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9話:謎の男(イケメン)あらわる!4

多視点……無理でしたね。


あーでも桐谷くんの視点はちゃんと書きました。


それと文芸部の紹介で一気に登場人物が登場します。


すみません


気に入ったらブックマーク・評価していただけると嬉しいです!


また感想は励みになりますので、どうか気軽に書いてください。

11/29日、改稿致しました。


改稿前をご覧になったことがある方はどこが変わったのかを探していただけると嬉しいです。

 許嫁(いいなずけ)


 それはお互いの親の合意によって幼少の時から婚約を結んでおくことを言う。

 またはその当人同士。


 広い意味では婚約者……。


 嘘だ。

 嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ……。


 あるわけがない。だって高校生だぞ?

 そんな物語でしかないような話なんて嘘に決まっている。


 ……あぁ、だからか。


 ここで俺はようやく納得した。


 真星さんの口から進藤京(しんどうけい)という俺の目の前にいるコイツの名前が出てこないのは、そういうことが周りに露呈するのが嫌だったのではないか、ということに。

 先程コイツも『学校にバレたらヤバいだろ?』と言っていた。


 当然だ。


 そんなのがいれば、からかわれ、息のつかぬ暇もない日々がやってくるであろう。


 コイツの言葉は信じ難いが一応筋は通ってる……。


 ということは、俺が前にしていた予想はあながち間違っていなかったじゃないかああああああああああ!!


 しかも最悪だ。

 彼氏という場合ならまだチャンスはある。

 しかし、許嫁となると別だ。

 もし許嫁である真星さんと付き合えるとしたら、それは婚約破棄に繋がるのではないか。

 まあ、コイツなら別にいいんだけどなぁ。ウザいし。

 逆にしてやったりという感じになるな。

 問題は別にある。


 お互いの家族に迷惑がかかるかもしれないということだ。


 かもしれないじゃなくて、うん、かかるな絶対。


 たぶんこんな感じに……。




◇◇◇




 天蓋付きのダブルベッドがまず目に飛び込んでくる。

 寝ると気持ち良さそうだが、ごく一般市民の俺の感覚からすると、逆に寝れなさそうである。

 いや、そもそもこの空間は慣れている人には安らぐのだろうが、少なくとも俺は居心地が悪いな。

 そんな事を思いつつ、妙な感覚を感じて視線を下へ落とす。


 あまりにも(きら)びやかなので、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 布地が宝石でも使われているのではないかと思わせる豪華な絨毯(じゅうたん)が床には敷かれていた。

