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 星崎たちとも話がついたので、『荒れ果てし辺境の遺跡』にもぐろうとしたが、その前に星崎は冒険者ギルドのほうに用があるのを思い出したようで、そちらに足を運んだ。


 昨日ダンジョンにもぐった際に入手した魂精石を換金するのも兼ねて、蔵のなかの装備品を整理するみたいだ。


 その間、俺は冒険者ギルドの前に立って待機する。


 てっきり朝美も星崎についていくのかと思ったが、どういうわけか朝美は俺と一緒に冒険者ギルドの前に佇んでいる。


「それで、俺に話したいことがあるんじゃないのか?」


 こっちから切り出すと、朝美は探るように目を細めて見てくる。


「まったく、あなたには迷惑をかけられっぱなしですよ」


 朝美は杖を握りしめながら、ふんすっと鼻息を吹いてくる。


「えっと、やっぱり先日の試験のこと、星崎は気にしちゃっているのか?」


「えぇ。あの日から、マナカさまはあなたのことでイライラしっぱなしですからね。フォローが大変でしたよ。おかげで昨日はダンジョンにもぐっても、マナカさまは不調つづきでしたし」


「そいつは悪いことをしたな。でも、俺はまちがったことをやったつもりはないぜ」


 星崎と行動を共にするには、あぁいう手段に打って出るしかなかった。死なないために、最善をつくしたまでだ。


「あなたはあの試験で、低レベルながらもきちんと実力を示しました。そのことは評価されてしかるべきだと思います」


 口振りは無愛想だが、朝美は俺の努力を評価してくれていた。


「でも、あのときのことを素直に認められないから、マナカさまはモヤッとしちゃっているんですよ」


 意地を張ってしまったことを、星崎なりに気に病んでいるようだ。


 なんだよ、かわいいところがあるじゃないの。自分に対して正直じゃないと、そんなふうに気に病んだりはできないはずだ。


「言っておきますけど、わたしはまだ光城さんのことを信用したわけじゃありませんからね。マナカさまに妙なことをしたら、承知しませんよ」


 警戒心を強めた猫のような目つきになって、朝美は釘を刺してくる。


 なるほど。この警告がしたくて、俺と一緒にここに残ったわけね。


「あぁ、俺が信用できる人間かどうかはあんたが決めてくれて、アサミン」


「……なんです、そのアサミンって?」


 さっきまで警戒心の塊だった目つきが、湿気を帯びたようにジト目へと変わる。


「あんたのあだ名だよ」


 俺の友達が「アサミン」って呼んでいたのを思い出したからな。たぶん『ラスメモ』のプレイヤーたちからの愛称なんだろう。


「すっごく馴れ馴れしい感じがするので、そう呼ぶのはやめてもらいたいんですけど?」


「えぇ~、そう? いいと思うのにな、アサミン」


「うっ……ぞくぞくって鳥肌が立っちゃいます」


 俺がニコやかに呼びかけると、アサミンは自分の両腕をさすりながら立ち位置を横にズラしてきた。


 たくさん脚がある虫でも踏んづけちゃったように、眉間をしかめてウゲェって顔をしている。


 俺に対するアサミンの好感度が下がっちゃったね。





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