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誤算

作者: 佐賀かおり
掲載日:2026/08/09


「アンタにとっても悪い話じゃないと思うがの」


 村長(むらおさ)はそう言うと目の前の若い男を見た。


 人目をひくほどに整った顔立ち。

 八百年以上も生きているのにまるで若者のように(なめ)らかな肌。

 彼が人、(あら)ざるものである証拠であった。


「確かに悪い話ではなさそうだが……堂々と人間の生き血が吸えるとは信じられん」若い男は困惑して言った。


「ああ、コソコソする事はない。人助けだと思って堂々と血を吸ってくれ」

「しかし……」


「まさに人助けなのじゃ。ガリガリに()せ骨と皮になっても(しん)(ぞう)が止まるまでは何日も生き続ける……(むご)い事じゃ、かわいそうじゃ、苦しみを長引かせたくはない、血を吸ってやってくれ」


「……そうか、そこまで言うなら……引き受けよう」


「ああ、お願いする」

 村長は着物の(えり)をただすとそう言った。

 だがその瞳は(うれ)いを帯びていた。


 そして半年後。


 山のふもとの小屋から顔を出した吸血鬼は鼻を動かしながら(つぶや)いた。


「人間の匂いがする……血を吸いに行かねば」


 だが彼は山を見ながら思うのだ。


 確かに堂々と血が吸える

 ある意味、人助けだ


 だが一つだけ思わぬ落とし穴があった。


 若い女じゃない

『吸血鬼といえば若い女の血』だろうに若い女は一人もいない


 この半年、ばあさんの血、ばっかりだ


 彼はそう思いながら


 姥捨(うばす)て山と呼ばれる裏山を見すえた。




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― 新着の感想 ―
面白かったです。やっぱりおばあちゃんの血は美味しくないですかねwww
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