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今日と明日の時間の行方  作者: 緋色
第一章:行方知らずを探して
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第五話

 フラマと別行動をしてからもうすぐ一時間経ちそうな頃。イリスは道行く人や商人に万病に効く薬はないかと尋ねまわった結果、近頃噂になっている薬を格安で分けてくれる人がいるらしいという話を聞くことができた。

 その人物がよく溜まり場にしている店が大通りから脇にそれた裏通りにあるらしいので、その場所に向かうことにする。

 フラマとの待ち合わせ時間まであと少ししかないのだが、待ち合わせの広場ともさほど離れていないので店の場所だけでも確認しておこうと思ったのだ。

 裏通りは大通りと比べて人通りも少なく、活気もない。陽があたらないわけではないが、どこか薄暗い。


「ここかな?」


 イリスはとある店の前で探していた場所か確認をする。

 聞いていた店と相違はないらしい。

 時間もないので中には入らず、とりあえず待ち合わせ場所に戻ろうと踵を返そうとしたとき、店の中から怒鳴り声が聞こえた。


「なんだろう?……って、きゃあっ」


 気になり中を覗き込もうとしたら、店のなかから凄い勢いで人が飛び出してきた為、イリスは小さな悲鳴をあげながら咄嗟に横へ避けることになった。

 飛び出してきたのは二人で、男の子を大柄な男が追いかけるかたちになっている。

 二人ともイリスの存在には気がつかなかったのか、そのまま走り去ってしまった。

 只事ではない様子に店のなかで呆然としていた、おそらく店員と思われる男性にイリスは問いかける。


「ねえ、何があったんですか?」

「えっ、あ、ああ……」


 イリスの問いかけに我に返った店員はしどろもどろに答えた。


「詳しくはわからないけど……男の子が、薬がなんとかって」

「えっ、薬?」

「なんの薬かは知らないけど、あの男ここの常連でさ。なんか、前に薬を売っているって言ってたからそのことだと思うんだよね」


 店員は何気なく言うが、恐らくあの大柄の男がイリスが噂で聞いた人物なのだろう。


「で、何か話してたんだけどさ、突然男の子が薬らしいものを奪って逃げ出したもんだから、男の方が怒鳴って追いかけたんだよ」


 その直後に店の前にいたイリスと鉢合わせになったのだろう。


「あの男の子……大丈夫かなあ。あいつ、気荒いから……」


 そんな店員の心配気な呟きを聞き、イリスは入口に目を向ける。


「ありがとう。わたし、とりあえずあの人達追いかけます!」

「えっ、危ないよ!」


 店員は男の気性が荒いことを知っていた為か、ひどく慌てて止めようとする。

 しかし、イリスとしてはほっとくわけにもいかない。

 男の子の心配もあるが、なにより薬の手がかりが得られそうなのだ。


「だいじょーぶだからー!」


 笑顔で軽く手を振りながら、イリスは店員の制止を振り切って駆け出した。

 男の子と男が走り去って行った方向、偶然にもそれは広場がある方角であった。


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