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美味しいパンとご馳走、それにうまいワイン

作者: 楽部

 健康診断へ行くよう言われた。もうそんな年齢になったのか、とやや落ち込む反面、とくに自覚する症状も何もなく、腹の出具合くらい、多分大丈夫だろうという気持ち。前日夜より食事を減らし、酒も飲まず、それに挑む。


 まずは問診だった。朝ご飯を食べたのはいつですか、との設問。20代前半から朝食は摂っていないから、ざっと18年くらい前、と一瞬考えたが、そういったアホを書く場所ではない。喫煙、飲酒、睡眠時間、日頃の運動等々も、なるべく偽らず。ただ、悪いところは少なめに、良いところは多めに見せておきたいのが人間の在りよう。だが、ここは悟られの地。言わずもがな、おそらく嘘は見抜かれてしまうであろうから、云々。葛藤は誰しもあるのだろう、職員は出来上がりを気にする風もなく漏れのみを確認、次いで順路を指示。尿検査、血液検査、胸部レントゲン、心電図、他次々、最後に診察と回る。それは目まぐるしく、周りは至って当たり前に流してくるが、私個人としてはいずれも緊張を抱えながらの巡り会い。だから最後、お疲れ様でした、の労いに、疲労感、妙な安堵感を覚えた。


 約半日を費やした検査、たくさんだという印象で健診センターを後にする。希望する方々はまだまだこの午後から、他にも検査があるらしく、それはたいへんなことだ。結果は後日でとくに待ち遠しくもないが、良ろしくないなら、もちろん気になったりもする。色々制約が増えるのは億劫で、何もなかったにしておきたいが、こういう時に限ってそうはならない。要二次検査となり、病院受診することに。


 予約はできず。病院は朝から待ち時間に待たされ、お爺さんお婆さんに挟まれ、飛び込みに抜かされ、仕方ない、順番をひたすら待って、ようやく診察室に入ると、そこには若い女医さんが居た。これは卑怯、不満が言えない。


「健診異常の受診ですね」

「はい。BMIが高いとなっていて、まあ肥満ですよね」

「そうですね。自覚されておられる通りです」

「コレステロールと中性脂肪が高いとなってます」

「体重の減量が必要ですが、お酒も減らすべきです」

「毎日飲む訳ではないですが」

「アルコールは多少なら体に良いのではないか、と今までは言われてきましたが、実際は少量でも良くないです。飲まない方が健康です」

「そうですか」

「そうです。それと運動はなされますか」

「あまりしないです。コレステロールは薬とか要らないですか」

「今のところ必要ないでしょう。血圧も高くないですし、血糖値も問題ない。食事療法と運動でよいでしょう」

「そうですか。では、食事は何を食べれば」

「一般的ですが、バランスよく偏らないように。それと、全体のカロリーを減らす。簡単に言うなら食べる量を減らして下さい、ということです」

「量ですか」

「そうです。肥満ですので」

「ですよね」

「では指導を守って、努力の継続を」

「あの次の予約とか、検査とかは」

「体重が減らず、また健診で指摘されるようでしたら来て下さい」

「そうですか。ありがとうございました」


 淡々と会話は終わり、淡い期待はやはり無縁、十分とも言えない短い時間。並ばされた会計を済ませて、もういいか、外に出て一息。


 やっぱ腹八分目、ってことかね。


 出張る腹を揺すり、ちょっと震えた気持ち。あの女医さん、なんて名前だった、来年も居るかしらん。


 程々で維持していこう、そういうことにした。

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