 いや、実際はこうもっと色々表現できるのだろうけど、それ以上の言葉は俺には浮かばない。

 とんでもない所だ……。

 目を見開き、背筋は思わずピンとしてしまい全身が固くなる。


 その光景に圧倒された俺は一、二歩後ずさりしてしまう。

 額には汗が浮かび、それらの光景から目をそらそうとするものの、手の込んだ装飾が施されている高貴そうな皿がずらりと並んでいた。

 くれぐれも近付かないようにしないという決意を胸に秘め、俺は一点を見据える。


 一目見てしまえば、それらのものが全てくすんで見えてしまうほどの美しさを放っている存在がそこにはあった。

 職人の手で時間をかけて作られたであろう純白のドレスを身に纏っている彼女──真星さんである。

 思わず目を奪われてしまい、ずっとここに立ち止まっていたくなるが、今の俺にはそんな余裕はなかった。


「逃げよう真星さん!」

「……八代くん……。でも、私は《彼》の婚約者なのよ?」

「分かってるよ」

「じゃあ!」

「分かってるぶん俺は真星さんをここから連れ出したいんだ。だから一緒に逃げよう!」


 手を彼女の前に差し出すが、彼女はなかなか取ろうとせず時間だけが過ぎていく。

 だんだんと俺の焦る気持ちが高まっていく。


「真星さん早く!」


 俺はもう一度手を彼女の前に差し出す。

 すると俺の勢いに根負けしたのか、彼女の手がゆっくりと伸ばされ、俺の手に触れた。

 その手を強く握り、俺は彼女を連れて部屋を出る。


 しかし──


「見つけたぞ!」


 鋭い声が飛ぶ。

 黒いタキシードを着た人物が数人前方に現れる。


「やべ、もう見つかっちまったか。真星さんこっち!」


 俺達は(きびす)を返し、違うルートを取ろうとする。

 が、そのルートも黒いタキシードを着た人物がいて、俺達は八方塞がりになった。


 ジリジリと詰め寄ってくる彼等。

 彼女と繋いだ手からも伝わってくる汗。


 絶対絶命と思われたその時、張りのある声が彼等を制した。


「待て」


 彼等から割って入ってきたのは四十ぐらいの男性一人と女性二人であった。

 真星さんの方に目をやると、彼女は目を見開いて身体をガクガクと震わせている。

 ひどく怯えた声で彼女は──


「お母さん……。それに進藤くんのお父さん、お母さん……」

「唯ちゃんこれはどういうことなのよ!」


 涙をボロボロと流しながら言ったのは彼女の母親だ。


「お母さんごめんね。でも私はやっぱりこうすることに決めたの」

「唯ちゃん……」


 悲しげ声を漏らしたのはアイツの母親だ。


「進藤くんのお父さん、お母さんには本当に申し訳ないと思っています」


 真星さんが深々と頭を下げる。

 その動作と共に親三人はどっと肩を落とし、泣き崩れた。



 見てられない……。

 結果として真星さんと付き合えるような展開になったけど、これは不憫すぎて嫌だ。


 はあ……。

 これがもし本当だったら、本人からも()いて、綺麗に玉砕したいな。

 せめて最後は彼女の姿をこの目に焼き付けたい……。


 今俺の顔は病的なまで白く青ざめているだろう。

 そしてコイツが満面の笑みで俺を見下している姿が浮かぶ。

 まあ、いちいち見たりしないけど。


 とりあえず教室に戻って確認しよう。


 信じ難いことではあるが、もしそうであった場合を想像してしまうのだ。

 足がフラつく。視界が朦朧とする。


「どこに行くんだ?」


 耳の遠くにアイツの声が入ってくる。


「帰るんだよ」


 振り返らず、それだけを答えた。

 アイツは納得したのか、「じゃあ俺は飲み物でも買ってこようかな」と言う。

 でも俺にはどうでもいい。覚束(おぼつか)ない足取りで、俺は教室へと向かった。




◇◇◇




 時刻は四時半。

 俺は四棟の二階にある文芸部部室にいた。

 部長の誰かさんは教室で真星に勉強を教えているらしい。まあ、どうでもいいけど。


 あいつに押し付けられた文芸部副部長も大分慣れてきた。

 でもまあ、アイツや俺よりもよっぽどそういう役職に相応しい奴はいるはずなんだが。


「暇だな……」


 読んでいたミステリー小説を机に置き、ふと漏れ出した一言。

 それを目を細めてこっちを見つめてくる奴がいた。


 少し野暮ったく腰まで伸ばした(あわ)色のストレート。しかも眼鏡をかけていていかにも大人しそうな雰囲気を醸し出していた。


 こいつの名前は早見冬香(はやみふゆか)

 ちなみに部長や副部長に相応しい人物はこいつだと俺は思っている。


 部員は全体で十二名。

 三年が四名。ただ今日は受験勉強もあってかいない。

 二年が四名。あいつが休みなのと、幽霊部員が一人いる。

 一年は四名。こちらは全員参加と真面目である。


 決して実質活動人数としては多くはないが、大丈夫だろう。


「……はいはい。すまなかったな暇じゃないよな」


 そう俺が訂正すると、目を細めるのを止め、「よろしい」と言いそうな笑顔になる。


「あ、早見」

「なあに? 桐谷くん」

「文化祭の文集以外に何かやることとか依頼きてたっけ?」

「えっとー……」

「はいはいはいはいはいはい!」

「久野、はいは一回でいい。で、何だ?」


 元気よく手を挙げたのは久野太陽(くのたいよう)。太陽という名前の通り元気がいい奴だが、うるさいと思う時があるのであいつと重ねることがある。


「和也先輩! 確か演劇部の脚本依頼を受けています!」

「あぁそうだったな……だりぃな。俺は脚本とか分からないからパスな」

「……なら私がやってもいいでしょうか……?」


 蚊の鳴くような小さな声で、俯きながら言うのは相良鈴音(さがらすずね)

 極度の恥ずかしがり屋で、何かものを言おうとすると俯いてすぐ顔を真っ赤にさせる。

 もう少し頑張れよ、とでも応援しておこう。


「相良やってくれるのかー。それは非常にありがたい」

「……はい、桐谷先輩……」

「すずねんやってくれるの!?」

「ほんとうにやってくれるの!?」

「う……うん」

「すずねんありがたやー」

「ありがたやー」


 相良を今崇め奉っているのは、残り一年女子二人だ。

 相良のことをすずねんと呼んでいたのは上坂茜(こうさかあかね)で、もう一人が水島留(みずしまとまる)


「じゃあ決まりだな」


 各々声を上げて、一つ事が片付くと忘れていたことを思い出した。


 あいつにも言っとかないとな。


「んー俺はこれで帰るわ」

「え、帰っちゃうんですか和也先輩!?」

「用を思い出してね」

「そうなんですかー……」


 俺が帰ると知ると、久野は子犬のようにしょぼりする。


「それじゃお疲れ様」

『お疲れ様でしたー』


 温かい声が俺を見送る。

 しかし、一人だけ俺に声をかけてきた奴がいた。


「あ、桐谷くん」

「どうした早見」

「八代くんをたっぷりこらしめておいてね」


 笑顔でこいつは優しく言ったが、裏には何かドス黒いものが渦巻いているような気もする。

 俺はこいつの頼みを軽く受け流し、あいつと真星がいるはずの教室──二年六組へと向かった。


 カッ、カッと空しく乾いた足音だけが廊下を響かせる。


 どこか不気味で、まるでここだけ別の世界であるような気がした。


 三棟に入ると、三年生が参考書なり教科書を開いたりして勉強をしている。


 ようやく二棟に着いて、俺は三階へと向かうため階段を登った。


 登りきって右手側に向かって歩き出すと、前から順に【2―8】、【2―7】……クラスプレートが並んでいる。


 俺は目的地の【2―6】のクラスプレートにさしかかる手前で止まった。


 窓が開け放たれたままで、どうやら彼等はいるらしい。

 ふと外の景色を見ると、空は雲が出てきているようだ。


「おーい八代いるかー……って、真星だけ? 八代は?」


 教室に入るが、そこにあいつの姿はなく、真星一人だけである。


「……桐谷くん?」


 しかも真星は怯えた目でこちらを見つめていた。


いつも『キョーカノ』を読んで下さってくる方々。


感謝の気持ちでいっぱいです……本当にありがとうございます。

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