第25話 魔橋の山⑧
「クソっ!どこにいる!探せ!」
「既に外へ出ている可能性も!」
「検問だ!橋を見張れっー!」
教会内を慌ただしく信徒たちが駆け回る。
火刑の準備は途中で放り出され、もはや町民たちに醜態を隠す気もなく信徒たちは必死に捜索をしている。
いくら、魔橋のおかげで発展したとは言え、山奥の辺鄙な町である。信徒の数も致命的に足りず、かつ教会への不信感がある土地だ。町の人々は冷ややかな、どこか嘲りのある笑顔で信徒たちを眺めている。
「落ち着きなさい!」
プロリン師が一喝する信徒たちは先程までの慌てようは嘘のように静かになった。
「良いですか。もし、脱獄をしようと思うのならばあの部屋です。防御魔法でも掛けて運任せに山肌を転がるのが一番。それをしないということはまだ教会内にいると考えるのが自然でしょう。橋へは1人づつ2人で十分。余った者は教会内を念入りに、気を付けて、命に変えても探し出しなさい!」
「ハッ!」
プロリン師、身長は低いながらもその炯々たる眼光と過激派として僅かでもイャザッタへ疑いの心を向けることへの厳罰で恐れられてきた、その人間性が信徒たちを指揮する。
先程まで好様だと眺めていた町民たちもいつの間にか家屋の中に入り、戸を閉め自分たちも巻き込まれないようにしている。
(流石に混乱に乗じて外に……は楽観的過ぎるか……)
教会の窓から身を隠しながら外の様子を麻友は眺めている。
(牢獄を出るまでに7人殺ったのは良い。だけど、まだ橋へ行った2人を除いたって17人いる。その上プロリンもだ)
教会内を物色し、なんとか儀式用ナイフを複数見つけたが、肝心のアレが見つからない。
(不意打ち以外で数を減らすのはあたしには無理だ。アフラは……まだ殺しには抵抗があるはずだ。早く探さなくちゃだな……)
「こっちは探したか!」
「ちっ!」
部屋の外から信徒たちの声が聞こえる。教会の中を逃げ回っているだけだとジリ貧だ。早く例のものを見つけて数を減らさなきゃ殺されるのは目に見えている。
慌てて部屋を出て、また別の部屋を物色する。時間だけが刻一刻と過ぎていった。
*
「情勢は大方予想通りです。……ですが、このままでは殺されますよ」
町中、教会から離れた屋根の上で信徒たちと麻友の様子を見る影があった。その人物は1人、火の点いた蝋燭を片手に戦況を見ている。
「相変わらず、スパルタですね。それに甘香さんと麻友さんはお館様のお気に入りでは?」
蝋燭の炎が勢いよく燃える。風はほぼ無いのに炎の向こうの主が何か言ったのだろうか。
「途中まではお嬢様の言う通りにしますが、イザという時は手助けしますからね」
そう言うとフッと蝋燭へ息を吹きかけ火を消す。
「お嬢様の我儘にはホトホト苦労しますね……。そんな、選り好みするから人材不足なんですよ……。ハァ、お館様の様に誰でも愛してあげれば良いのに」
恍惚の表情を浮かべながらその者は見守るのであった。
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