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『荒れ果てし辺境の遺跡』に入ってからどれくらい経過しただろう? 俺たちは第四階層まで進んでいた。


 道中でも何度か獣人を倒してきたが、これで何体目になるのか? 目の前に現れた獣人をロングソードで斬って倒していく。ちなみに最初に会った獣人以降は、ノーダメだ。


『レベルが1あがりました』


 レベルアップを知らせる天の声がする。


 どうやら今の獣人を倒したことで、次のレベルに達する経験値がたまったみたいだ。【好感度レベルアップ】じゃなくて、普通にレベルアップするのはずいぶん久しぶりだな。


 これでレベル91か。


『新たな能力【追尾する短剣】を獲得しました』


 続けて天の声が知らせてくる。


 レベルがあがれば、持っているユニークスキルも強化されていき、より強い能力が使えるようになる。


 つまり光城涼介が元から持っていた【無形の武装】に、新たな能力が加わったということだ。


 この前までは具現化できるモノが何もなかったが、これでようやく光城涼介としてのスキルを使えるようになったわけだ。


 ウキウキしながら、スキルをチェックしてみる。


 さてさて、どんな武器を具現化できるようになったのかな? 

 

【追尾する短剣】

 投擲することで、狙った相手を追跡する短剣。

 必要能力値:攻撃力1500以上。

 消費MP:200


 どうやら投擲用の武器を具現化できるようになったらしい。ホーミング性能がついているとは、なかなかに優秀な短剣だ。


 だがしかし『必要能力値:攻撃力1500以上』という部分が目にとまる。


 現在の自分のステータスをチェックしてみる。


【光城涼介】

 レベル:91

 HP:9200/9300

 MP:8900/8900

 攻撃力:1000

 耐久力:980

 敏捷性:990

 体力:970

 知力:930


 今朝までに比べたら、かなりステータスが上昇している。


 だけど現在の俺は『攻撃力:1000』なので、【追尾する短剣】を具現化するには能力値が足りていない。


 ガックリと肩を落とす。


 なにもぉ~。せっかくスキルで武器を具現化できると思ったのに、必要能力値が足りないってどういうことなの? それなら能力値が足りる数値になってから、使えるようにしてよね。


 落胆のため息をこぼしつつ、本当に具現化できるかどうか、一応試してみる。


 頭のなかで【追尾する短剣】のスキルを選択して集中する。


 そしたら左手のなかに固い手触りが生じた。漫画やアニメでアサシンが使っているようなダガーが具現化されていく。


「光城くん。その短剣……蔵から取り出したものじゃないわね?」


 俺が【追尾する短剣】を具現化すると、いち早く気づいた星崎は戸惑っていたが、すぐにスキルによって生み出したモノだと勘づいたようだ。


 朝美も興味深そうにこっちを見ている。


「あぁ。俺のスキルは装備品を具現化するものだから、その力で生み出したんだけど……」


『能力値が足りていないので、武装の力を発揮できません』

 

 具現化した短剣を握ったとき、頭のなかでそう表示された。


 そして【追尾する短剣】は左手のなかで霧散してしまう。固かった手触りが消えてなくなった。


 能力値が足りていないと、数秒間しか具現化できないみたいだ。


「使い物になるようにするには、まだレベルをあげなきゃいけないみたいだ」


 戦力としては当てにできない。


 それがわかると、星崎も朝美も肩を落としていた。もともと俺には期待していないが、それでも役立つに越したことはないから、がっかりしたみたいだ。


 消えたダガーを惜しむように、左手を握りしめる。


 もっとレベルをあげないと、自分のスキルだってろくに使えないなんて。つくづく冒険者としての才能には恵まれてないようだ。


 いや、待てよ。


 それなら……。


「なにかしら? 人の顔をジーッと見て」


 気づけば、俺は星崎のことをまじまじと見つめていた。


「いや、なんでもない。気にしないでくれ」


「…………」


 星崎はムッとすると、そっぽを向いてくる。そして顔をそむけたまま、横目でチラチラと何度かこっちに視線を送ってきた。そのたびに上唇と下唇を擦り合わせている。


 さっきから何度もこういった視線を星崎から向けられている。もしかして、俺に話したいことでもあるのか?


「……光城くん。……このまえのことだけど……」


 星崎はポショポショと途切れそうな声で語りかけてくる。というか声が小さすぎて聞き取れない。


「すまん。できればもっと、大きな声で話してもらうと助かるんだが」


「っ……な、なんでもないわよ!」


 星崎は目を丸くしながら身をすくませると、足早に先へと進んでいった。


 俺に話したいことがあるのは間違いないようだ。それを打ち明けられずにいるのかな。


 たぶんプライドが高いのもあって、素直になれないんだろう。そういう意味では、コミュ力が低いよな。


 朝美はそんな星崎のことを心配そうに見ながらも、さっき俺が倒した獣人の魂精石を回収していた。


 一番年下なのに、しっかり者だよね、アサミン。





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