第三十三話
ちょっと短めです。
読者の皆さんいつも本当にありがとうございます大好き…!
「あっそうだ、僕マリに調味料の場所とか教えてくるね」とメルヴィンが部屋を出て行ってしまったので、佐良はフーシュを抱き枕にして、ロロに話し相手になってもらうことにした。
「ロロの人型は初めて見たなぁ。髪が透けてて、すごく綺麗」
それは素直な感想だった。
炎が揺らめくようになびく艶やかな橙の髪に、お揃いの少しつり上がった大きな瞳は長い睫毛に縁取られている。桃色に色付いた桃色の唇が紡ぐ声はほんのり高く、どこか幼い。
文句なしの美少女だ。
「やーんありがとう!さすがサラね、そこの綿菓子は絶対そんなこと言わないもの!」
「あれ、フーシュと仲が悪いの?」
同じ言葉で話せるのは面白いかもしれない。話し方や笑い方が、よくわかる。知れるって、嬉しいことだ。
「そこの綿が陰険なだけよ!」
佐良に抱きしめられたフーシュを一瞥してぷいっとロロがそっぽを向いてしまったので、佐良はそうだ、と話を変えることにした。
「…メルヴィンの魔法……すごかったね」
「そうでしょ!?」
パァッとお花が飛びそうな勢いで、ロロはきらきらした笑顔を振りまく。ロロも幼い容姿をしているけれど、笑うともっと幼くなる。可愛いなぁ。メルヴィンが大好きなんだな。
「マスターはすごいの!自慢のマスターよ!」
「ロロも、あんな魔法が使えるの?」
「いいえ」
「え?」
「あれは規格外よ。あたしは弱くて集落を追われた身だもの。身の丈に合った魔法しか使えないわ」
すっと目を伏せたロロの瞳には、何の感情も映っていなかった。メルヴィンはみんな迷子だったって言ってたけれど…わたしと同じように、ロロも行くアテのない迷子だったのかもしれない。
鏡のようなその目に焦燥感を覚えて、感情のままにロロを腕に収める。ぎゅうっと力を込めると、ロロが体の力を抜いて笑ったような気がして、少し安心する。こんな時、何か言えたらいいのにな…。
例えば、そう。メルヴィンのように、人を救える言葉を簡単に言えたらいいのに。
佐良はただ、腕の力に思いを込めるしかない。
「…サラ」
「ん…?」
「覚えておいて、あたしはティパーズキャットよ。あたしたちは夢を喰うの。夢があたしたちの縄張りなのよ」
「夢、を…?」
「そう。サラが悪い夢を見ても、あたしが助けてあげるわ、わたしの愛しい家族」
ちゅ、と佐良の頬に可愛らしい口づけをくれたロロは、頼もしい言葉とは裏腹に、幼い年相応の笑顔を見せてくれて、そこでやっと、抱きしめて良かったんだ、喜んでくれたんだとわかった。
素直なようで、素直じゃないなぁ。なんて、わたしが言えることじゃないかもしれないけれど。
たまらなく可愛い。もし妹がいたら、こんな感じなのかもしれないな。
「可愛い…妹にしたい…」
「妹? いいわね、それじゃああたしはサラみたいに綺麗な女になるわ!妹は姉に似るものなんでしょう?」
「た、たまらない…!」
力いっぱいロロをぎゅー!っと抱きしめると「苦しいわよ!」と胸元で抗議が上がるけれど、気にしない。
佐良はひとつ、大きな発見をした。ロロはすごく素直ってことだ。
言葉や言い方は強気で威勢がいいのだけれど、この子はすごく表情に気持ちが如実に表れる。今だって苦しいなんて言いながら、とろけそうな表情で笑顔を見せている。
「妹が可愛いよ〜」
「もう!仕方のない姉ね!」
「…きゅ……」
呆れたように言いながらも、ロロが佐良に嬉しそうに擦り寄っている時、ベッドの上ではひとりだけ取り残されたフーシュがちょっぴり拗ねていた。




