Ⅸ
ハル達と再会した次の日。
・・・・の四時限目の終了のチャイムが鳴ったと同時に聖さんが動こうとしています。
ピンチです。めんどくさいです。関わりたくないです。的な視線を取り敢えず数学教師の雪村 幸先生こと、雪ちゃん先生に送ってみる。
「零香ちゃん!お昼た「聖さん。教材を三年数学教室まで運んでもらえるかしら。」
「・・・はい。わかりました。」
溜め息を吐きながらも面倒見の良い先生は助けてくれた。ありがとう雪ちゃん先生。
こうして僕は、聖さんの魔の手から逃れる事が出来たのでした。めでたしめでたし。ちゃんちゃん。
そんなわけで、僕は久しぶりに教室で昼食を済ませようとした。
「いただきます。」
「なんや、うまそうやな。一つもらうで。」
お弁当を食べようとした矢先に蒼にガトーショコラを一切れ食べられた。箱に詰めてあって、小さめのホールを8等分してある。昨日作りすぎたので後でハル達と食べようと思っていたのだ。
「ちょっと、何するんですか。」
「別にええやろ。それにしてもうまいな。これ。どこで売っとるん。」
「僕が作ったんですよ。折角食後の楽しみにしていたのに・・・。」
「!これを零香が作ったんか。」
蒼はケーキと僕の顔を交互に見て驚いている。
「失礼な。この程度の簡単な焼き菓子ぐらい誰だってできますよ。」
ったく、人を何だと思っているんだ。などといつものように蒼と軽口を交わしていたら突然後ろから抱き着かれた。
「レイ、見つけた。」
「・・・シグレ。どうしたの?こんな所にきて。」
「レイと一緒にお昼食べようと思って、探してたら、レイのお菓子の匂いがして、たどってみたら、レイがいた。」
「・・・そっか。取り敢えずシグレ。」
シグレよ。君は犬か何かなのか。匂いで分かったって・・・。
「何?」
「離れようか。」
「嫌だ。」
この体勢だと食べづらいから早くどいてくれないかなぁ。
「お昼食べに来たんじゃないの?」
「・・・うん。」
そう言いながらも中々離れようとしないシグレにしびれを切らしたのか、蒼が止めに入ってくれた。
「そのくらいにしとき。嫌がっとるやろ。」
さりげなく僕の手をひき蒼の方へと引き寄せてくれた。
『ねえ、蒼。』
『何や。』
『助けてくれたのはいいけどさ、この体勢は何なの。』
何故か今度は蒼の膝に座らされている。
『こっちの方が面白そうやろ。』
クツリと喉を鳴らし笑う蒼。そうだった。こいつ性格悪いんだった。
「レイ、こいつ、誰。」
シグレから冷たい空気が流れてくる。とても不機嫌そうだ。
「神宮 蒼。僕のクラスメイト。シグレ、わかってて聞いてるでしょ。」
「・・・こいつが、生徒会会計なのは知っている、けど、僕が、知りたいのは、レイとの関係。」
そう、何を隠そう蒼は一年にして生徒会会計なのである。流石純血の吸血鬼。
「ただのお隣さんだけど。」
「お前こそ零香のなんなんや。やけに仲が良さそうやけど。」
「時雨沢 蓮魔。レイとは幼い頃からの・・・友人。」
僕達の関係は一言では表しずらいからそのくらいが妥当だろう。
「いい加減離してくれないかな蒼。」
さっきから周りの視線が痛いんだよね。それにシグレの存在に気付き始めているし・・・
だんだんと教室が騒ぎ始め、人の視線が集まり始める。
〖ザワザワ…時雨沢様だ。どうしてあの方がここに。…なんであんな子に抱き着いてんの。…何時から居たんだ。…むかつくんですけど何様のつもりなのあの娘。…ザワザワ〗
イケメン二人に囲まれているのが地味なやつだから余計に色々と言われる。あー聞こえてますけど。大丈夫ですか。嗚呼、態と聞こえるようにしているのですね。でもその程度の術式だと彼らにも聞こえてしまいますよ。ほら、・・・言うのが遅いって?知りませんよ。やったのは貴方達でしょうに。
「五月蠅い。黙れ蛆虫共。」
「同感やな。ちと言い過ぎとちゃうん。」
絶対零度の微笑を浮かべる蒼と、不機嫌なシグレのオーラで教室の空気が凍り付く。
「おい、お前ら。そのくらいにしておけ。」
