Ⅰ
高校の入学式。私は、桜の花が満開に咲き誇る風景をぼんやりと見つめていた。それにしても眠い。なんでったってここの校長の話は長いんだ。欠伸を噛みしめながら眠気に耐える。嗚呼、面倒くさい。どうせこの後は教室でまた面倒な話を聞かされるのだろう。はぁ、早く終わんないかなぁ。ゲームしたいな。この頃私にははまっているゲームがある。それはいわゆるヤンデレ乙女ゲームというやつでその中でも「紫音学園」が一番のお気に入りだ。舞台は創立千年以上もする歴史のある私立紫音学園。(・・・細かいことは気にするな。所詮ゲームだ。)そして攻略対象のメインは見目麗しい生徒会と風紀委員達だ。とある事情で編入してきた主人公が一人の女子生徒の死をきっかけに生徒会の正体を知ってしまい・・・という在り来たりな話なのだが、まあお察しの通りルート次第で人がどんどん死んで逝ったり、攻略対象がヤンデレ化してしまったりする。そしてなんといっても、声優さんが豪華なのだ。全て私の好きな声優で、しかもその役にピッタリはまっているのだ。(既に全クリしている)そんなこんなで考え事(妄想)をしているうちに下校時刻になっていた。
交差点の横断歩道で信号待ちをしている時だった。何か黒いものが道路の真ん中に?違う、猫だ。黒猫が怪我をしていて動けないんだ。あのままでは轢かれてしまう。そう考えた途端に私は駆け出していた。
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迫ってくる車、鈍い痛み、赤、真っ白、赤、血、赤い血、赤い赤い誰かの血?・・・違う。私の血・・・嫌だ、死にたくない、助けて、嫌だ、まだ生きていたい。ねえ、誰か、助けてよ・・・・・・・・・・・・・・・『助けてやるよ、お前のこと。』暗闇の中、あいつはニヤリと笑った。