第18話 魔橋の山①
突き刺すような陽光。晴れた空がその殺意を向けてくる。それとは矛盾するように身体に感じるのは雪の冷たさである。
「クチュンっ……寒ぃのに陽の光が痛くて暖を取る気にもなれねぇ……」
雪に乱反射した陽光が容赦なく肌を焼き付ける。だが足元から立ち上る冷気は氷点下すれすれの温度を保ち、まるで体を凍らせようとしてくる。
ここはリンベへの道中、マリンサ村の北にある巨大な山々――ブランモン山脈である。
(1合目から富士山に登ったことはありますが……流石にここまでではなかったですね……)
普段なら小言を言うアフラですら根を上げ始める。
当然だ。標高もさることながら、食事もろくに取らずこの雪山を踏破しようとしているのだ。
「なんで、暦の上じゃ春どころかそろそろ初夏だろ」
天候に文句を垂れても仕方ないが、そうでもしないと進めない。
アフラと交代してすでに何時間か歩いたが、気持ちは楽になっても肉体的にはそこまで回復する訳では無い。
「あー、塩っぱいくて温かいもん……ラーメン……湯豆腐……土瓶蒸し……」
(こっちの世界には……無いですよ……。ハンバーグ……シチュー……カツ丼……)
意識が飛びそうになりながらもなんとか歩き続ける。ここまで満身創痍なのに山道を歩き続けられたのは、山道が想像以上に整備されているからだ。
ガラガラ
遠くの方から荷馬車の音が聞こえる。
「た、助かった……」
遠くの方を見ると丁度山間にかかった橋の上をキャラバンが通りかかってるのが見えた。
さっきまで辛かったのに、目指す場所が見えるだけで不思議と力が湧いてくるものだ。あたしはキャラバンへ駆け寄っていった。
*
「かぁ~蘇る!」
キャラバンから買った干し肉にヤギの乳、岩塩が疲れた身体に染み渡る。
「町も近いみたいだし、今夜か遅くとも明日には、温かいベッドで眠れそうだな」
(私に変わって、食べさせてくれませんか……)
「けッ、そのくらい我慢しろ、聖女さま。腹減ってんのはこっちもだ」
(そんな……)
最近、メレンゲの件以降、絆されてきたがアフラの事は嫌っているのだ。当然、飯をやるつもりは無い。
「にしても、こんな山奥なのに山間には必ず橋があるし、山道は歩きやすいしかなり整備されてるな」
(そうなんですよね。学舎だと悪魔が作ったとか、イャザッタ様が地上に降り立つより前に作られたとか種々言われてましたね)
「作りは確かに古いな……。流石に1500年とかだとわかんねぇな。まあ、だからって悪魔ねぇ。案外、だから歴史から消されたりな」
町へ着けば古文書だろうと資料でもあるかもしれない。リンベへ向かうのが先だが、多少の滞在の折りに調べてみるのも面白いはずだ。
気力も回復して再び道を歩きだす。その時、かすかだが山に響いて叫び声の様なものが聞こえた。
「あ?なんだこの声……」
(山びこ……にしては悲痛な……麻友さん変わってもいいですか)
「まさか……おい!」
(助けを求めている人がいる限り、放ってはいけません)
視界が歪み身体が軋む。アフラが無理やり入れ替わろうとしているのだ。
「よし!急ぎますよ」
(ま、待て!いくら食ったからってそこまで回復は……。うわっ!)
さっきまで一緒に弱音を吐いていたとは思えないほどの力強さでアフラは山道を駆けていく。
日が沈んだあとか、明日の朝に町まで着けば良いと思っていたが、まだ日も沈みきっていない頃には町が見えてきた。
「こ、これは……」
(おいおい、マジかよ……)
そこで遠目に見えたのは、火の手が上がった町の中で十字架に掲げられ焼かれている人々だった。
悲鳴も、泣き声も、すべては炎に呑まれ、風にかき消されていった。
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