第17話 幕話①
「ほ、報告します。マリンサ村でのオットー・メレンゲについての報告書が出来上がりました!」
大聖堂に衛兵の声が響く。
「ふむ……。まあ良いでしょう。君ももう上がりたまへ」
「ハッ、失礼いたします。」
オットー・メレンゲ、1500年間秘匿された魔女の仲間の1人。
(そう言えば聞こえは良いですがねぇ……)
夜更け、大聖堂の誰もいない地下聖所へと降りていく。何度となく訪れた場所であるが、ここはいつも緊張を覚える。
「教皇陛下……いいえ、イャザッタ様、報告書が届きました」
「ほう、ご苦労であったな。」
教皇のミイラが語りだす。いや、それよりもその背後に感じるイャザッタ様のオーラだ。人間にしては巨大で荘厳なイャザッタ様の存在を感じさせる。
「ここには妾と貴殿しかおらぬ。そう畏まるな」
「はっ、それでは正直に申します。恐らく魔女は未だこの世界に存在するでしょう」
「そうだろうな……」
やはり、イャザッタ様は全てを見通していらっしゃった。
「思い出すだけでも腹立たしい、妾が神でも人でもない化け物のなり損ないに敗北した過去。しかし、やっと尻尾を出しおったか」
「はい、しかしオットー・メレンゲですよ。他の仲間に比べたら……」
「ふっ……ハハハハ」とイャザッタ様が笑う。
「言うようになったな。確かに奴は仲間とは名ばかりの情夫であり、実験体。魔女に良いように使われただけの哀れな人外モドキよ。だが、だからこそ、いずれかの手段で魔女に監視されておろう。溶けたとは言え、死体を調べればその痕跡は出てくるであろう。」
「確かに、そうですね」
「それよりも……」
イャザッタ様のお声が突然厳しくなる。
「この報告にあるマユと言う女子じゃ」
「……件の聖女ですか」
「うむ、妾がしっかり殺したはずじゃが。まさか生きておるとはな」
「表でも、行方不明の後、イャザッタ様の元で名誉の昇天を果たしたということに処理しております」
「うむ、ゆえにこそ厄介なのじゃ。もし、もし蘇ったのなら、これで4人目……いや、5人目の魔女となるやもしれぬ」
聞き間違えだろうか、4人か5人、教皇代理として歴史の暗部は多く伝え聞いているが、過去の魔女が複数人もいたというのは陰謀論者ですら鼻で笑う妄想となっている。
「ん?ああ、これは妾が消させたことじゃな。忘れろ」
「はっ」
歴史の暗部や真実は知っていても、都合の悪いことは忘れる。これがここまで生き残ってきた秘訣だ。
「じゃが、これはよろしくないの……。東夷に本格的に向かい始める前に捕らえねばな」
「承知いたしました。手配書を回しましょう」
「うむ、そうしてくれ。ではもう良いぞ」
「それでは失礼いたします」
*
妾としたことがあり得ぬミスをした。
何故、あの様な悪しき魂の混入に気が付かなかった。このままでは魔女の再来を招いてしまう。
あの屈辱、そして恐怖――そんなことはあってはならぬ。
魔女アリス、どこまで妾を愚弄すれば済む……っ!!
純甘香も明空麻友も恐らく魔女の影響を教育を受けるだろう。会わせてはならぬ――あれは、妾にとっても、世界にとっても、あまりに危うい。
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