第16話 双子の村⑭
メレンゲ師の凶行はすぐに村に広まった。
はじめは噂からセナが濡れ衣を着せたやセナの人体実験を糾弾したメレンゲ師が消されたなども言われたが、中央から派遣された衛兵の調査が進むに従い、そういった疑念は払拭されていった。
(まあ、公的発表より何よりは……)
“マユちゃん”の評判が良かったことと、セナが身を挺して負った火傷も村人の信頼に大きく影響した。
当初はセナの屋敷にも衛兵の調査は入ったが、衛兵の一部が知り合いだったのか、聞き取りだけで地下については一切触れられることはなかった。
(葬儀屋と言い、対策には抜かりねぇな)
アフラは当然、表に出る訳にもいかず、結局のところ事後対応はマユちゃんがすることになった。
(グッ……ウゥ……)
いくら肉体が入れ替わり、魔法により治療は施されたとは言え、溶けた右腕は身体の奥の方で未だにジクジクする感覚がする。
何より、イタズラに一度摘出され戻された肝臓のせいで、右の脇腹に、ずっとボディーブローを打たれているような鈍痛が続いた。
セナ曰く、肝臓は再生能力の高い臓器だからくっつきさえすれば治るとのことだが、それでも1~3ヶ月は回復にかかるらしい。
(こう言うのは痛みに強いアフラに変わって欲しいがしゃーねーか……)
*
1ヶ月半後――。
「もう行くのか」
「あぁ、半分はアフラの身体だ。もう痛みもねぇ」
「いや、そうではなくてな……」
セナの表情が少し赤らむ。会ったばかりの頃はこの様な表情が出来る人ではなかっただけに、この反応には少し驚いた。
(人のこと言えねぇが、大分丸くなったな……)
「マユ、アフラが聖女として世界を回らなければならないのは理解する。しかし、君の気持ちはどうなんだ」
「あたしの気持ち……」
(麻友さん……)
あたしの気持ちか。そんなものは当に決まっていた。
「あたし――麻友はイャザッタの信仰を否定して、世界を壊す。それが目的だ。アフラとは反対だが、そのために世界を回るって手段は同じだ。だからそこに不満はねぇ」
「そうか……」
セナが少し考えるように黙るとしばらくして口を開いた。
「ここから馬車で1ヶ月近く北へ行ったところに私の兄が同じく医者をやっているリンベと言う都市がある。手紙は出しておくから世話になると良い。説明はいらないと思うが……」
「リンベ、魔女の伝承が色濃く残ってて信仰が薄い都市だろ。仮にもアフラと頭を共有してるんだ。あいつが聞いた伝承や地理は、こっちにも流れてくる。」
「マユ!」
「うぉ!な、なんだよ!」
セナの手がわずかに震えていた。そのまま、ガバッとあたしに抱きつく。
「もし、旅に疲れたらいつでも戻ってこい!今の私があるのはマユ、君のおかげだ。だから……」
痛いくらいセナが抱きついてくる。
「あぁ、いつになるかわからねぇがイャザッタをぶっ倒したら帰ってくるよ。必ずな……」
前世ぶりだろうか、心からの高揚を感じた。
「じゃあ、そろそろ行くから」
「あぁ……」
最後のセナの声に人間味のある物悲しさを感じながら、セナに背を向け、あたし達は北へと歩みを進めたのだった。
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