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36話 二度目の決闘

 三日後。

 俺は、南の平原でトッグと対峙していた。


 後方にルルとミリー。

 それと、少し離れたところに一部の冒険者と騎士達がいる。

 もちろん、ギルドマスターもいた。


「よぉ、久しぶりだな、カイル。ちゃんと約束を守ってくれて嬉しいぜ」

「よく言うよ。一方的な宣戦布告だったくせに」

「仕方ねえだろ? 俺は指名手配の身。今更、お前とまともに決闘することは難しいからな。ああするしかなかったんだよ」


 その部分は、ギリギリで納得できないこともないけど……


「なら、無差別に街の人を襲っているのは? 連続殺人鬼の犯人は、トッグなんだろう?」

「当たりだ」


 ごまかされるかと思っていたけど、あっさりと認められていた。


「やけに素直だね……もしかして、この状況で逃げられると思っている?」

「ああ、思っているぜ」


 トッグは俺から視線を外して、後ろの冒険者や騎士達を見る。


「あいつら、俺を捕まえるために集まったんだろ?」

「決闘には手を出さないよ」

「当たり前だ、邪魔されてたまるか。まあ、手を出してきたとしても、あんな雑魚連中、どうとでもなるがな」


 トッグのこの自信はどこから来るのだろう?


 確かにトッグは強い。

 Aランクパーティーのリーダーを務めていただけのことはある。


 それでも、複数の冒険者や騎士を相手にすることは難しいはずだ。

 ルルやミリーのような圧倒的な力があれば、話はまた別だけど……

 トッグのレベルは50だったはず。

 そんなことは不可能だ。


「……まさか」


 ふと、とある可能性が思い浮かんだ。


 急いで冒険者証を取り出す。

 『漆黒の牙』に所属していた時から、まだ一ヶ月経っていない。

 トッグの情報を確認できるはずだ。


 冒険者証を使ってみると……


「レベル……1500!?」

「はははっ!!!」


 この時を待っていたらしく、トッグは笑う。

 楽しそうに、嬉しそうに。

 大きな笑い声を響かせた。


「そう、そうだ! よく気づいてくれたな、カイル! 嬉しいぜぇ……お前は、昔からそういう細かいところを気にするヤツだったからな。俺が言わなくても、きっとレベルを確認すると思っていたぜ」

「この数値は、いったい……」

「バグなんかじゃねえぜ? そう……今の俺は、レベル1500だ!」


 冒険者や騎士達……ギルドマスターがざわつくのが聞こえてきた。

 ばかな、とか。

 ありえない、とか。

 みんな、トッグの発言に懐疑的な様子だ。


 ただ、ルルとミリーは違う。

 否定するようなことは言わない。


 そして俺も。

 トッグの言葉は正しいと、嘘は言っていないと、そう判断した。


 実際に対峙するとわかる。

 彼の放つプレッシャーは、以前とは比べ物にならないほど増加していた。

 一般人がいたら、顔を合わせただけで失神していたかもしれない。


「それだけの力、いったいどこで……?」

「知りたいか? いいぜ、俺は優しいからな。特別に教えてやるよ……こいつの力さ!」


 トッグは鞘から剣を抜いた。


 その剣は、夜の闇を凝縮したかのような黒と。

 血を濃したかのような赤で構成されていた。


 一目でわかる。

 呪われた武具……呪装備だ。


 一般のものとは比べ物にならないほどの強力な性能を持つ。

 ただし、使用するとなにかしらの害を受けるなど、制限がある。

 故に呪われた武具なのだ。


「こいつは素晴らしいぜ? なにせ、斬った相手の命と魂を吸収して、経験値に変えてくれるんだからなぁ!」

「なっ……」


 だから無差別殺人を繰り返していたのか!

 おそらく、俺達が知らないだけで、他にも隠れた被害者がいるのだろう。

 そうでもないと、レベル1500なんて無理だ。


「おかげで俺は、てめえを超えるほどに強くなった。1200なんて目じゃない、1500レベルにアップした。どうだ!? これなら俺はもう、カイルに負けねえ! 俺が、この俺が勝つ!!!」

「そのために人殺しを……?」

「当たり前だろう。ま、俺の養分になることができたんだ。斬られた連中も本望だろうさ」


 ……ダメだ、こいつは。


 以前から、性格が破綻していたように思えていたけれど……

 今は、決定的におかしくなってしまっている。

 人間性を捨てて、半ば魔物の領域に足を突っ込んでいる。


 いや。

 もう魔物と化しているのかもしれない。

 人を捨てているようにしか見えなかった。


 そこまでして俺に勝ちたいのだろうか?


 ここまでトッグを追い詰めたのは、俺の責任だろう。

 あの時、逃がしたことが悔やまれる。


 だからこそ、ここで決着をつける。

 俺がトッグを……倒す!


「俺は……」

「あん?」

「あなたに憧れていた時もあったんだ」


 酷い性格をしていて、コキ使われて、最後は初心者狩りに遭ったけど……

 でも、トッグに憧れていたことがある。


 Aランクパーティーのリーダー。

 その力は確かなもので、彼のようになりたいと思っていた。

 目標にしていた時もある。


 でも今は……


「これ以上、今のトッグは見ていられない。だから……終わらせよう」


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― 新着の感想 ―
自慢げに語ってるけど、カイルのレベルはその倍よ ワンパンで終わりそう
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