さくらー図書館の怪異と紙人形1
桜坂まほろ…時々霊が視える女子高校生
春吉 律…幼馴染 寺の息子
私の母方のおばあちゃんは、私が生まれる少し前に病気で亡くなったそう。
子どもの頃、おじいちゃんに「さびしい?」と聞いたことがある。
神主だったおじいちゃんは
「おばあちゃんは、神様と一緒にいるんだ。
そしておじいちゃんのお仕事が終わって、来るのを待ってる。
今は、まほろも、まほろのお母さんも、律くんもいる。さびしくないよ」
そう言って、私と律くんの頭を大きな手で撫でてくれた。
神道では「人は、神様から生まれて、死後、神様に帰る」のだそう。
おじいちゃんは、今、おばあちゃんと、神様と一緒にいるのかな。
嬉しいかな?
幸せかな?
でも……私は、季節が巡っても、まださびしいよ。
♢
幼馴染の律くんが、放課後、市の図書館で調べ物があると言ったので、学校帰りについていった。
古地図とかお寺の歴史とか調べたいのだそう。
さすが律くん。
お寺を手伝いながら、学校以外の勉強もしてる。毎日コツコツ積み重ねる姿勢は本当に見習わないといけない。
とは思うけど、私は、特に目的もなく、館内をうろうろしていた。
あまり人は多くなかった。古い本の匂い。
目の前を何か白いものが、ひらりと横切った。
目で追うと、紙片……?
その紙片は、風もないのに、本棚の間をひらひらと動いている。
私は、つい、手を伸ばしてそれを押さえた。
バッタを捕まえる時みたいな感覚。
数センチ幅の細長い紙なんだけど、角は切り落としてある。
長方形じゃなくて、太めの十字架のような形。
十字架の横部分の左右に下から一本ずつ、対称的に切込みが入っている。
……何かに、似てる。
あ……わかった、大祓の形代。紙の人形。
思いや、災いを紙にうつすもの。
そう思ったら、その紙片は、私の手から、ひらりと飛び、本棚へ。
意思をもった動き。
たぶん、何かを探している。そう感じた。
そして、あっちにひらひら、こっちにひらひら、一つの場所で止まった。
歌集のコーナー。
その棚で、両手部分をハタハタさせている。
私は、その辺りの本をめくってみる。
ざっと目次など確かめてみるけど、何を探していいか分からない。
全部読んだら分かるのかな?
「何か探してるのか?」
律くんが後ろから、覗き込んだ。
「ううん。何か気になって」
私が数冊目の本をめくった時、ひらり、と紙が落ちた。
『春夏秋冬 花を思ひて 過ごしけり
空より君の 春を見まもる』
「短歌……?」
紙人形が、嬉しそうに、はためいている。
(これを探してたのかな?)
律くんが私から紙を受け取って、しばらく眺めて、言った。
「これは、男性が、女性に当てた歌だろうな。そして、おそらく……死を覚悟してつくった」
律くんの言葉に、胸がざわめいた。
紙人形が探していたのは、この歌。
でも、それだけじゃない気がした。
胸が鳴った。
紙人形にやどった思いが、この歌を探していたならば。
歌を作った人なんだろうか。




