表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/5

つくもがみ―動く人形と約束1(漫画あり)

挿絵(By みてみん)


神社には、ほんとに多種多様なものが放置される。

その日は、人形だった。


お守りやお札は、分かる。

神棚や、ぬいぐるみ。ひどいときは仏壇やお位牌なんてのもあった。


どうかお寺さんに相談してください。


今日は日曜日。初夏で天気がいいので、私は実家神社の草むしりをしていた。


敷地の隅に、古い木箱があった。

「廃棄」と紙が貼ってある。


私は、少しげんなりしながら、箱を開けた。

中には紙包みがあって、紙を開くと、髪の毛が見えて、ぎょっとした。


日本人形だった。


おかっぱ頭の女の子。

目はガラスかな? 黄色い花柄の着物。


古いものだろうけど、大事にされていたのだろうなという感じがする。

捨てづらいのは分かるけど……。


木箱をよく見ると、筆で文字が書いてある。


「……呪子? のろいご?」



ゾッとして思わず取り落としそうになった。

そう思って見ると、人形の目が怖く感じる。

とりあえず社務所に保管しておいて、たまにお手伝いに来てくださる神主さんに相談してみようと思った。


「まほろ」


声の方を見ると、布袍姿の律君が立っていた。

相変わらず、さわやかで良く似合うけど、鳥居を背後に僧衣なのは何だか不思議。


「檀家さんに和菓子貰ったから。好きだろ?」


律君が紙袋を差し出す。


「いつも、ありがとう。お茶を煎れるから、一緒に食べよう?」


律君は首を振った。


「今日また法事だから、急いで帰らないと」


忙しいのに、わざわざ持ってきてくれたんだ。優しい。


律君を見送って、私は倉庫掃除に取り掛かった。


倉庫には、神事で使う様々な道具が入っている。

神主だった祖父が亡くなって、使わなくなったものも多い。


大切な大幣の紙垂も少し焼けてしまった気がする。

祖父の神事の姿を思い出す。神々しかったんだ。


替えることはできるけれど、祖父が最後に作ったものだから、このままにしておきたい気がする。

倉庫には他に、本、着物、着ぐるみにクリスマスツリー。



「ものを大切にすると付喪神という神様になるんだぞ」


と祖父は言っていた。

全てに思い出があって、捨てられない。


カタカタカタカタ……


隣の部屋で、音がした。

来客かと思って覗くと、さっき私が置いた木箱から聞こえたみたい。

観察するけど、特に変わった点はなく、ホッとする。


私が背中を向けた瞬間、



ガタン!


と木箱が倒れた。


ゴロン、と人形が転がり出て来る。


テーブルが傾いてたんだろうか?

恐る恐る人形に手を伸ばす。


人形と目が合う。


口元から、頭に直接響くように、声が聞こえた。


吐息のような、途切れ途切れの声。



「ヤ……ソ…ク…」



気のせいかな。

私は、木箱に人形を戻して、作業に戻った。



翌々日。


学校帰りに社務所の鍵を開けて入る。

足元を見てびっくりした。


日本人形が倒れている。


昨日置いた場所から3メートルくらいの場所。


入っていた木箱は、テーブルの下に落ちていた。


(来客か、泥棒?)


そう思った。


でも、鍵は確かに閉まっていた。

鍵は私しかもっていないはず。


一見した限り、侵入された様子もない。


スマホを握ってどうしようか迷っていると、


うつぶせのばんざいポーズで落ちていた人形の手が、わずかに動いた。


(まさか)


もう一度よく見てみる。


ずっ、と。


やはり、わずかに動いた。


両手で体を引きずっているような動き。


顔は下を向いているので、見えない。


ほんの数ミリずつ。


外へ、進もうとしているようだ。


驚きすぎて声も出ない。


泥棒とどっちが良かったのか迷うところだ。


また人形の顔の辺りから、声がした。



「ヤ…ク…ソ…ク…」



「約束?」


何のことだろう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