14話 決闘・その1
三日後。
決闘の時が訪れた。
場所は、冒険者ギルドが管理する、冒険者のための訓練場。
観戦もできるようになっていて、周囲に観客席が設置されている。
トッグは初心者狩りをするようなヤツだけど、それでも、Aランクパーティーのリーダーだ。
注目度は高いらしく、観客席はほぼほぼ埋まっていた。
うん、それでいい。
これで閑古鳥が鳴いているようだったら、困るところだった。
訓練場の中央でトッグと対峙する。
「よぉ、カイル。逃げなかったんだな? ちょっとだけ見直したぜ」
「逃げる? そんな必要はないだろう。だって、勝つのはどう見ても俺だからな」
「このガキ……!」
軽く挑発してみたら、顔を赤くして怒る。
この調子で、決闘の際も引っかかってくれればいいのだけど……さて、どうなるか?
「ん? そういや、あの生意気なガキはいないのか?」
「ルルのことか?」
「あれだけ大口叩いていたのに、決闘を見に来ないとは……はっ、所詮、口だけってか」
……ちょっとイラッとした。
ルルは、そんな子じゃない。
俺よりも強くて、とても頼りになって……
悪魔ではあるものの、有言実行の真摯な子だ。
そう言いたくなるものの、我慢我慢。
ルルには、とあることを頼んでいる。
その内容がバレないように、下手なことを口にしたらいけない。
「トッグ、そんなガキ、さっさと叩きのめしちゃって。あ、やっぱ、じわじわといたぶってもいいかもね。身の程ってものを教えてあげないと」
「ふふ、そうね。しっかりと調教して……それから、また、私達のパーティーに加えてあげましょう? 私達は優しいから、過ちは許してあげるもの」
観客席にレイリーとイザベラが見えた。
リーダーが決闘すると知り、当たり前のように観戦にやってきたみたいだ。
よし。
これで条件が整った。
後は、ルルがうまくやってくれればいいんだけど……
こちらは、あまり心配していない。
ルルなら絶対にうまくやってくれる。
そう信じていた。
「二人共、準備はよいか?」
審判はギルドマスターだ。
誰よりも公正で、不正などは許されないだろう。
「はい、問題ありません」
「俺も、いつでもいいぜ」
「よろしい。では、これよりカイル・バーンクレッドとトッグ・ドミナスの決闘を始める! 賭けるものは、互いの誇りと冒険者の魂。そして、勝者の言葉を真実とする。異論がある者は?」
「「「……」」」
俺とトッグ。
それと観客を含めて、ギルドマスターの言葉に異論を唱える者はいない。
「よろしい。では、事前にルールは把握していると思うが、ここでもう一度、説明しておこう」
武器を使う場合、殺傷力の低い木製のものを使用すること。
実戦を想定しているため、基本的になんでも『あり』の戦い。
ただし、相手を殺すことは禁じる。
戦闘不能に陥る。
あるいは戦意喪失した方が負け。
これらのルールを破った場合は厳罰を課せられることになる。
「……以上だ。なにか異論は?」
「ありません」
「ねえな」
「よろしい。ここに決闘は受理された。私は審判として、見届人として、二人の意思と闘志をこの目に収めることにしよう」
ギルドマスターが、一歩、後ろに下がる。
そして、片手を上げて……
「では……始め!」
手を振り下ろすと同時に、決闘が開始された。
――――――――――
「ふむ」
とある場所にいるルルは、ふと明後日の方向を見る。
冒険者ギルドがある方角だ。
「そろそろ決闘開始か……旦那様は大丈夫だろうか?」
できることなら一緒にいたい。
誰よりも近くにいて、力の限り応援をしたい。
レベルを考えれば、カイルの圧勝は間違いないのだけど……
それでも、心配なものは心配なのだ。
好きな人の今後を賭けた戦い……側で支える妻として、一緒にいたいと思う。
大好きな人の戦うところを見たい。
悪魔といえどルルは乙女だった。
「しかし今は、我の仕事を果たさなければ」
ルルは今、トッグ達が根城にしている宿にいた。
事前にカイルに指示されていたことだ。
魔法を使い、自身の姿を消す。
悠々と宿の中を歩いて、誰にも気づかれることなく、トッグ達が使う部屋へ。
鍵がかかっていたものの、それも魔法で解除した。
大悪魔と呼ばれ、恐れられているルルなので、大抵の魔法を使うことができる。
「これはまた……獣の巣のようだな」
部屋に入ると、濃密な『男』と『女』の匂いがした。
前夜、三人で色々と励んでいたのだろう。
「やれやれ、このようなところは吹き飛ばしたくなるが……我慢せねばならぬか。それよりも、旦那様に頼まれたものを探さないと」
ルルは部屋を物色する。
大人のおもちゃを見つけたり。
大人の下着を見つけたり。
大人の本を見つけたり。
「な、なななっ、なんて破廉恥なのだ!?」
なんだかんだ純情なルルは、度々、顔を真っ赤にして慌てていた。
恥じらい、照れつつ……
しかし、ちらちらと視線をやり、興味を見せる。
「し、しかし、なかなかこれは……ごくり。こ、このような世界があるのだな。これは、えっと……そう、後学のためなのだ! 旦那様とのために、色々と覚えておく必要があるのだ! 必要だから見るのであって、決して我が興味あるわけではないぞ?」
誰に対するものかわからない言い訳をしつつ、ルルはえっちなコレクションを興味津々に見て……
ややあって、本来の目的を思い出して我に返る。
調査を再開して……
おおよそ十分ほどで目的のものを手に入れた。
「よし。これがあれば……ふふふ。また、旦那様に褒めてもらえるのだ!」
ルルは、るんるん気分で部屋を後にした。
【作者からのお願い】
「面白い」「長く続いてほしい」と思っていただけたら、是非ブックマーク登録をお願いします
また、広告下の『☆』評価で応援していただけると嬉しいです(率直な評価で構いません)。
皆様の応援が作品を続けるための大きなモチベーションとなりますので、よろしくお願いします!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!




