Ⅷ
トントントン
「黒城 零香です。」
「入れ。」
「失礼します。」(ドアを静かに閉める)
昼休み。いつものように屋上で時間をつぶそうとしていたら、理事長に呼び出された。
「ご用件はなんでしょうか。」
「堅苦しいことは好かん。楽にしろ。」
「では、お言葉に甘えて。用件は何?紅葉。」
「おぬしという奴は。」
はぁ、と溜め息を吐くふりをしながら楽しげに笑う紅葉。
「取り敢えず形式上おぬしに問う。生徒会に入らぬか。」
「お断りします。てゆうか無理でしょう。」
生徒会とは、成績優秀者兼家柄兼人望の厚い者という名目のもとに行われる全校生徒による多数決によって選ばれた6名+2名(生徒会役員が自由に指名してよい。仮役員として期間を決めて雇うのもありだし、正式に役員にするのもあり。指名しなくてもよい。)で構成されるが、全員が関係者もしくは人外である。
「僕は関係者ではないし、そもそも知っていることは隠しているのだから。」
「そうじゃったのぅ。其方はまだ関係者ではなかったのぉ。」
「出来れば一生関わりたくないんだけど。」
「・・・・・(無言の笑み)・・・・」
「はぁ。用件はそれだけ?」
「そうじゃ。」
「じゃあ僕はこれで。」
「おお、そうじゃ零香。」
「何。」
「おぬしにプレゼントがあるぞ。」
「なんの?」
「それは後のお楽しみじゃ。『展望台へ後で行ってみよ』」
「そう。失礼しました。」
・・・プレゼントって何だろうか。
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「零香ちゃん(^^♪」
何この娘。僕コンナコシラナイ。
兎に角全力で逃げよう。
「あっ。待ってよぉ。」
誰が待つか。教室の扉を屋上に繋ぎ逃げ込む。
「はあ。しつこいなあ。」
下の階から僕を探す声がする。〖零香ちゃん。どこにいるの~。〗
あれから毎日僕は聖さんから逃げたり、蒼からからまれて女子から嫉妬の視線を送られたりとめんどくさい不本意な学校生活を送っている。持てる力を最大限に利用しているため今のところは捕まっていないがどうなることやら。なんせ彼女はヒロインだ。人探索能力が半端ないほどにある上に、運までもが彼女に味方しているのだ。
取り敢えず身を隠そうと屋上から渡り廊下に移動し、秘密の通路を通り天文台へ行く。此処はほかの空間とは別離していて、一つの屋敷のような造りになっている。(紅葉もとい理事長から教えてもらった。理事長とは古い知り合いだ。)
ギイイー重苦しい音の割にはすんなりと開くドアを開け中に入る。一息つきながら螺旋階段を登り大広間に向かう。
「相変わらずだなお前は。」ふと上方から声が聞こえた。懐かしい、安心する声。開かれたドアの近くに寄りかかり本を片手に此方を見た人物に僕は目を細め笑みを浮かべる。
「やあ、シュウ。此方にいたんだ。君も此方に来ているということはあいつ等もいるのかな?」
「嗚呼。」
「それにしても・・ぷっ、くくくはははは。」
僕は彼の容姿を見て思わず吹き出してしまった。
「な、何故笑う。」
「だって、シュウ。その頭。」
「っ!しょうがないだろう。此れは生まれつきだ。」
彼の髪はダークグリーン色。この世界では気にすることではないのだろうが、僕たちが見てきた中では二次元の世界でのことで、実際に見てみるとそして中身があのシュウだと思うと笑いが止まらない。
碧叶 柊呀それが今世の彼の名前。メドゥーサの一族の血をひく者。二年。黒縁眼鏡をかけている。瞳は黒だが、能力を使うと赤くなる。
「それに、あいつよりはましな方だ。」
「ハル達もいるの?」
「嗚呼。そこの部屋に・・・「シュウ~。誰と話してって、レイじゃない!」
「やあ、ハル。・・・ふ、あっははははは。」
「な、なによ。なんで笑うのよ。ここは感動の再開でしょうに。」
「さ、最高だよ。シュウ。」
「だろう。」
「なによ。二人して。」
確かにまだ、見方によれば黒にも見える(どう見ても深緑だけど)シュウの方がましなようだ。何せ目の前の男の髪は、薄紫色で、少し長めの癖のある髪を横で束ねている。どう考えても前の現実ではありえなかった色。それに容姿にしてもクール系の綺麗な顔立ちで、女と見間違えそうだ。どう考えても
「ハル。生まれてくる性別間違え「それ以上言ったら口ふさぐわよ。」・・・」
流石にどうやってとは言えなかった。てか色気半端ないんだけど。なに、この差。
羽衣 夜それが今世の彼の名前。口調があれだが、決してオネエではない。(本人談)夢魔の血をひいている。二年
「レイ。会いたかった。」
そう言って後ろから抱き着いてきたのはシグレ。色素の薄い水色に近い色の髪に、サファイアのような瞳を持つ。この三人の中では一番背が低い。僕よりは大きいが。彼も僕と同様に黒のフードを被っている。逆十字の模様があり、格好いい。時雨沢 蓮魔それが今世の彼の名前。無口な無気力系男子。アマイモンの血をひいている。一年。三人とも攻略対象者だ。
「シグレ。分かったから離れろ。」
「嫌。レイ、すぐいなくなる。」
「大丈夫だよ。ほら、此処にいるでしょ。」
シグレが安心するように頭を優しく撫でてやる。
「ん。」
「おい。いい加減離れろ。」
「そうよぉ。いくらレイが流されやすいからってしていいことと悪いことがあるでしょ。」
?どういうことだ。疑問の視線をシュウに向けると溜め息を吐かれた。
「レイ。お前は無防備すぎる。」
「は?」
「とにかく、シグレ。離れましょうね。」
「チッ。」
・・・シグレ今舌打ちしたよね。あれ、君そんな子だったっけ。気のせいだって。嗚呼、そう。聞かなかったことにするよ。・・・まあいいや。それよりも、
「君達。生徒会は「「「断った(わ)」」」・・・やっぱりそうなんだ。」
シナリオ通り彼らは生徒会入りを断ったらしい。委員会の委員長はやっているから一応は生徒会側になっているが、中立辺りにいるようだ。
この学園では、主に悪魔系統の者が率いる生徒会派と、天使系統の者が導いている風紀委員派。その他中立派の三系統に分かれている。人間と人外の共存を裏の方針にしているため、人間が気付いていないだけで結構混じって生活しているのである。勿論ばれれば厳罰が下される。罰の内容は天使も悪魔もさして変わらないのが現実である。
「まあ、妥当な判断だよね。」
苦笑しつつ返す。
さてと、全員の顔を見て互いに笑いつつ、一言
「「「「久しぶり」」」」
その後も雑談を少しした後、授業があるからと言って彼らと別れた。
ありがとう。紅葉。
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ふっ。
「届いた様じゃな。」
シュウ、ハル、シグレは、零香と同様に時を繰り返してきた仲間です。
零香が笑ったのは、何回目かの時にシュウとハルが、馬鹿にし、絶対になりたくないといった髪色に近い色になっていたからです。色自体は馬鹿にしていません。
零香は基本無表情ですが、彼らの前だと感情を表に出します。