「そうよ~。それ以上やったらレイに嫌われるわ。」
僕達の背後に現れた二人は若干蒼を睨んでいる気がする。まぁ、そんなことより、
「やけに廊下が騒がしいと思ったら、君達だったんだね。」
「嗚呼。折角再開したのだから一緒に昼でもと思ったのだが。」
「レイのクラス聞くの忘れていたことに気付いてね。」
「君達のクラスなら僕一人くらい簡単に・・・あ、解除するの忘れてた。」
僕は普段から聖さんに追われていたので、探索魔法類が効かないように細工をしている。僕が許した者以外の者からは探索不可になっている。その筈なのにもかかわらず聖さんには見つかってしまうのだから彼女の運は相当のモノだ。
「やはりそうか。」
「しかし流石ね。私たちの力をしても破れないのだから。」
「それは単に君たちが本気を出していないせいでしょう。」
「それはお前も同じだろう。」
ふふ、お互いにニヤリと笑い合う。
「取り敢えず、場所を移動しようか。」
「嗚呼。此処では碌に食事もできそうにない。」
「そうね。あの場所を借りましょうか。」
「うん。」
『なあ、零香。』
『何。てかいい加減に離せよ。』
『それはさておき、お前やっぱりおもろいわ。』
『は?それってどおゆう意味だy「さて、そろそろ離れましょうか。」』
ぐぃっ
ハルに腕を引っ張られ蒼と引き離される。
「有難うハル。」
「どういたしまして。」でも二人っきりでこそこそと何話していたの。」
「別に「俺達は仲ようおしゃべりしていただけや。」
にこにこいや、ニヤニヤしながら蒼は意味深に僕を見て話を遮った。
「なあ、零香。」
「そう。でも今私はレイに聞いていたのだけど。」
クスリとハルが笑う。
「礼儀知らずの坊や。」
「ククク。貴女こそたかが会話の一つで目の色変えるんて、まるで幼稚やないですか。」
「ねえ、お嬢さん。」
蒼。地雷踏みすぎだ。あなたの漢字、貴方⇒貴女になってたし、思いっ切りお嬢さんて・・・。
にこにこ、にこにこ。
にっこにこにぃ。嗚呼、黒髪ツインテールのあの娘が・・・(現実逃避)
口は笑っているのに目が。二人共器用だな。
そろり、そろりと後ずさる。
『シュウ、シグレ。先に行こうか。』
『うん。此処は、五月蠅いし・・・。早く、いこ。』
『嗚呼。そうするか。』
扉まで後少し。
三、二、一。着いた。後は開くだけ。
ガラっ「れ~い~かちゃん。お昼たべ「少し黙って下さい。」
ゴン。聖さんの首に少し衝撃を与え、僕はその場を離れていった。
展望室居間
「はぁ。やっと食べられる。」
ここまで来るのにそうかからない筈だが、精神的に疲れた。
「レイ。お前という奴は。」
先程の行為を思い出しているのかシュウにあきれた目で見られた。
「別にいいでしょ。あの時は仕方がなかったのだから。それよりこれ食べて。」
ガトーショコラを取り出すと二人共目を輝かせる。
「レイの、手作り、ケーキ。」
「ハルの分は残しておいてね。」
「・・・わかった。」
シグレがものすごく落ち込んでいる。なんだか小動物を見ているようで微笑ましい。
「レイ。」
「何。シグレ。」
ぺろり。突然シグレに右頬をなめられた。唇ギリギリ。
「っ!なにするの。」
「ここ、ついてた。」
どうやらケーキのクリームが頬に付いていたらしい。
「それなら教えてくれれば良かったのに。」
驚いて損した。などと呟いていたら、
「お前なぁ。気にするところはそこではないだろう。」
と言われた。
首をかしげていたら溜め息を吐かれた。
何故だ。
遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。
よくよく考えると、活動報告に書いても、見てもらえない確率の方が大きい
ことに気付くも時すでに遅し。
取り敢えずひと段落したので、成るべく上げられるようにします!
・・・たぶん。
零香「おい、そこは言い切ろうよ。」
本作を読んで下さっている皆様に最大級の感謝の気持ちとお詫びを。
そして、この様なダメダメな作者ですが、今後も宜しくお願いします。