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ブルームーン  作者: H.N
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第六章: ブルームーンの真実

午前0時が迫るなか、高瀬誠一は月見坂の古びた神社の境内に立っていた。冷たい夜風が木々を揺らし、空には青白い月が神々しく輝いていた。手には七つの青いムーンストーンがあり、それぞれに異なる数字や記号が刻まれていた。


高瀬は息を整えながら、神社の拝殿前にある古井戸へと歩み寄った。その石造りの縁には、風雨にさらされながらもなお残る古い彫刻があった。彼はそれを撫でながら、頭の中で情報を整理した。


「星野教授の研究、森岡氏の知識、水野涼子の動機……すべてがこの場所に収束している」


井戸の周囲には、地面にうっすらと描かれた幾何学模様があり、それが北斗七星を模した配置になっていた。彼はポケットから紙を取り出し、そこに描かれたメモと照らし合わせた。


「順番は、1・3・5・7・2・4・6……」


高瀬は慎重にムーンストーンを配置していく。最後の一つを所定の場所に置いた瞬間、地面が低く唸るように震え、井戸の奥から青白い光が立ち上った。


「動いた……」


そのとき、背後で乾いた音が響いた。振り向くと、そこには拳銃を構えた水野涼子が立っていた。彼女の顔には深い執念と、どこか悲しげな影が浮かんでいた。


「やめておけばよかったのに、高瀬さん。あなたは優秀だけど、これは私の使命なの」


「殺人が使命だとでも?」


「あなたにはわからないわ。私は月影丸の血を引いている。祖先が隠した財宝を守るのは、私の家系の役目。あの教授も、森岡も、知られる前に止めなければならなかった」


「……それで、次は私か」


「いいえ、あなたは惜しい。死なせたくない。でも、邪魔なら仕方がない」


その瞬間、井戸の底が開き、石段が地下へと続いて現れた。水野は拳銃を構えたまま一歩踏み出す。


「この下に何があるか、確かめてからでも遅くはないわ」


高瀬は慎重に後を追った。狭い通路を抜けると、彼らは広い地下空間に出た。天井からは青白い光が放たれ、空間全体が淡い輝きに包まれていた。


中央には石造りの台座があり、そこに巨大な青い結晶体が鎮座していた。その下には、金属製の箱と古びた羊皮紙が置かれていた。


水野が結晶体に手を伸ばした瞬間、結晶が光を放ち、空間に星空が映し出された。それは動的な天体図であり、まるで未来の星の動きを映しているかのようだった。


「これが……財宝?」


「違う、これは……」高瀬は羊皮紙を手に取った。「『真の財宝は知識なり。月の青き光に照らされし者に、来たるべき災いを予見する力を与えん』」


水野は呆然と立ち尽くしていた。「こんなはずじゃ……金銀財宝じゃなかったの……?」


「これは予測システムだ。地震、津波、天体衝突……この装置は、それらを未来に警告する古代の叡智だったんだ」


水野の手から拳銃が落ちた。彼女は力なく膝をつき、涙をこぼした。「私、何をしてきたの……」


高瀬は静かに彼女に手錠をかけた。「遅すぎたかもしれないが、これから真実を世に伝えることが、君が償う第一歩だ」


そのとき、結晶体が一際強い光を放ち、未来の地球の星図が空間全体に広がった。その中には、数十年後の大規模な地殻変動の予測も含まれていた。


「これは……人類への警告だ。ブルームーンが導いた、希望の光だ」


高瀬はそう呟きながら、決意を胸に刻んだ。


——真実を隠してきた月。その青き光のもと、今こそ知識の力で未来を守るときが来た。

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