂で御座います」

「「おぉぉぉーー!」」


 俺とガレウスは声を揃えて言う。

 木製を中心に作られた食堂は天井には巨大なガラスのシャンデリア、壁には所狭しと絵画が並んでいる。

 いかにも、豪邸の朝食という感じがする。

 

「本日はこちらになります」

「おぉ、朝食の量とは思えないレベルだな」


 約十皿ほど置かれている料理は、どれも見慣れないものだったが、どれも食欲をそそられる品々だ。


「いただきます」

「い、いた、いただきます」


 ガレウスは俺を見て見よう見まねで料理を口に運ぶ。

 グリゼルはもう食べたのか、何も食べることなく立ったまま待機していた。


「グリゼルはもう食べたのか?」

「いえ、魔王様が食べられた後に食べるようにしています」

「じゃあ魔王命令だ。一緒に食べろ」

「いや、しかし」

「食事はみんなで食べたほうが美味しいだろ?

 二人より三人だ。何なら兵士皆呼んだっていい」

「そうですよ、こんな美味しい料理を食べないなんてもったいないですよ!」

「は、はい。分かりました。兵士は呼べませんが、ご一緒させていただきます」


 そう言ってグリゼルは俺の席の向かい側に座って、食べ始めた。


「今日の夜のことは全軍に通達したのか?」

「はい、既に行き渡っていると思います」

「そうか、まだ技術研究軍しか挨拶できてないけど、めんどくさいし、今日の夜まとめて挨拶したのでいいか」


 我ながら適当な考えである。

 こんな奴が魔王軍の魔王とか片腹痛いわ。

 自虐ネタを心の中でしていると、グリゼルが喋りかけてきた。


「では、今日はどうなさいますか?」

「そうだな。町や村がどうなっているのかを知りたいところだな。

 魔王軍以外の世界を知ることも大事だし」

「了解しました。

 では、ここから一番近いスタナキアに向かわれるのはいかがですか?」

「じゃあそこでいいや。そこに向かおう」

「かしこまりました。では、朝食後直ちに迎えるように手配しておきます」

「おう、よろしく」


 小さく切られたステーキを口に運びながら、俺は快諾した。

ここの世界は飯も美味しいようだ。

 ひょっとすると、グリゼルが「言語統一」の魔法を掛けたように「味覚統一」の魔法を掛けたのかもしれないが、もしそうだとしても黙認しよう。

 あんな狂気じみた土下座なんか二度と見たくない……。


「ん? 私の顔に何かついていますか?」

「い、いや何でもない」


 グリゼルは不思議に思ったのか、頭上に疑問符を浮かべる顔をした。

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